初心者冒険者用アイテムセット
旅の必需品を揃える為にバンの馴染みの店へと案内してもらう。
バンを先頭にお目付役としてなぜかミーアも一緒だ。
大通りにある屋台から離れ人気の少ない路地裏の店へと連れて行かれる。
きっと女の子の身体だったら物凄い不安になったであろう雰囲気の道だが、幸いこの身体は男の子。
ミーアも一緒なので若干の不信感は拭い去られる。
大通りや屋台でも買い物はできるが、
売っているポーションは品質が悪く価格も割高なのでそっちで買う人はほとんどいない。
ベテラン冒険者はみんな顔馴染みの店で買い物をするのが常識らしい。
何年も前に閉店した様なボロい外観のお店の前でバンは立ち止まり、立て付けの悪いドアを力任せに無理矢理こじ開ける。
店の中は薄暗く妙に埃っぽい。
入り口付近にある空樽には埃の被った剣や槍などの武器が無造作に突っ込んである。
パッと見ただけでどれも既に錆び付いていてとてもじゃないけど実戦では使えない品だというのが一目でわかる。
古ぼけた鎧に薬棚には品質管理や消費期限なんてういものは最初から存在しないといわんばかりに、何年も前から同じ場所に居座り続けた薬品達が所狭しと並んでいる。
きっと店主でも何がどこに置いてあるのかわかっていないと思う程に店内は商品で溢れ返っている。
バンはおもむろに店の奥にあるカウンターのテーブルを力任せに2回ドンドンとぶっ叩く。
「おいっ!
じじい!!
居ねーのか!?」
店員を呼ぶと言うよりは怒鳴りつける様なその行為に一瞬ドキッとしてしまう。
「うるせーなっ!!
なんだバンじゃねーか!」
店の奥から怒鳴り声を上げて白髪に白髭を生やしたドワーフが顔を覗かせる。
「コイツにぴったりの装備品を頼む!」
バンはそう言って私を指す。
「えっ……よろしくお願いします」
いきなり話を振られてびっくりした。
「ふんっ! ヒューマンのガキか……」
えっ?
「で、武器は何だ? 杖か?」
「コイツは魔法は使えない。
武器は……剣があるから狩に使える弓矢が1セット。
それと初心者冒険者用に使えるアイテム1セットだ。」
バンはそう言ってサイフを出す。
「魔法を使えないって……」
ドワーフの爺さんが眉を片方上げてこっちを見る。
「今のところ全く発動する素振りすら見せないんだよ」
ミーアがそう言って首を傾げる。
「……そうか。
……珍しいな。」
ドワーフの爺さんはそのまま私をじっと見つめてくる。
爺さんが用意したのは次の4つのアイテムだ。
・子供用の狩人の弓と木の矢24本
・子供用魔法のリュック(収納魔法で荷物が3倍+自動軽量化)
・魔法の水筒(魔石を消費して水が湧き出る)
・魔法のランタン(魔石を消費して光を放つ)
1つ目の装備品『狩人の弓』は普通の木の弓だ。
私の背丈に合わせた子供サイズで小さなウサギ位なら上手く狩れそうだ。
2つ目の装備品『魔法のリュック』はバン達が装備している物と同じ商品。
サイズは子供用になっており、背負っていても動きやすく魔物との戦闘にさほど支障がないと思う。
獣人冒険者はアイテムボックスや収納魔法を使える者が少ないらしく大抵の冒険者はコレを持って旅をするみたいだ。
3つ目のアイテム『魔法の水筒』は魔道具だ。
生活魔法で水が出せない冒険者や魔力が少ない冒険者が好んで使うらしい。
魔力の多いヒューマンは先ず使わないそうだ。
4つ目のアイテム『魔法のランタン』は魔道具。
獣人でもライトの魔法は誰でも使えるらしく全く売れない在庫処分品。
魔法が全く使えない私の為に店主がサービスで付けてくれた。
代金はパーティー資金から出してくれたので私の負担額はゼロだ。
金貨や銀貨が見えたので実際は結構な額になったのだろう。
装備品ついでにミーアはパーティー用のポーションなどの消耗品を大量に買い店から出た。
それにしてもどうして私の正体がヒューマンだとバレたのだろう?
バンが言うには爺さんは客商売が長いので人を見る目が培われているのだろうということだ。
宿に戻る途中に着替え用の服と下着もいくつか買い足して部屋に戻った。
夜には教会へ行くのでその前に夕食にすることになった。
夕食は私の歓迎会を兼ねて普段ミーア達がお祝いに使うエールの美味いちょっと良い店になった。
この店は3種類のエールが楽しめるらしい。
苦い味わいのものが1つ。
フルーティーな甘みとさっぱりした清涼感が売りのものが1つ。
大人向けの辛くてクセのある物が1つだそうだ。
もちろん私の身体は6歳なのでお酒は飲めない。
ちなみに前世では仕事後に毎日缶ビールを飲んでいた。
この世界では酒は何歳から飲んで良いのだろうか?
ミーアの反応から察するに年齢制限はなさそうだが何か問題が起こっても嫌なので飲まない事にする。
パーティー4人がエールを頼んでいたが私は無難に果実水を頼んだ。
ホロホロ鳥の丸焼きとラビットホーンのステーキ。
豆と芋の炒め物。きのこのソテー。硬いパン。
サラダなどたくさんの料理がテーブルに並んだ。
味付けは香草をふんだんに使っておりどれも美味しかった。
どうやら旅の途中で食べた食事は単にミーア達の料理の腕前が悪かっただけなのかもしれない。
この世界の調味料については、そのうち調べてみようとおもう。
一刻も早く料理を覚えて旅の食生活を充実させねばと密かに心に誓った。




