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ハングリー 精神  作者: 狩瀬G2
12/31

テレビ

 夢の中でご馳走を食べ逃した腹いせと言わんばかりに、朝食は贅沢に超超超大盛りBIGサイズのカップ焼きそばを2パック開けることとした。辛子マヨネーズをトッピングした縮れ麺を啜りつつ、特に目的もなくテレビを点け、面白い番組でもないものかとチャンネルを切り替えていると、住まいから路線バスで約45分程の場所にある中華街に目が止まった。その番組はどうやら生放送のようで、地元テレビ局のリポーターが中華街を散策しつつ、ふらっと立ち寄られた各店舗がインタビューという形で宣伝を行い、その代わりに視聴者へ割引やプレゼントで還元するといった形式で進行する構成であった。


 中華街の歴史は幕末まで遡り、貿易で栄えたその港町はかつて海であった場所を埋め立てて造成された倉庫区域であり、そこへ当時のメイン貿易相手だった福建省の方々がこぞって転居してきたことが起源とされており、全盛期には市の人口約7分の1が華僑で占められていたと言われてる。東西南北それぞれ250mからなる十字路には、大小様々な中華料理店や雑貨店が軒を連ねており、中には眼科やコンタクト専門店、薬局や保険代理店に今では珍しいべっ甲専門店など、意外と店のバラエティは豊富である。


 以上の事が番組内で説明されており、途中から観たにも関わらず中華街についての知識を充分に得ることが出来たのは番組構成の巧みさ故であろうか、地方番組も捨てたものではないなと思いつつ、私の興味は番組内で紹介されていた一口サイズの豚まんに移っていた。


 昭和35年開業と私が産まれる遥か前から続く老舗であり、原材料は全て国産、豚肉と玉ねぎは地元の素材を使用し冷凍肉は一切使用せず、毎朝職人がぶつ切りにしているとのこと、勿論着色料や保存料も無使用というこだわりっぷり。具材は豚肉と玉ねぎのみと至ってシンプルであるが、画面越しでも伝わる手作業で包んだとは思えない程整った形と光が反射してキラキラと輝くツヤが、超超超大盛りBIGカップ焼きそば2パックを完食し満腹であるはずの私の食欲を大いにそそるのだ。1個80円と金額も手頃であり、県内に6店補しかない希少性と、普段は一切値引き無しだった豚まんが本日限定でこの番組を観たと言えば10個入り500円になるという特別感、そして私は会社が休みなのである、今日はとてつもなくウルトラレアな1日なのだ、これは45分かけてでも行かざるを得まい!

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