訓練3日目
あれから昨日は一日中ナイフを投げ続けた。
命中率はかなり上がったもののまだまだ実戦では使えそうにない。
今の命中率は30%程度で狙った所に投げれなかったり、ナイフの柄の部分が当たったりしてしまう。
酷い時だと真っ直ぐ投げたはずのナイフがなぜか足元に転がっているということもある。
憂鬱な気持ちで目を覚ます。
今日こそは命中率50%を目指す!
エリックが来る前に先にナイフの練習をしようと思い早めに準備をして朝食を取りに行く。
「おはよう。
今日はずいぶん早いのね」
ミレーユに声をかけられる。
「おはようございます。
はい!エリックが来る前に昨日の復習をしようと思いまして」
案内された席に座りながら話をする。
「うん、感心感心。
一流と言われる冒険者はみんな今のゼロ君と同じ様に人が見ている場所だけじゃなく、誰も見ていない場所だからこその努力をして成長していくの。
きっとゼロ君は良い冒険者になれると思うわよ」
ミレーユはそう言って水とメニューをテーブルの上に置いた。
彼女の期待に応える為にも頑張ろうと思う。
朝食を終えて訓練場に行く。
まだエリックは来ていないので投げナイフの練習をする。
一晩寝て時間が空いてしまった事もあり勘を取り戻すのに苦戦する。
今のところ命中率は10%程度だ。
徐々に的に当たる様になってきた所でエリックが他の冒険者を連れて来た。
「ごめんごめん、遅くなった」
少しも悪びれる様子もなくエリックはそう言って一緒にいる冒険者を紹介する。
「彼はジャミル。
歓迎会の時に会っていると思うけど、こう見えても彼凄腕の冒険者だからゼロ君のいい先生になるよ」
そう言ってエリックは宴会の時に会ったお調子者のねずみの獣人を紹介した。
「ふぁ〜……
まったくこんな朝早くにふざけんなよ」
ジャミルは酷く眠そうにぶつくさと文句を言う。
「ジャミル……
僕は別に君にお願いなんてしていないよね?」
エリックの笑顔が黒い。
「おっ、おうっ!
俺はジャミル! 得意武器は短刀で二刀流だ!
よろしく頼むぜ!!」
真っ青な顔をしたと思ったら態度をコロッと変えた。
ある意味すごい男だ。
「ゼロです。
武器は剣と投げナイフを練習中です。
よろしくお願いします」
そう言ってジャミルと握手をする。
「僕も仕事があるからずっとゼロ君に付きっきりってわけにもいかなくてね。
ジャミルは性格に少し問題はあるけれどこのギルドで一番器用な男だから、どんな武器でもある程度上手く扱う事ができる。
僕がいないときは彼が面倒を見てくれるから仲良くやってね」
そう言ってエリックは再びジャミルに黒い笑顔を向けた。
きっと2人の間には何かの取引(脅迫)があったのだろうと想像する。
「それじゃ、ジャミル!
デモストレーション代わりに君の戦い方を彼に見せてあげて」
エリックは杖を取り出し魔力を込める。
「おいおい……
マジかよ……?」
ジャミルは動揺しつつも2本の黒い短刀を取り出し戦闘態勢になる。
エリックの杖が光輝き辺りには魔物の群れが現れた。
グラスウルフ8匹
ゴブリン5匹
つばめの様な見た目の鳥の魔物(大きさはドッヂボールくらい)3匹
計16匹の魔物。
「あっ、ちなみに魔力使うの無しね。
使ったら罰金だから」
エリックが言うと同時に魔物は一斉にジャミルに襲いかかる。
「ちょっ……いきなりって」
そう言いつつもジャミルはグラスウルフの攻撃をひらりと交わし、魔物の間をすり抜ける。
一瞬の動作で華麗に短剣を操り一気にグラスウルフ3匹とゴブリン2匹を魔石に変える。
一瞬の隙をついてつばめ(?)が真っ直ぐジャミルに突っ込んで来る。
カウンターでジャミルは短剣でこれを切り裂き、更に上空にいる別のつばめに投げナイフを放つ。
残る魔物は
グラスウルフ5匹
ゴブリン3匹
つばめ(?)1匹
あっさりと半数近くの魔物を倒してしまうジャミルは想像していたより遥かに強い。
「魔力無しだと面倒くせーんだよ!」
そう言い放ちジャミルは魔物の群れに突っ込んで行く。
華麗に双剣が舞う。
まるで魔物の方がジャミルの双剣に吸い込まれていくかの様に次々と魔石に変えられていく。
「これで終わりっと」
最後にそう言って立ち止まると、ジャミルは相手を見もしないで投げナイフでつばめ(?)に止めを刺した。




