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冒険者の訓練(剣術)

私の身元調査が終わるまでの期間限定で獣人組合(獣人ギルド)にお世話になることになった。


ギルドの二階部分は宿泊施設になっておりそこを一部屋使わせてもらう事になる。


宿泊施設はその昔宿屋として利用していた為、設備に問題はなく今でも時々怪我人やギルド職員が泊まるのに使用しているそうだ。


宿屋の営業は酒場で酔った冒険者が色々と問題を起こす事が多かったので現在は営業停止状態が続いているらしい。


ギルドの地下は訓練場になっており主に初心者冒険者の修行の場になっている。

訓練場の他に図書室もあり全ての本が閲覧自由になっているが、本の持ち出しはできない。


時々薬草の採取講座など冒険で役立つ様々な講座も行っているそうだ。



「それじゃ先ずは剣術から試してみようか?」

エリックは訓練場にある1番小さい(15cm程の長さの)木刀を手に取る。


私はエリックと同じ木刀を取ろうと手を伸ばすがエリックに止められる。

「ゼロ君、先ずは君の武器でやってみようか」


どうやらエリックはナイフの様に小さい木刀で私の貴族の剣と戦うらしい。


正直、ふざけている様にしか見えない。


こっちは刀身50cm以上はありそうな真剣。

それをナイフの様な小さいサイズのしかも木刀で相手にしようというわけだ。



「心配しなくても絶対に擦りもしないから本気で来てね」

そう言ってエリックはろくに構えもせず無防備に立っている。


「一応、ラビットホーンなら狩った事があります」

念の為全くの素人ではない事を伝えてから斬りかかる。


例え怪我をさせたとしてもあっちの責任だ。


先ずは真直ぐに振りかぶる。

流石にギルドマスターだけあって軽く半歩下がって交わすエリック。

次は大きく真横に振る。

またもや半歩下がって交わすエリック。


このまま相手が後ろに下り続ければいずれ壁まで追い込める。

そう考えて連続的に剣を振るう。


縦・横・斜め・下から…ありとあらゆる角度で剣を振るう。


剣術は習った事はないので技ではなく手数と力で押し切る!


エリックは羽の様に軽いフットワークで後ろに下り続ける。


もう後が無いというところになって

私はエリックの逃げ道を塞ぐ様に大きく横に剣をぶん回した。


すると何が起こったのかわからないままエリックと私の立ち位置が入れ替わっている。

壁を背にして追い込まれたのは私の方だった。

剣を持つ手を木刀で殴られる。


衝撃で剣が落ちる。


今何が起こった???


「うん。

それじゃ次は木刀でやってみようか?」

エリックは余裕の表情で私が落とした真剣を拾って次を促す。


肩で息をする私を背に木刀を取りに行くエリック。

攻撃を一切しないで交わすだけなんて卑怯だと思う。


ぶっちゃけ攻撃する方が疲れるのは当たり前だ。


無言で木刀を受け取り更に攻撃を開始する。

スタートの合図なんて知ったものか!


武器を持ったら戦うだけ!

何よりあの余裕な顔に一発喰らわせてやらなきゃ気がすまない!


先手必勝とばかりに木刀で先程と同じ様に剣を振るおうとする。

真っ直ぐに……なんか右手と左手があべこべだぞ?

真横に……左から右はスムーズだが右から左が上手くいかない。


さっきと武器が違うだけなのに???


そう思いながら力任せに木刀を振るうが、あっさりと今度は木刀の軌道をエリックによってわずかに変えられ、そのまま私の木刀は虚しく空を切り、エリックの木刀に軽く頭を叩かれる。


くそっ!


「木刀の方がやりづらいでしょ?」

小さな木刀を空中に投げてキャッチしながらエリックが聞いてきた。


「なんか木刀だと感じが違う様な気が……」

真剣だとまるで自分の身体の一部の様にスムーズに剣を使えたんだよな。


「それが君の本当の実力だからだよ」

エリックは嬉しそうに言う。


いやいやいやいや……

流石にそれは無理あるっしょ?


そう思いつつも感情を押し殺して

「どう言う意味ですか?」

聞いてみた。


「君のシルバーソード(貴族の剣)は【剣術初級】のスキルが付与してあるからだよ。

後自動修復も……」


スキルって武器にもあるの?

って言うか、最初から使えるスキルがあるならそっちを使えば良くない?


「僕はね……

スキルってあんまり好きじゃないんだよね。

だからここではこの剣の使用は認めません!」

エリックはそう言って私の剣を訓練場の隅に置いてしまう。


お前の好き嫌いなんてどうでも良いんだよ!!

っと思ってもそれを今ここで口にするわけにはいかないので、ぐっと堪える。


26歳年上の余裕ってやつだ。

20歳かそこらの若造に何を言われても動じないのさ。


「エリックさんて何歳ですか?」

なんとなく気になって聞いてみた。


「エリックでいいよ。

んー150を超えてから数えていないけれど……

だいたい200歳くらいかな。

ヒューマンって歳聞くの好きだよね」


まさかの年上だった。

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