自由と引き換えに
二〇四〇年――
――終末時計の針は零を指した。
二〇四五年
終末時計の針は更新されることはなかった……。
が、人々は絶滅せず、この五年間を何不自由なく過ごしていた。
そう、不自由なくだ。
全てをデータで管理され生活は指示に従っていれば良いだけのものとなった。
食事も、趣味も、睡眠も、家族関係も……全てシステムに従えば『幸せ』になる。
二〇四〇年の更新で針は時計回りに回るのではなく、反時計回りに回ったのだ。
これを最高の好転や、世界平和の実現と口々に政治家は叫んだ。
実際、温暖化は改善され、核所有も決められた範囲で完全に管理されている。
貧困、食品ロス、飢餓はほぼ完全にゼロになった。
世界の問題は全て消え去った。
全ての人間の『自由』と引き換えに。
科学者である峰はとあるサーバー室でコーヒーを飲んでいた。
「いい世界じゃあないか……俺だけが神に成り下がったんだ」
一気に飲み干し、机にカップを叩き付けた。
「……終末、か。いい! いいぞ! 最高だ最善完璧完全超越極上上々この上ない何もない最低だ最悪災厄極悪奈落悪夢地獄! 終末だ……」
興奮と絶頂を迎えた瞬間に、頽れた峰は涙を流した。
「終末を……望んだはずじゃないか」
くしゃくしゃの顔で床を何度も殴りつけた。
血が飛び散り、呼吸が乱れる。
ゆっくり。
ゆっくりと立ち上がって椅子に座った。
「……」
言葉を交わす者は既に存在せず、毎日狂声だけを放つ生活は確実に峰の精神を蝕んでいる。
しかし、終末時計を動かさない為に峰は仕事に戻る。
そう。
不自由のない生活の為に。
――終末時計の針は零を指した。
こんにちは、
下野枯葉です。
もう九月なんですね。
驚いています。
ふと、月日の流れを感じたときに終末時計の存在を思い出しました。
まぁ、こんな情勢だし終末時計は最悪ですね。
そんな終末時計がゼロになったらどうなるんだろうなぁって思って書きました。
まぁ、終末ってどんな感じかを想像しただけですかね。
意外と面白かったなぁ。
では、
今回はこの辺で。
最後に、
金髪幼女は最強です。