二話 転生しました
生まれ変わりました!
うん。そう。
そうだった。
壮絶な前世を、たった今思い出した。
神様をいじわると思ったから、神様が、私は優しいのよと、転生させたのか?
頭が混乱する。
私はルティシア・フィーガン。前世ではルティという名の魔法使いだったが、現在は伯爵家の娘であり、年は十歳。今、兄と仲良く鬼ごっこをしていたところ、突然雷が木に落ちた事で、前世を思い出した。
雷の落ちた木は現在、パチパチと音を立てながら炎に包まれ燃えている。
そしてこの世界は、前世から十年後の世界であり、あの恐ろしい魔獣によってもたらされた厄災の復旧も大部分は終わり、人々の表情は明るい。
つまり、私たちの活躍によってこの世界は、とても平和なのだ。
それは、うん。本当に良かった。
「ルティ!大丈夫かい!?」
私の兄であるレイ・フィーガンは銀色の髪と瞳を持つ美少年であり、三歳年上の十三歳である。王立学園に通っており、たまの休みに妹と一緒に遊んでくれるというとても優しい人である。
奇妙な事に、今世でもルティという愛称で呼ばれているから不思議なものだ。
お兄様は私が怪我をしていないか、体を回転させて、どこも怪我がないと分かると大きく息を吐いた。
「よかったぁ。ルティに怪我でもあったら、どうしようかと思ったよ。」
眩しいくらいに美しい顔でほっと息をつくお兄様に、私はぎゅっと抱き着いた。
「大丈夫。心配してくれてありがとう。レイ兄様。」
前世にはいなかった家族という存在。それが愛おしくてたまらなくなり、ぎゅうぎゅうと抱き着くと、お兄様は顔を赤らめながら嬉しそうに抱きしめ返してくれた。
「ルティが可愛い。あぁ、僕の天使。大好きだよ。」
頭をなでなでと撫で繰り回されながら、それが心地よく感じるから不思議だ。前世では、仲間に出会うまで、自分に近づいてくるものは全て敵だと思っていたから、これほどまでに安心して撫でられている自分というのに違和感がある。
燃えていた木は、使用人の手によって全て消され、私はレイに抱っこされて屋敷へと戻った。
それから私は自室へと戻り、ベッドの上にごろごろと転がっている。
伯爵令嬢としてこれまで育ってきた記憶はしっかりとある。なので、本来ならベッドの上でごろごろと転がるなどご法度なのだが、ルティの時の考え事をする時の癖で、ベッドの転がりながら天井を見つめてしまう。
「十年後か・・・」
覚えている限り、私はアベルの亡くなったその3年後に死んだ。
国王に魔獣討伐成功を報告し、国を救った英雄達である仲間の名前をしっかりと報告した。王国は歓喜に包まれ、国を救ってくれた英雄達に敬意を表して、その名を刻んだ魔石を、街の中央へと設立した。墓石は、城内に設置してもらった。
私は亡くなった仲間を弔いながら、気になっていたことについて、王城に務め働きながら調べていた。そしてある可能性を見つけた後、あっけなく暗殺された。
もう少し味方を作っておけばそうはならなかったのだろうが、仲間を作る事に抵抗があった私は、人と深くかかわる事が怖かった。仲間が亡くなってから親しくなった人の数は少なく、だからこそ、あっけなく暗殺されてしまったのだ。
「・・・新しい・・・人生か・・」
この世界に、今、人類を脅かす敵はいない。平和そのものである。
「・・・生まれ変わるなら・・前世の記憶などなかったままであればよかったのに・・・」
何故思い出してしまったのか。思い出さないまま、ただのルティシアであれば、伯爵令嬢としてきっと平和に笑顔あふれる人生を送れたはずだ。
アベルを失った痛みなど、知らずに。
また、自分だけが生きていることに苦しさを感じることなく。
絶望にも似た感情が胸の中に渦巻くが、今の自分には家族がいる。一人ではない。そう思えるだけで少し心が軽くなった。
そして、小さいながらに希望もあった。
「私が生まれ変わったという事は・・・もしかしたら、アベルだって・・・」
そう思うと、顔がにやけてしまう。
私は前世では国一番と言われた魔法使いである。その私が本気を出せば、生まれ変わったアベルだってきっと見つけられる。
「アベル。絶対貴方を見つけてみせるわ。そして今度こそ。今度こそは、貴方にちゃんと気持ちを伝えるわ!」
生まれて初めて、神様に感謝した。ただ、これでアベルが生まれ変わっていなかったら、改めて神様をいじわるで役立たずだと罵ってやろうと心に決めた。
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