慣らし運転《3》
今日から毎日投稿再開しやす!
ただ、ちょっともう感想返しは出来んかも。すまねぇ。
「――お疲れ、三人とも。ユウヒ君、海に落ちていたようだが、大丈夫かな?」
その後、トカゲ野郎を斬り刻んで討伐し、学園まで戻ると、出迎えてくれたレツカ先輩が声を掛けてくる。
「……大丈夫っす。全部魔力障壁で弾いたんで。ただ、魔導ライフルで変に殴っちまったんで、もしかすると銃身にちょっとダメージが入ってるかもしれないっす」
「キレて殴ってたもんね」
フィルの言葉で大体何が起こったのか悟ったらしく、レツカ先輩は苦笑を溢す。
「あー……わかった、見ておこう。――ユウヒ君、フィル君、二人の専用機の確認は少し時間が掛かるから、先に着替えてくるといい。シオル君も、機工科の生徒達が君の機体を隅々まで解体、もとい整備したがっているから、任せてしまってもいいか? あ、最後はしっかりデナ先輩が見るから、おかしなことには絶対にしないぞ」
「フフ……えぇ、大丈夫です」
「機工科、相変わらずっすね」
「はは、カルーシ型イルジオンは、ほとんど触る機会がないからな。正直、私もシオル君のカスタムを隅々まで見たい気持ちがある」
「かっこいいっすよね、カスタム」
「うむ、かっこいいな、カスタム」
「……男の子の世界って、僕は言いたいところなんだけれど、ここの学園、女の子も結構そういうの好きなんだよねぇ」
「私も、銃はかなり好きだから、気持ちはわかるわ」
それから、各々機体を降りて機工科の生徒に任せた後、男女それぞれの更衣室へと向かう。
女性陣と違ってそこまで身なりに気を遣うこともないので、パパっと汗だけ拭いて制服に腕を通した後、更衣室を出る。
やはりというか、フィルとシオルはまだ更衣室から出て来ておらず、専用機の方の確認もまだまだ終わってないようだ。
……なんか、飲みモンでも買っといてやるか。
喉の渇きを感じ、彼女らも多分そうだろうからと、俺は格納庫を出て自販機のあるところに向かい――。
「お?」
「あ」
――自販機が置いてある、屋外待合所のようなところのベンチに座っていたのは、国会議事堂で出会った少女だった。
手持ち無沙汰だったらしく、退屈そうな顔をしていた彼女は、俺の姿を見つけると口元に笑みを浮かべ、話し掛けてくる。
「ユウヒ先輩、また会いましたね」
「何だ、今日もサボりか? 流石に怒られるぞ」
今日も、普通に平日だ。
……いや、今はもう放課後なので、もしかすると中等部で一日を終えてから、こっちに来たのかもしれないが。
「あー……正直に言うと、私もう、中等部には行かなくてもいいんですよ。来年、ここの学園に入学することが決まってまして、ほぼ自由登校の期間になっていると言いますか」
「え……? お前、中等部の一年生じゃねーの?」
と、思わず口走ると、彼女はわかりやすく怒り出す。
「あー! 失礼ですね、先輩の一個下ですよ、私は! 確かにちょっと背は低いですが、そこまで幼くは見えないはずです! 年齢も、もう十五ですし!」
「お、おう、そうか……悪かった」
素直にそう謝ると、少女は唇を尖らせながら、言葉を続ける。
「全く……気を付けた方がいいですよ、先輩。女性に年齢の話はタブーって、聞いたことないんですか?」
「いや、それは普通、年上に対する時の話だと思うが……」
「年上年下問わず、女性はその話が嫌いなのです!」
「わ、わかった、わかったって。悪かったよ」
グイとこちらに顔を近付けて力説する彼女に、俺は上半身だけを仰け反らせてそう答える。
どうやら外見に関することは禁句だったらしい。
まあ実際、俺もリュニくらいの歳かと思っていたくらいだし、結構気にしているのかもしれない。
「エイリちゃん、ごめーん! 遅れちゃった――って、あれ? ユウヒ君?」
と、聞こえてきた声の方向に顔を向けると、こちらへと小走りで駆け寄っくるは、レーネ先輩。
この感じからすると、二人で待ち合わせしていたようだ。
最初に退屈そうにしていたのは、レーネ先輩をそれなりに長く待っていたのだろうか。
「ユウヒ君、エイリちゃんと知り合いだったの?」
「知り合い、まあ、知り合いではありますね。……お前、エイリって名前だったのな」
「はい、エイリです。どうぞよろしく」
「……名前も知らなかったの? えっと……ユウヒ君、この子が誰だか知ってる?」
「初対面で変人呼びしてくる失礼な後輩っすね」
「おっと、本人を前にして言いますね、先輩」
「先にそうしたのはお前だ」
「いやいや、私のは誉め言葉ですから」
「いいか、後輩よ。変人と呼ばれて喜ぶのは変人だけだ」
「お、上手い!」
「上手くねぇ」
そんなやり取りを交わす俺達を見て、レーネ先輩は苦笑気味の顔をする。
「本当に、名前も知らないような間柄だったの?」
「顔を合わせるのは今日で通算二回目になりますね。で、誰なんです、コイツ?」
「……この子の名前は、エイリ=セイローンよ」
「……セイローン?」
「えぇ、そういうことよ」
俺の顔を見て、理解が及んだことをわかったのか、コクリと頷くレーネ先輩。
この国において、『セイローン』の家名を名乗って許される家は、一つだけ。
すなわち――王族である。
ということはコイツ、王女ってことか?
「…………」
俺は、少女を見る。
……なるほど、そう言われると、どことなく顔立ちに国王と似ているところがある。
特に、一本芯を感じさせる意思の強そうな瞳など、そっくりだ。
この前城にいたのは、その関係だった、ということか。
「どうですか? これでも私、お姫様なのです」
腕を腰に当て、薄い胸を張る彼女に、俺は言った。
「似合わねぇ」
「すっごい正直に言いましたね!?」