表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/134

メイド仮面ユウヒ《3》


 ――昼。


 どこのクラスも、一旦昼休憩に入り始めた時間帯。


「きゃーっ! フィルとシオルから聞いてはいたけれど、ユウヒ、すっごいクオリティ高いわねー! 超正統派メイドって感じで!」


 ネイアの歓声に、クラスの女性陣が言葉を続ける。


「本当! クラスの男どもの女装、他のは面白くて大分笑ったけど、ユウヒみたいに本格的なのも良い感じ!」


「ね、正しくお姉さまっていう言葉が似合う感じで!」


「ありがとうございます、お嬢様方」


 非常に様になった様子で、一礼するユウヒ。


「うわ、すごい綺麗な礼! 流石、洗練されてるわね……!」


「ユウヒ、かなり運動が得意だし、イルジオンも綺麗に飛ぶけれど、やっぱりこういう面にも発揮されるのかな」


「あー、ありそう。――ねえ、ユウヒ君、こうポーズ取って、『お帰りなさいませ、お嬢様』ってやってくれない?」


「お帰りなさいませ、お嬢様」


「あ~、いいわねぇ! ユウヒ、きっとその道でも食えるわよ!」


「むしろ、ウチの家政婦さんとして雇いたいくらい!」


「ハァ、もうユウヒ君、ずっとそのままでいたらいいんじゃないかな」


 彼女らがユウヒを囲んで、延々とキャーキャー言っている様子を見て、ラルは思わず知り合いの鬼族の少女へと問い掛けていた。


「……シオル、アイツ……どうしちゃったんだ?」


 風紀委員になった友人が、見回りを終わらせてこちらに合流したかと思いきや、もうずっとあんな感じである。


 何と言うか……モテモテだとは言えるのだろうが、あんまり羨ましくない方向でのモテ具合だ。

 というか、奴は相当女装を嫌がっていたはずだが、何がどうなって、ああなっているのだろうか。


 もう、ノリノリというか、やけっぱちというか。


 ユウヒと仲が良い関係で、男子の中ではそれなりに話す相手であるラルの問い掛けに、シオルはちょっとやきもきした気分を胸中で抱えながら答える。


「もうなんか、一つ彼の中で振り切っちゃったようで、朝からずっとこうよ。どうやら、自分は本物のメイドであるって強く思い込むことで、精神安定を図っているようね」


「……今は安定出来るかもしれねーが、あとで素に戻った時、逆に自殺したくなるくらい精神崩壊しそうじゃねーか、あれ? 四日間やるんだぞ?」


「……それに関しては同感ね。本当に様々なものを投げ打って、あの状態になっていることは間違いないでしょうし」


 ちなみに、ラルもまた接客要員であるため、現在メイド姿になっている。


 彼はユウヒとは逆の方向に振り切り、男のメイド部隊と共に野太い声で男らしく接客を行い、そのギャップが意外と好評で、午前中だけでも客入りはかなり良かったりする。


 フィルは午前中に接客をしていたが、午後から風紀委員として見回りがあるため、もうここにはいない。


「……あー、シオル。そんな顔しなくても、ウチのクラスの中に、お前とフィルからユウヒを取ろうなんて猛者はまずいねぇから、そこまで心配すんな」


「えっ、な、何を言ってるの?」


 わかりやすく狼狽えるシオルに、ラルはおどけるように肩を竦める。


「どういうやり取りがあったのかは知らねーけどよ、三人の間ではもう決着が付いてるんだろ? フィルとシオルの間に割り込んでユウヒを奪おうなんて命知らず、一年生にはもういねーだろうさ。お前ら、すげー有名人だし」


「そ……そうなの?」

 

「おう、やっぱユウヒがな、色々とアレだからよ。一緒にいるお前らがアイツにぞっこんなのも知れ渡ってるし、お前らの戦闘能力が本当にヤベーことも知れ渡ってるし、もう脅威度『Ⅹ』の魔物より恐ろしいだろうよ。つか、実際フィルとユウヒなんて、それを討伐してるし」


「…………」


「おっと、余計なこと言ったか。じゃあ俺、接客に出るから、お前も早いところ準備しろよ」


 顔を赤くし、気恥ずかしさの感じさせる視線で睨むシオルに、ラルは笑ってその場から逃げて行った。



   *   *   *



 裏でそんなやり取りが行われているとは露知らず、女性陣から解放されたユウヒは、接客を開始していた。


 外に列をなす程、ということは流石にないが、それでも毎回全てのテーブルが埋まるくらいに人入りは良く、『女装男装喫茶』という企画はこのままいけば成功に終われそうだ、という手応えを皆が感じているくらいには忙しくしていた。


 生徒会長コンビである、レーネとエイリが彼らのクラスに訪れたのは、そんな時である。


「ようこそお越しくださいました、お嬢様方」


「あら、随分と綺麗な子ね――えっ、い、いや、待って。この魔力の質……ゆ、ユウヒ君なの!?」


「え!? こ、この完璧な感じのお姉さんが!?」


 二人の驚愕の声に、ユウヒは淡々と対応する。


「はい、ユウヒです。二名様ですね? こちらへどうぞ」


 思考が停止し、唖然としたまま二人が大人しくテーブルに着いたのを見て、ユウヒは手作りのメニュー表を彼女らの前に置く。


「メニューはこちらになります。お決まりになりましたら、お声がけください」


「え、えっと……ユウヒ君、どうしちゃったの?」


「と、というか、本当にユウヒ先輩なんです? 顔は見えないですけど、私には綺麗なお姉さんにしか思えないんですが……声も違うし……」


「魔力の質が覚えのあるものだから、そこは間違いないはず。うん、はずなんだけれど……」


「はい、メイド仮面ユウヒです。どうぞよろしくお願いいたします」


 悪ノリしたクラスの女子達に教え込まれた、メイド仮面らしい、かっこかわいいポーズをシュピンと行うユウヒ。


「うお――!」


「ふえっ、え、エイリちゃん?」


 テンションが急上昇し、両の拳を掲げるエイリと、驚いてビクッと身体を跳ねさせるレーネ。


 ちなみにエイリは、表では隠しているが、特撮がかなり好きだったりする。


「あ、あの、メイド仮面さん。私と一緒に、こういうポーズを取ってくれませんか?」


「勿論構いませんよ」


「やったぁ! れ、レーネ先輩、これで! これで写真撮ってください!」


「……え、えぇ、いいけれど」


 後輩の、今まで見たことがない姿に面食らいながら、レーネは魔道具を受け取り、起動する。


「は、はい、チーズ」


「いえい!」


「いえい」


 カシャリと写真を撮り、エイリが大喜びでその写真を確認し始めた横で、レーネは苦笑を溢す。


「……私、例の件で、ユウヒ君に聞いてほしいことがあったんだけれど……」


 彼女の言葉に、ユウヒはメイドモードを維持しながらも、ピクリと反応する。


「……えぇ、聞きましょう」


 多分夜には死にたい気分になってる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 他の女に囲まれてる魔王さまにハラハラするシオルかわいい [一言] この世界特撮あるんだ… 魔法ある世界だし変身玩具めっちゃ性能よさそう 王女ちゃんイベントとかに行きたくても行けなくてぐぬ…
[一言] なんという、カリスマ、これが魔王!(メイドです
[良い点] 他の男子共や女子の様子、反応が見れたこと ラル、アイツは良いヤツだったよ・・・ 姫様の魂の叫びで大いに笑いましたw [気になる点] この世界の特撮、色々と凄い事になってそう
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ