1、悲鳴と全裸と困惑と
長編です、よろしくお願いします!
しばらく一日二回投稿の予定です。
その日、王宮に悲鳴が響き渡った。
最初にぎゃあ! と驚くような悲鳴が一回、そして次にまるでこの世の終わりのように高く伸びる悲鳴が一回。
どちらも、恐らくは同じ男性の声である。
すわ事件か、と慌てて現場に駆け付けた騎士団長は、その光景に思わず言葉を失った。
廊下で、この国の国王であるラームニードがうずくまっている。
しかも、何故か全裸で。
周囲には、彼が着ていたと思われる服の残骸が無惨にも散らばっていた。
その王の前に跪く茶髪の侍女と、二人の間に挟まる真っ青な顔をした王付き騎士であるアーカルド。
「何事……いや、本当に何があったのですか!?」
騎士団長は、思わず叫んだ。
どういう状況なのか、さっぱり分からない。
そもそも、王はなぜ全裸なんだ。こんな公衆の面前で。
まるで状況が読み込めず、困惑したまま三人の顔を見比べる騎士団長に気付いたラームニードは、流石に焦った様子だった。
若干涙目になって股間を隠しながら、身の潔白を主張しようとする。
「服がハジけ飛んだ!」
──この人は何を言っている?
騎士団長は思わず真顔になって、侍女の方に顔を向ける。
「パンツもハジけ飛びました」
彼女は至極真面目な顔で、いらない補足を入れた。
というか、仮にもうら若き乙女なんだから、堂々とパンツとか言わないで欲しい。
「パン、パァーン! って感じでした……」
気の毒なほど青ざめたアーカルドの説明に至っては、擬音だ。
簡潔明瞭を求められる騎士の報告としては失格にも程があるが、混乱する気持ちも分からなくはない。
「……一体、どういう事なのだ……」
三者三様の説明を聞き終えた騎士団長は、頭を抱えながらぼやいた。
説明を聞いても、状況がまるで分からない。
神はなぜ私にこんな試練を与えるのか、と嘆きたい気持ちでいっぱいだった。恐らく、神様もあまりの冤罪に困惑する事だろう。
「……とりあえず、場所を移してから改めて話を致しましょう。陛下も、とりあえず何か服をお召しになって頂けますか?」
続々と集まってくる人の気配を感じながら、騎士団長は低く唸るように言った。