昼食2
「そういえばポンタ君、この間転属してきた新しい部長さん覚えてる?」
私がほんのりと生姜が香る肉厚で骨まで柔らかいまるでレトルトの様な鯖の煮付けと、ほんのりとキノコが香る超肉厚で中にはトロトロのチーズが入ったこれまたレトルトの様なハンバーグを美味い美味いと交互につまんでいると、不意にイヤミ係長が話しかけてきた。
「この間って…昨日の事じゃあないですか、覚えてるに決まっているでしょう。新居屋部長…なんでも秘書課から配属された方だとか」
食事以外に興味ないのかと思ったとでも言いたげに一瞬目を丸くしたイヤミ係長だったが、すぐさまいつもの無邪気な笑顔へ戻りまくし立ててきた。
「そうそう!にゃー部長!彼女美人さんだよねぇ〜。ポンタ君と1つ違いだっけ?どうなの?ああいう女性、興味ないの?!」
「上司で、しかも随分歳下の女性にまた変なアダ名をつけましたね…セクハラで訴えられても知りませんよ」
「若くて出世するようなしっかりした女性に管理してもらったら、君も痩せるかもしれないよ〜?」
「私は痩せたがってなどいません!好きなだけ食べたいし汗を流すのもお断りです!」
両脇を締め、胸の前で握り拳をつくる乙女の様なポーズで、脱ポンタ君だよっ!とのたまうイヤミ係長にどうやら私の主張は届いていないようであった。そもそもポンタと呼び始めたのは貴方ではないかっ!
温厚の中の温厚、キングオブ温厚な私でも流石にむかっ腹が立ったのだが
「僕お腹いっぱいだからポンタ君食べてよ」
と手付かずの半チャーハンを分けてくれたときばかりは、ヒョロヒョロで頼りない係長がアンパンの顔をしたヒーローに見えた。