夏っぽい電車事故に遭遇してしまった話。
処女作につき色々とご勘弁ください
カーンカーンカーンカーンカーン…
踏切の音が頭に響いている。何故自分がここにいるのか思い出せない。夏の日差しに頭がやられてしまったのだろうか。
カーンカーンカーンカーンカーン…
音はさっきよりも大きくなり、頭を内側から破らんとしている。
思わず蹲り、頭を抱えた。
カーンカーンカーンカーンカーンカーンカーン…
それでも音は僕の頭を不快に掻き立て止まらない。
ふと、冷たい風が吹いた。起き上がると僕のすぐ右手には迫る列車とひどく驚いた様子の運転手が見えた。
ああ…あと1秒も立たない内にあの人は人を殺すんだ。可哀想に。
音は聞こえず、ぼんやりとしていた頭は死というものを前にしてもうすっかり冴えていた。
最期に天音に気持ちを伝えたかったな。今更どんなことを考えたってもう遅いのだが。
こんなことじゃあ天音に笑われてしまう。だったら最期ぐらいは覚悟を決めて、笑っておこう。そう決めて僕は今までで一番の笑顔を浮かべた。
バンッ
「起きろ礼二!」
そう言って教科書で僕、間宮礼二を叩き起こししたらしいのは幼馴染の山名貴之である。時計をみると今はは16時15分。教室の黒板にはでかでかと
補習 16:00まで
と書かれており、自習が終わり暫く経った教室には僕と山名しかいなかった。
「ニヤニヤしながら寝やがって。どんな幸せな夢見てたんだか。天音ならちょっと前に帰ったぜ。」
天音は補習中ずっと眠っていた僕に呆れて先に帰ってしまったようだ。
俺と山名と天音、佐久良天音は幼稚園からの幼馴染だ。アルビノで体の弱い上によく目立った天音を守るという名目で小さい頃からよく3人で遊んでいた。
俺は天音のことが好きだ。ずっと前から。そしておそらく山名もそうだろう。
「幸せな夢なら良かったんだが…」
「ん?ボケッとしてないでさっさと帰るぞ。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
少し先に帰ってしまったという天音を途中に見かけることも無く。それは河川敷を超えて住宅街差し掛かるころ。
「…んでさぁその時田中が」
「おい山名あれ」
小さい頃3人でよく遊んだ公園にの前を通る時。
夏の太陽に照らされ、真っ白にも見えるグラウンドの中央。
そこに1つの影、があった。
いろんな運動ができるようにと広く作られたグラウンドには影になるようなものは何もない。
ただ影だけがそこにあった。いや、いたという方が正しいのだろうか。影はのろのろと何かを探し求めるように移動していた。
「なんだありゃぁ」
恐る恐る近づき、周りを見渡すもやはり影になるような物はない。近づいた僕たちを気にすることもなく、なおも影は動きつづけ、公園の外に出ようとしている。
「付いてって見ようぜ」
かのアインシュタインも好奇心を忘れてはならないと言っていた。
さっきまでは饒舌だった山名もいつもの果敢な姿勢を忘れ、青ざめている。
非日常的なことには弱いらしい。
「お、おう」
やっとのことで返事をした。
影は公園を出て、覚えているかのように真っ直ぐにどこかへと道を辿っていた。影は薬局、交番、天音の家の前を通り、踏切へ差し掛かった。
カーンカーンカーンカーンカーン…
嫌な音だ。さっきまで見ていた夢を思い出す。
カーンカーンカーンカーンカーン…
音がどんどん大きくなる。どうしても死の感覚が残っている。
影はどこに行ったのだろうか。
「おいあれ…もしかして」
山名が何か言っているようだが、よく聞こえない。
顔をみる。その視線は線路へと注がれている。その方向をみると、影が線路の中でまるで最初から動かずそこにいたかのように静止していた。
カーンカーンカーンカーンカーンカーンカーン…
列車が影に近づいている。青ざめた山名は何か焦っているようだ
「ッッッ!」
山名が線路へと飛び出そうとする。
「何してんだよ!!」
山名を必死に引き止め、ながら叫んだ。
「止めるな!!あれは…」
なおも必死に線路へ向かわんとする山名を押し倒し、再び叫んだ。
「ふざけんなっ!!!」
「あれは天音だ!!」
「は⁈」
列車が影の上を通る。
ズィーーガタンガタンガタンガタンガタンガタンガタンガタン
「落ち着け山名どういうことだ⁈」
ガタンガタンガタンガタンガタンガタンガタンズィーーーー
列車は過ぎた。
山名は青ざめ、それでもかなり強い力で僕を跳ね飛ばし、線路へ駆け寄り、吐いた。
何故気がつかなかったのだろうか。周囲には鼻を指すような血の匂いが漂い、線路に目を向けると肉片と血飛沫がたった今起こったことを物語っていた。
「おぇぇぇ…ゲホッゲホッ」
僕は吐いた。別に死体をみるのも血をみるのも耐性はあるつもりだった。ただ肉片についている布切れとこびりついた白い髪の毛で容易に察することができた。
小説って難しいね。