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ポンニチ怪談

ポンニチ怪談 その92 カードシステム

作者: 天城冴

クリスマスの夜に降った雪は思わぬ異常を引き起こし…

無宗教の市民がほとんどといわれつつ、世界三大宗教の祝日を盛大に祝い、商業的に利用しつつ、人々が楽しみにしているニホン国。その最大の冬の祝日の当日、ちらほらどころではなく空模様は悪く、一面が白い雪で覆われた。

「ほお、ホワイトクリスマスかあ。これはすごい」

庭に作った大きなクリスマスツリーに雪がつもっていく。孫や親せきの子供たちのためにと家族が用意したものだが、ゴウノ氏自身も楽しんでいた。

「うん、素晴らしい、今年はいろいろあったが、来年こそは。あのカードシステムが稼働すれば、私の功績も認められるだろう。これは幸先がいいぞ」

と無邪気に喜ぶゴウノ氏のもとに一本の電話が

『た、大変です、ゴウノ議員、例のあのシステムがクラッシュしました!』

「は?いったいなんの」

『ま、マイマイナンバーの、ほ、保険証システムが、そのデータが…、ひ、紐づけられたはずなのが、中身が、まったく…』

「な、なんのことかよくわからないんだが…、も、もしかしてマイマイナンバーカード保険証、あ、あのシステムが壊れたというのか」

『は、はい、今病院などでは大混乱です。その、服薬、病歴のみならず、本人の身長、体重、血液型といった基本的情報まで間違っていて、輸血や点滴などを受けた患者が…、な、中には、その、死に…』

「な、なんだと、一体…。そ、そうだ技術者をかき集めて復旧させろ」

『そ、それが、この雪で交通網がマヒしまして、端末にアクセスできないと。リモートでのアクセスも通信網が、その…電話線があちこちで切れました。…国際博覧会などに工事の手が割かれた上、その工事をやる人手不足で、インフラの整備が後回しだとかで』

「なにをやっているんだ!そ、そういう大切な」

言いかけて、ハッとした。そうだ、なんどもいわれていたのだ、マイマイナンバーカードシステムなどに予算を割くより、ヒビの入った高速道路の高架橋、電信柱などの老化、そういった基本的インフラに金をかけろと。だが、それだと懇意にしている、政治パーティ券を購入してくれる会社が儲からないのだ、彼らに仕事を回すためのシステムを作った。それがこのマイマイナンバー保険証なのだ、それでも国民のためにも、なるはず…だった。

『と、とりあえず、ナントカ…うわああああ!』

「お、おい、どうした!あああああ!」

電話の向こうからの悲鳴を聞き、動揺したゴウノ氏は何かにぶつかり、意識を失った。


“さて、開頭手術を行う”

(か、開頭?な、なぜ?)

微かに聞こえてくる声にゴウノ氏の意識が少し戻った。

“ホントにすぐやるんですかあ?雪のせいで酷いけがをしたとかで、かなり重症患者もいるのに、いくら元大臣だからってまずいんじゃないですかあ”

“いや、すぐにでも手術しないと大変なことになる。マイマイナンバー保険証カードの履歴にもそう出ている”

医師らしき声にゴウノ氏は怯えた。

(ど、どういうことだ、頭の病気なんて、か、罹ったはずは…)

働かない頭をフル回転させたが、まったく状況がわからない。とまどうゴウノ氏にかまわず、二人の会話が続く。

“あー、このカルテからするとすぐにでも脳の神経をつなぎなおさないと、本人も周りも被害甚大ですねえ”

“そうだ、さっさとこのトンデモシステムをゴリ押しするような厚顔無恥、無知な神経を矯正しないともっと被害がでる”

(ま、まさか、病気でもないのに、脳みそをいじくられるのか、そ、そんな、どこの医者だ)

一生懸命、目を開き、周りを見ようとするが、首が全く動かない。怪我をしたためか、それとも麻酔をかけられたのか。

“ああ、そうですねえ、このすぐ異常がでるようなシステムのせいで、多数の死者がでてますしねえ。これ止めさせないとダメですねえ、そのためには”

“このシステムの異常ぶりを身をもって体験してもらい、その酷さを知らしめたほうがいいんだろう?システム推進者のゴウノ元大臣に”

“そうですね、ウラガネづくりに協力した企業のために発注したポンコツのシステムのせいで、自分のカルテがメッチャクチャ、役に立たないどころか、かえって害悪になったってよーくわかりますもんね”

“そうだ。それに我々はシステムが示したゴウノ氏の病歴に従って、緊急手術を行うのだ。『頭を酷く打って脳内出血、神経細胞を圧迫。血栓もあり…。以前から脳神経の異常がみられ…』とちゃんと表示されている”

“そうですねえ。従うしかないですねえ。紙のカルテもなし、本人にも聞けない。システムがおかしいって言われてても、緊急手術しないと助からないって言われれば、しょうがないですねえ”

“それに家族の同意もとってある。『システムがそうなら仕方ない、手術してください』と、ちゃんとサインももらったからな”

“いや、自分の旦那、父親の病歴を知らないわけないですよねえ、知らなかったら…。よっぽど家族が疎遠だとかですかね。知っててなら…、逆に死んだ方がいいとか思われてます?”

“いやいや、伝統的家族観を大切にするジコウ党の世襲議員様のご家族がそんなわけあるまいよ。さて、さっさと手術しないと間に合わないぞ、何しろ緊急だ”

“はい、被害が広まる前にさっさとやりましょう”

(や、やめてくれ!そ、そんなマイマイナンバーカード保険証なんて信じないでくれ!わ、私の声を…)

口を動かそうとしたが、さらに麻酔をうたれ、ゴウノ氏の意識は深い深い闇の底におちていった。


気象災害だのに、大規模システムって案外弱いらしいですね。以前の夏の配達システムの大混乱みたいなことにならないようにシステムのバックアップとかきちんと技術者の人にやってもらうべきですよねえ、もちろん元受けじゃなく、やってる現場の人たちに適正なお金払って。

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