異世界について学ぼう
失われた記憶が戻ることを期待して待つよりも
この世界で生きていく術を学ぶ事の方が大切である。
ミーアのその考えからパーティーメンバーそれぞれを師匠として色々な事を学んでいくこととなった。
本当は記憶喪失じゃなくて転生者。
元の世界での記憶ならバッチリ覚えているんだけどね。
正確には転生か転移かはハッキリとはわからない。
とにかくこの世界で生きていく為には、この世界の常識は絶対に必要不可欠であることに変わりはない。
大体の方向性としてはこんな感じ。
ミーアからは剣術を
フィリアからは回復魔法(支援魔法)とこの世界の常識を
リンからは攻撃魔法を
バンからは魔物の特性と解体を
主に学ぶことになった。
報酬はパーティーの荷物持ちや雑用
ミーアの添い寝などである。
働かざる者食うべからずってね。
ミーア達は冒険者をしており主に薬草などを採取してそれを街に納品してお金を稼いでいるらしい。
意外な事に魔物を討伐することはあまり多くはないらしい。
『冒険者』っていう位だからギルドに登録してクエストを受けて報酬を貰うっていうアレなのかな?
ミーアが言うにはギルドはヒューマンしか入ることができないそうだ。
獣人達(混血含む)は、獣人組合というギルドの下の組織に属するらしい。
なんという異世界差別だ!
街の外やダンジョンには魔物がいて魔物を倒すと主に心臓の部分(魔物の種類によっては魔石のある部位が違う)に魔石が埋まっているらしい。
ちなみにダンジョンにはヒューマン以外はほとんど入ることすらできないらしい。
どこまでも獣人差別な世の中だ。
魔石はF〜SSSランクまであり魔物の強さとレア度などによって価値が変わってくるらしい。
ちなみにグラスウルフとカマキリ(マンティスという名前らしい)はEランクの魔石が取れた。
Eランクの魔石1つで銅貨3枚の価値があるそうだ。
(Fランクの魔石は小銅貨3枚)
薬草は1つで小銅貨(銅貨の10分の1の価値)なので群生している事を考えると採取の方が圧倒的に儲かるそうだ。
魔物の素材はあまり需要がなく価値は低いみたいでカマキリの刃1つでも魔石の半分以下の価値(銅貨1枚)しか無いそうだ。
この世界のお金の価値
小銅貨……100円
銅貨……1000円
銀貨……1万円
金貨……10万円
日本円に換算するとそんな感じだと思われる。
魔物の討伐については貴族やヒューマンの方が圧倒的に魔力量が多くて強いらしく主に剣や武器で戦うことの多い獣人は自衛以外ではほとんど戦わないそうだ。
獣人は基本魔力が少ないらしくコスパを考えると魔物討伐は割にあわないそうだ。
なので嫌がらせ的に時々ヒューマン達が獣人パーティーに魔物を誘き寄せるなんていう事もあるらしく、グラスウルフの件はこれと間違われたみたいだった。
この世界では獣人よりもヒューマンの方が強いのだろうか?
そう思いミーアに聞いてみた。
「特に貴族は魔力量がとんでもないからね」
なんでも魔力は遺伝するらしく魔法の使えない貴族はいない。
ヒューマンの殆どがある程度の魔法を使えるらしいということだ。
『剣vs魔法』の戦いを想像してみると魔法使い相手に剣で勝つのは難しそうだ。
魔法を使うまでの詠唱の時間を含めてみても、攻撃の間合いを考えると相手に剣が当たる可能性は殆どない。
見えない所からの奇襲? それも一撃必殺でだ。
それ位しか勝てる要素は無いだろう。
どちらにせよパーティーになれば魔力量の差は戦力の差として顕著になるし、獣人がヒューマンに勝てる可能性は限りなくゼロに近い。
魔力が少ないと言われる獣人……
それでもリンの攻撃魔法は凄かった。
さっきの戦闘で魔物5匹を焼き払った炎の魔法だ。
「リンは魔法は使えるけれども魔力量はそんなには多くないんだ」
アレで魔力が少ないのか……
「1日1回が限度……」
リンが呟く。
Eランク5体=Eランクの魔石5個×銅貨3枚
1日1回の必殺技で15000円か。
他の魔物に襲わるリスク等を考えると確かにコスパは非常に悪い。
んっ!?
確かこの身体は貴族の少年だったハズだ。
もしかしたら何か魔法が使えるかもしれない!
そして私は転生者。
小説や漫画の世界ではチート能力があって当然なハズだ!
そう期待してステータスボード的な物の存在を聞いてみる。
「魔法とか魔力量とかどうやって調べるんですか?」
できるだけ不自然にならない様に気をつける。
「普通にステータスボードで調べることができるよ」
『ステータスボード』キターーーー!!!
心の中でガッツポーズをした。
「教会に置いてあるから町に行ったら使ってみるといいよ」
ミーアが教えてくれる。
ミーアが言う町というのは獣人達の町で『シルバーレイク』という名前だ。
その昔はヒューマンが住んでいて『シルバーレイクシティー』と言われていたがいつの間に捨てられ獣人達が住み着き今ではスラムと化しているとのことだ。
詳しく調べるのは教会に着くまで我慢するにしても、今直ぐ調べる方法はないのかな?
鑑定の魔法とか?
そう思っているとフィリアが教えてくれる。
「実際に魔法を使って確かめる方法もあるわよ。」
なんだって!?
右手を出して掌に炎が出るイメージをする。
……。
……。
何も起こらない。
「炎よ!」
今度は声に出して言ってみる。
……。
……。
何も起こらない。
泣きそうな顔でフィリアを見る。
「炎をきちんとイメージしてやるといいわよ。」
フィリアは右手に小さな炎を出して見せる。
フィリアって回復魔法以外も使えたの?
そう思いつつも真似してみる。
……。
……。
何も起こらない。
まあ異世界に来てまだ初日なんだ。
ゆっくりいこう。
そう自分に言い聞かせつつも目から出てくる心の汗を拭う。
魔法の練習をしている間に辺りはすっかり暗くなっていた。
明日は薬草の採取をしながら町を目指すそうだ。
うん。ステータスに期待しよう。
夜はテントで寝る事になった。
もちろん宣言通りに寝る時はミーアと一緒だ。
ミーアの豊満な胸が顔に当たって少し苦しい。
見た目は非常においしい状況なのだが、転生前私は女性だったのでめちゃくちゃ複雑な気分がする。
色々あって疲れが出たのかミーアの胸に圧迫されつつもいつの間にか深い眠りに落ちていった。




