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13 奇妙な昼食会

 今ここに何とも奇妙な一行が存在していた。

 テーブルを囲む四人の中で身分が同じ者は誰一人としていない。それどころか一番上に位置する王族と下から二番目に位置する準男爵と身分の差が大きすぎる。

 さらに言うならば、今いる場所は上位貴族たちだけが立ち入ることの許されたラウンジ。

 僕とサーナは、二重の場違い感を感じて肩身が狭さを感じていた。

 出来る限り存在感を薄くしていると、程なくしてランチが運び込まれてくる。

 昼食とは思えないほどの豪華さで、給仕専用のスタッフまでが付いていた。

 前菜の皿が僕たちの前に並べられると、王女様が口を開く。


「それでは私たちの親睦を深めるための昼食会を始めましょうか」


 ニコリと告げられて言葉。

 いつの間にか意味の分からない昼食会が開催されていたのだった。

 昼食会の開始が宣言されて直ぐに王女様が切り出す。


「知らない者同士もいることですし自己紹介から始めましょうか」


 確かに王女様の言う通りだった。

 僕は特にエイダンと話したことがあるわけでもないし、おそらくサーナもそうだろう。というか、いきなりこんな場所とメンバーの所に連れてこられてサーナは大丈夫なのだろうか。

 心配になりサーナの方をちらりと見てみれば、はわわわ言いながら目を回していた。うん、大丈夫ではなさそう。などと考えていると、王女様が言葉を続けていた。


「まずは言い出しっぺである私から自己紹介しますね。私はスィンケ王国第一王女、リュシー・スィンケです。ぜひリュシーと呼んでくださいね」


 王女様の自己紹介は無理難題と共に締められた。王女様のことを呼び捨てに出来る人間など、この国にどれほどいることだろうか。


「次は僕かな?」


 エイダンの声によって、自然と僕とサーナの意識は彼に引っ張られる。


「ユルとサーナ嬢は初めまして。僕はハワード侯爵家長男のエイダン・ハワード。是非二人にもエイダンって呼んでほしいかな」


 甘い破壊力満点の笑顔が僕とサーナに向けられる。

 隣からはわわわなどという声が聞こえてくるような気がするが、僕の自己紹介で上書きをしておく。


「ネイサン男爵家次男、ユル・ネイサンと申します。どうして私がこの場にいるのか……少々混乱しています」


 僕の言葉に王女様が思わずといった感じに笑い声を漏らす。


「ふふっ、そんな畏まった態度でなくていいんですよ。学園では身分も関係ないと言ったではないですか」


「はあ」


 僕は曖昧な返事を返しておく。

 砕けた態度を取りなんかすれば、王女様が良いと言っても周りがどう見るかなど火を見るよりも明らか。僕は畏まった態度を取るしかないのだ。

 王女様は僕の返事が気に入らなかったのか、頬を膨らませる。


「むっ、本当にわかってますか?……そうです!私のことはリュシーと呼んでください!まずはその一歩から始めましょう!」


 なんとも恐ろしいことを言ってきている。王女様を呼び捨てなんかすれば、男爵家次男など最悪打ち首になるんじゃないだろうか。

 だが、期待した目を王女様に向けられている手前、逆に呼ばないことで何やら罰をもらうかもしれない。

 僕の選択は、


「……リュシー王女と呼ばせていただきます」


「王女はいらないのですが……しょうがないです。最初はそれでいいでしょう」


 なんとかこの局面は乗り越えられたようだ。


「それでは最後にサーナさんの番ですね。社交界で一瞬挨拶しただけなのでしっかりお話しできるの楽しみです」


 リュシー王女の満面の笑みで告げられた言葉には、驚愕が詰まっている。

 サーナの名前を憶えていたということは、リュシー王女は社交界で全員から行われた挨拶の中で、準男爵家の子供の名前を憶えていたということ。それすなわち、社交界で挨拶された相手の名前を全員覚えていてもおかしくないということ。

 リュシー王女の天才っぷりを実感したところで、サーナがおどおどしながら口を開いた。


「わ、私はメイヤーズ準男爵家長女、サーナ・メイヤーズです。な、なんで私は、お、王女様に呼ばれたんでしょうか……」


 疑問を投げかけられた王女様はニッコリ言う。


「サーナさんも私のことはリュシーと呼んでくださいな」


 サーナはびくりと肩を震わせながら答える。


「はひっ、リュ、リュシー王女と呼ばせていただきます」


「むー、ユル君といいサーナさんといいなんでリュシーと呼んでくれないのかしら?エイダンもそう思うでしょ!」


「リュシー王女、さすがに呼び捨ては無理ですよ」


「!!あなたまでも呼び捨てで呼んでくれないのですね。もう、昔のようには呼んでくれないのね……」


 リュシー王女がしおれた感じで何やら言うが、エイダンは動じていない。


「昔から今日までずっとリュシー王女と呼ばせていただいてますが?」


 リュシー王女はしおれた感じで潤ませていた瞳を一瞬で引っ込める。


「乗ってくれてもよかったじゃないですか。もしかしたらユル君とサーナさんが流されて呼び捨てで呼んでくれたかもしれないのに」


 リュシー王女の不貞腐れた声に、エイダンはやれやれと言わんばかりに肩をすくめている。


「それはさすがに彼らが可愛そうですよ。いくら学園だからといっても羽目を外しすぎてはだめです」


「むっ!エイダンが宰相みたいなことを言ってきます。学園ならあの口うるささからも逃げられると思ってたのに」


「ふふっ、宰相様にリュシー王女が行き過ぎたことをしないように頼まれているのですよ」


「なっ!あの宰相はどこまでも面倒くさいですね」


「そんなことを言わないであげてください。リュシー王女のことを思っての発言ですので」


「私のことを思うなら自由にさせて欲しいものです」


 エイダンはリュシー王女の言葉に思わずといった感じで苦笑いを浮かべる。

 一方で僕とサーナは、話に付いて行けずに、ただ黙々と昼食を食べていた。

 こうして奇妙な昼食会は進んでいったのだった。

次は月曜日までにあげます。今月中は投稿頻度が下がると思いますが、続けて読んでいただければ幸いです。


最後まで読んでいただき有難うございます。

ブックマークやらなんやらしていってもらうと作者が凄い喜びますので、登録お願いします。本当にお願いします。

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