獣人の町『シルバーレイク』
遠くの方に木の塀で囲まれた町が見える。
魔物が町の中に入らない様に塀で囲っているのだろう。
もしかしたら反対に住民を外に出さない為の塀に見えなくもない。
一足先に町の様子を見に行っていたミーアが戻って来る。
「予想通り、ゲイルだった!」
ミーアが確認したのは今日の門番が誰かということだった。
門番によっては身分証から荷物の確認まで細かくやる人や、適当に顔を見て通してしまう人、
なんでも上司に報告する人など様々な人がいるらしい。
中でもゲイルというのは金にだらしがなく仕事もいい加減で冒険者の中にはゲイルの日を狙って出入りする者までいるそうだ。
いざとなったら転移のスキルで町に侵入することもできるかもしれないが、リスクが高く非常に危険だ。
転移のスキルは、テストをした結果使用は1日に1回が限度で回復までおおよそ20時間程度かかった。
初めて転移してから朝・昼・夜とスキルを試しているが最初の転移は夕方1度、2回目は次の日の昼に1度成功した。
今日はまだ転移は使っていないが、スキルはできるだけ隠しておいた方がいいし実戦で使うにはまだまだ練習が足りなさ過ぎる。
ミーアに続いてバン・フィリア・リンが横並びで進んでいく。最後尾にフィリアの服を摘んで私がいる。
冒険者パーティーに保護された獣人少年という感じだろうか。
町が近くに連れて心拍数がどんどん上がる。
「ゲイル、お疲れー」
ミーアが気軽に門番に声をかける。
門番は蜥蜴人で槍の様な武器を持っている。
とても怖そうで彼の顔を見る勇気はもちろんない。
私はできるだけ視線を合わせない様にずっと下を向いている。
「また変なガキの連れて来て、相変わらずだな〜」
ゲイルはミーアに呆れている様子だ。
どうやらミーアが子供を連れて町へ戻るのは初めてのことではないらしい。
「まぁ、そう言うなって。
これで美味いものでも食ってくれよ」
そう言ってミーアは何かを手渡す。
きっとお金なんだろう。
「へへへっ、ありがとうよっ!」
そう言ってゲイルはチェックなしで町に入れてくれた。
いいんだろうか……
町に入ると想像していた以上に人で賑わっている。
武器を担いだ人や果物の様な物を乗せた台車を走らせる人。
獣人やエルフやドワーフなど色々な種族の人がいる。
前世の世界のお祭りの様にあちこちに屋台が並んでおり、屋台には串焼きの肉や何かのスープ、パンの様な物など様々な物が売っており目移りしてしまう。
「すごい!どれも美味しそうっ!!」
町に入る緊張から今日は朝食も喉を通らず、ほとんど食べていなかった為に空腹だ。
おまけに少年のこの体は本当にお腹がよく空く。
今なら前世の食べ放題のお店を2、3軒はしごするくらいは食べられそうだ。
「待て待て、先ずは素材を売って現金を……」
そう言ってバンが先を急ごうとするが
「シルバーレイクといえば肉串!
それにきのこもおすすめだから……」
ミーアが私の手を取って屋台に向かう。
それに続いてリンとフィリアも肉串を買う。
ミーアに代金を払ってもらい熱々を頬張る。
肉串はラビットホーンの肉で非常に美味だ。
この世界では珍しくしっかりとお塩が効いている。
ミーアとリンとフィリアも肉串を頬張り、難しい顔をしていたバンも結局購入して5人で一緒に食べ歩く事になった。
町での移動は危険があるので必ずミーアと手を繋いで行動する。
ミーア的には幼い子供と手を繋いでいる感覚だろうが、前世の記憶がある私にはこの歳で誰かと手を繋いで歩く行為が少し恥ずかしい。
手と口の周りについた肉の油をミーアが洗浄魔法できれいにしてくれる。
前世ではウェットティッシュが必需品だった為に地味に便利な生活魔法に憧れる。
この世界では剣士でもほとんどの人が魔法を使えるらしい。
次にきのこの焼き串を食べる。
きのこは見た目派手な毒キノコで不思議な感じがするけど甘塩っぱいタレで味付けしてありめちゃくちゃ美味しい。
肉よりこっちの方が個人的には好きだ。
その後果物をいくつか購入してから本日の宿へと移動する。
ミーア達と一緒にいるからなのか、とても治安が悪い町には思えない。
活気があって食べ物も豊富でどれも美味しい。
宿は『銀の狼亭』
店主は狼の獣人かと思いきやどう見てもワンちゃん。
ゴールデンレトリーバーの様な垂れ耳が可愛い男の人だった。
年齢は40位で金髪だ。
ミーアが受付で2部屋予約する。
1つは4人部屋で女子が使い、
もう1つは1人部屋でバンが使うそうだ。
私はミーアの希望で女子部屋を使う事になった。




