盗人ガーゴイル
オレの大切な魔道具が入ったバッグを抱えてガーゴイルの姿はどんどん小さくなる。
あの中にあるのはエリックから貰った特殊なアイテムで、まだテスト段階の開発中の物だって入っている。
高価なだけじゃなくあの魔道具が誰かに悪用されたりでもしたら大変だ!!
オレは絶対にガーゴイルの姿を見失わない様に全力で走る。
しかし、ガーゴイルは障害物が何一つない大空を飛び
オレは障害物だらけの森の中を走っている。
ガーゴイルとの距離はどんどん広がっていく一方だ。
弓で攻撃しようにも武器を用意している隙にヤツの姿を見失ってしまうだろう。
「クソッ!!」
焦りと苛立ちから思わず愚痴が出る。
何か方法はないか?
オレは全力で頭をフル回転させる。
今持っている武器ではヤツに届かない。
魔法は使えない。
……!!
あった!
オレは転移スキルを使いガーゴイルの頭上に瞬間移動した。
突然現れたオレの姿にガーゴイルは激しく動揺した。
オレはガーゴイルに反撃のスキを与えない様素早く剣で止めを刺す。
自分に害のある魔物は早急に処理すべきだ。
ガーゴイルを倒し荷物を取り返そうと思った瞬間ーー突然浮力を失ったそいつはオレを連れて急速に落下を始める。
目の前に広がるは地上の森の景色。
ガーゴイルは数十メートル上空を飛んでいた為、そいつを倒してしまったオレは一緒に落ちるしかない。
空を飛ぶスキルなんて持っていない。
いくらこの身体が打たれ強いとはいっても数十メートル上空から生身で叩きつけられる力にはどう足掻いても勝てるわけがない。
どうしよう……
誰か魔法をーー
しかしオレは仲間を置いて単独行動をしてしまったので誰も助けてくれる人はいない。
何か道具は?
魔法道具……投げナイフ(爆)は落下速度を緩めるには威力が弱過ぎる。
投げナイフ(疾風)は物を斬り刻むことしかできない。
クソッ!!
風の魔法があれば落下速度を抑えられるのに……
……せめて硬化!
硬化の魔法があれば……硬化!!
そう思いオレは荷物をめちゃくちゃに漁る。
ーーーーーー
ーーーーーー
……ドーンッ!!!
オレは地面に叩きつけられた。
ぎゅーっと全力で握りしめられた右手には何かが握られている。
衝撃で身体が震えるがなぜか無事だった。
茫然としているとミーア達仲間全員が慌ててオレの所に走り寄ってくる。
「ゼロ!大丈夫か!?」
ミーアが必死の形相で声を掛けてくる。
「……ああ」
何があったかよくわからない。
「バカヤロー!!
単独行動は絶対するなって言っただろ!!」
バンが怒鳴る。
「ごめん……」
「ゼロ君大丈夫?
怪我はない?」
フィリアは心配そうにオレの状態を確認する。
「転移は危険」
リンはそう呟く。
「……そうだな。
悪かった……ごめん」
オレは仲間にそう言って立ち上がる。
幸いどこも怪我しておらず無傷だ。
オレは緊張で硬くなった自分の右の拳を強引に開く。
そこには灰色の石が握られていた。
石?
何だろうと思って眺めているとミーアが聞いてくる。
「石だよね?」
「石だな」
「石よね?」
「いし」
「どう思います?」
さっきのガーゴイルを倒した後、数十メートル上空から地面に叩きつけられたにもかかわらずどうしてオレは無事なんだ?
しかも全くの無傷の状態で。
「……硬化」
リンが呟く。
「そうね……ゼロ君硬化の魔法っぽかったわね」
フィリアが嬉しそうに言う。
「でもオレ魔法なんて使えません!」
魔力ゼロのオレは魔法は使えない。
「覚えたんだよっ! 凄いぞゼロ!!」
ミーアはそう言って褒めてくれるが、ちょっと違う様な気がする。
「まあ……何にせよもう一度やってみたらわかるんじゃねーか?」
バンの提案でもう一度試してみることになった。
前にフィリアに教えてもらった通りに全身を鋼の様に硬くなるイメージをする。
どんな攻撃をも弾き返す最強の鎧を纏っているイメージだ。
そこに全身の魔力を込めて集中する。
しかし何も変化はなく魔法が発動する気配すら感じられない。
「無理みたいですね」
集中を解いてみんなに告げる。
「ダメだな」
「ダメだ」
「ダメね」
「無意味」
一人だけコメントが辛辣な様な気がするが仕方がない。
そうなると残る可能性はこの石が何なのかだ。
オレは右手に握られていた石を見る。
「その石がどうかしたの?」
フィリアが聞いてきた。
「さっき地上に激突した時に無意識に握っていたみたいでコレが何なのか少し気になって……」
オレがそう言いかけると横からリンに石を奪われる。
「魔力の匂いがする」
!!
もしかして……と思い魔石の入っているポーチを調べる。
1.2.3……一番大きいサイズの魔石が1つ足りない。
オレはさっきの落下時の出来事を思い出しながら
一番小さな魔石を右手に握り締めて左手に『炎』の魔法をイメージする。
すると左手には小さな炎が現れる。
不思議な事に炎を持つ左手に熱さは感じられない。
これが魔法?
数秒で炎は消えてしまい、
右手には灰色の石が残った。




