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「…あれ?英麻と光明子様は?」

みなみがそう言って立ち止まった時、一行は宴の会場となる庭園の入口まで来た所だった。ハザマがせわしなくあたりを見回す。

「あのバカ、まさかどこかではぐれたんじゃ」

そう言いかけた時、後ろからかけ足で英麻がやってきた。

「ごめーん。遅れちゃって」

「おい。おまえ、何してた…」

ハザマはあっけに取られて文句の言葉を飲み込んだ。みなみやミサキも唖然とする。

「その格好…」

光明子と共に現れた英麻は、パーカーにハーフパンツという林間学校参加時の服ではなく、頭から足先まで雅な宮廷装束に身を包んでいた。タイムパスポートの作用による、現地人の目にしか見えない衣装ではない。気品あふれる女官、それも上級女官の着物を本当に着ているのだった。着物に合わせて髪まで本物の女官に近い形に結われている。

「ごめんなさい。部屋に忘れ物をしてそれを取りに行ってましたの」

光明子がうやうやしく頭を下げた。

「わざわざこちらの英麻さんが付き添ってくれまして。お礼に本物の宮廷衣装を着せて差し上げよう、ということになったんですのよ。あの…いけませんでした?」

「まあ、現地人に対するタイムパスポートのカムフラージュ効果に影響はないはずだからいいですけどね。ただ」

ミサキはちらりと英麻を見た。

「君が上級女官っていう設定には恐ろしく無理があるかと」

「同感。何か制服に着られた新入生みたいなんだよな。すそ踏んでずっこけないよう気をつけなよ?」

「えー何それー。ミサキさんもみなみも、もうちょっと褒めてくれたっていいじゃないのよお」

上級女官姿の英麻は不満そうに口をとがらせる。

「ねっ、ハザマはどう思う?似合ってる?」

英麻は着物の裾を優雅に持ち上げてみせた。くりっとした無邪気な瞳がハザマを見つめてくる。

「えっ…あ、ああ」

ハザマはぎこちなくうなずいた。

なぜだろう。一瞬、目の前の英麻にちぐはぐな気持ちを感じた。何かが違う。そんな感じだった。再び皆で連れ立って歩きだしながら、ハザマは違和感の理由を考えてみる。だが、その正体はつかめなかった。

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