訓練3日目(ジャミル)
秒殺だった。
わずか数秒でジャミルは16匹もの魔物を全て倒してしまった。
「一応色んな種類の魔物を用意したんだけど一瞬だったね」
流石とばかりにエリックはジャミルを褒める。
「ふんっ!
全部Eクラスじゃねーか」
ジャミルにとってEクラスはザコらしい。
「最後の一撃ってどうやったんですか!?」
相手を見ずに投げナイフで一撃って……
「コツバメか?
あれは気配で当てるんだよ」
ジャミルはなんでもなさそうに言う。
つばめの様な魔物の名前はコツバメというらしい。
「気配って?
スキルとかじゃなくて?」
「アホか!?
そんなんでいちいち魔力やスキルなんて使ってたらキリがねーだろが!!
経験だよ!経験っ!!
たくさん戦ってっとなんとなくそういうのがわかるようになるんだ!」
ジャミルは面倒くさそうにしながらも親切に教えてくれる。
経験っていう事は、特殊なスキルとかではないので訓練しだいで誰でも使える。
つまりいつか自分にも同じ事ができるってことだ!
「ジャミルさん!凄いです!!」
尊敬の眼差しを向ける。
「あっ、ジャミルに敬語は要らないから」
エリックはそう言って冷ややかな視線をジャミルに向ける。
「お……おう!」
ガックリした様子で返事をするジャミル。
「さっきのジャミルの攻撃は全て魔力を使わないでやってもらった。
つまり訓練次第でゼロ君にも同じことができるって事だよ」
エリックが説明する。
つまり魔力や魔法を使わなくても戦うことができるってわけか。
「Eなら誰でもできるだろ?」
なんでもなさそうにジャミルが言う。
「Eランクの魔物で戦いの基本を覚えてから魔力を使って高ランクの魔物に挑戦するという過程が大事なんだよ」
エリックが説明を付け加える。
「それじゃ次はゼロ君とジャミルで打ち合いしてみようか?」
そう言ってエリックは木刀を指す。
「力の差がありすぎるじゃないですか?」
私はエリックに抗議する。
「う〜ん……
技術の差はあるけど、力の差はジャミルが魔力を使わない限りはゼロ君の方がちょっと優位だよ」
えっ?
「あっ、もちろんジャミルは魔力なしだからね」
そう言ってエリックはにっこり微笑んだ。
「わかった!!
そういうことなら遠慮なくいくぜ!?」
ジャミルから殺気が放たれる。
どうやらかなりお怒りの様子だ。
どうかご遠慮してもらいたい……
私は木刀を一本持って構える。
ジャミルは少し短めの木刀を二本持って構える。
それぞれが得意のスタイルで戦わなければ練習の意味がないらしい。
二刀流ってだけで武器が1つしかないこっちの方が明らかに不利な気もするのだが……
「ゼロ君はこう見えても打たれ強いから多少強く打っても大丈夫だからね」
エリックはそう言って戦いの合図をする。
余計な事は言わないでー!
そう思いつつも真っ直ぐにジャミルに向かって木刀を振るう。
軽く交わされたと思ったら腹に激痛がくる。
「どうした?」
ジャミルがニヤける。
「まだまだ……」
今度は交わされるの覚悟で真っ直ぐから横に連続して木刀を振るう。
ジャミルは身体の重心を僅かに変えて攻撃を避けバックステップで2回目を交わしつつ私の持ち手に攻撃を当て武器を落とさせる。
悔しい。
「エリック!
こいつ大丈夫か?」
ジャミルは随分と余裕そうに私を見下している。
「心配しなくてもいいよ。
ダメそうなら回復魔法もあるからどんどんやっちゃって」
なぜかエリックは嬉しそうだ。
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それから数時間ジャミルとの打ち合いは続いた。
「それで……
いつまで続ける気だ……」
ジャミルは肩で息をしている。
まだジャミルには一発も攻撃を当てられてはいないが、エリックの回復魔法も使っていない。
どう考えても体力はこっちの方が上だ!
あまりにもジャミルの攻撃を受け過ぎたので今ならどのタイミングで攻撃されるかバッチリわかる。
木刀の攻撃であれば当たる瞬間に力を入れればある程度ダメージは軽減できる。
おまけに一発の攻撃力なら武器を2つ使っているジャミルよりも両手で剣が扱えるこっちの方が上だ!
足を使いジャミルとの間合いを詰める。
がむしゃらにただ向かって行くのではなく、相手を疲れさせる作戦だ。
最初の頃に比べたらジャミルはスタミナ切れを起こしているので動きにキレがなくなっている。
狙いをわざとズラしながらフェイントを織り混ぜて攻撃を乱発する。
ジャミルの攻撃が当たる瞬間にあえて自分から攻撃にぶつかりにいく、ジャミルが一瞬だけよろけた。
私は体勢を崩したジャミルのがら空きの腹部目掛けて全力で横に剣を振り切った。
バキッ!!
ジャミルのお腹に私の攻撃が当たった勢いで木刀が真っ二つに折れてしまう。
「ジャミル!!」
エリックが怒鳴り声を上げる。




