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俺はバベルで冒険王  作者: お茶菓子
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1部-1章-5話


「あいっ…た~~…」


「!!!……アンタじゃ持てなさそうね」


「そうみたいだね…」


フーアンは驚いた顔をして、ラティーに魔導銃を渡した。ここだけの話羨ましかった。


次の日、俺とラティーは丸一日寝る事になり、翌々日の昼頃にこの町を出発した。

ある程度のポーション類を補充したかったけど、町の状況がそうもいかない雰囲気だった。

宿屋のおじさんは命を取り留め、何とか切り盛りしていた。


「お大事にー!」


と簡単に見舞って、次の街【バリフィストス】へと向かう。


「馬車、無事でよかったね~」


「そうね、次でポニ子とお別れってなるとなんだか寂しいわ」


「ポニ子?」


「この馬の名前よ」


俺とラティーとポニ子でバリフィストスに向かう。

一晩野営して、次の日の昼に到着した。

夜になると魔物は活性化するらしい、俺が見張り番の時にゴブリンパーティと遭遇したので、とりあえず処した。


「何者だ」


「おまえこそ何者だ」


ぶったたかれた。少しふざけただけなのに。


「冒険者よ、コイツがごめんなさいね」


ラティーがそう言って、俺と二人でギルドカードを見せた。


「お、おう…、通っていいぞ」


石の壁が積みあがっていて、王都の周りにある城塞よりは規模の小さい街だった。

騎士が多いような感じもする。

守衛の騎士に冒険者ギルドの場所を教えてもらって、そこを目指す事にする。


「あ、そうそう君たちこの街に来た事は?」


「ないけど」


「名物、蒸機列車があるから見ていくと良い」


ここバリフィストス領には列車があり、メイワールスの中心【エクスピスタ】に繋がっているみたいだ。

とてつもなくカッコよく、そして重々しい感じがする。ロマンだ。

北国、メイワールス帝国に入ったんだなぁと実感する。


「行くわよ!!!っての!!!!何回言わせんの!!!!!」


「乗ろう、あれ乗ろう!!」


「分かった分かったから、とりあえずギルド向かうわよ!!!」


「煙出てる!なんだあれ!」


「うるっさいわね!」


ラティーに引っ張られながらも、冒険者ギルド向かう。

ギルドに向かう道中、中央とは違うのがフードを被った浮浪者のような人が良く見られた事、鎖に繋がれている人間や獣人がいた事に驚いた。

色々よそ見しながら歩いていたら、一人のフードをして全身隠れている人とぶつかってしまった。


「うわっ、ご、ごめんなさい!」


すぐ謝ったけど、その場で倒れてしまった。

周りを見ても騎士のような人が見当たらない。すぐに抱き起すと、顔の左上がナスのように腫れ上がっていて、左目は開かない程になり傷もあった。所々血が付いていたのでただ事では無い感じがした。


「わ!ど、どうしよラティー!」


「な、何よコレ…とりあえずギルドに連れて行きましょう」


この女の人をおぶさって、ギルドに連れていく事にした。

道中、珍しそうな目で見られた。

程なくしてギルドには着き受付嬢に軽く説明を済ました。


「ごめんなさい、ギルドでは治療が出来ないから、教会の場所教えるわ」


近いから安心して、と言われ向かった先は、ギルドを出て西側、直ぐに見えるところにあった。

神父さんは傷の程度を見て治療をしてくれた。

さっきの女の人が起きるまでとりあえず待つとする。


「君たちは…冒険者かね?」


「はい、そうです」


待っている間、神父さんと少し話していた。

街の大きさはかなり大きく、近くに大山脈【ドラコスピナ】があるので冒険者の拠点として良く使われているみたいだ。

話していたら女の人が起きてきた。

尖った耳に褐色の肌に少し青みがかっている。鮮やかな紫色のロングヘアーが特徴的で、左眼を隠すように流している。黄色いグラデーションの目で俺たちを見た。


「起きたかね」


「…ええ、ありがとう」


神父の問いかけに感謝の気持ちを伝えた亜人の女性。

矢継ぎ早に俺たちに頼み事をしてきた。


「早速で悪いんだけど、あなた達冒険者でしょう?私も連れて行って欲しいのだけど…」


「え、うーん別に良いけど、目大丈夫なの?」


左眼が痛むのか、顔をしかめながら女は話した。そこに神父が神妙な顔で聞いた。


「君は、どこから来たんだい?」


「…信じてもらえるか分からないけど――」


「信じるさ。君と同じように顔の左上が異常に腫れた変死体を良く見かけるのでね」


「…そうね、アンデルス・バリフィストスの実験奴隷よ」


「実験奴隷?」


そこでこの魔人の女―セレスベル―の話を俺、ラティー、神父の3人で聞くことにした。

セレスベルは魔人達が集落を作っている話を聞き、その集落を探す旅に出ているという。

エルフ、ドワーフ、獣人たちは大森林に国を作って暮らしている、

俺たちのいたアルガース王国より更に東のラグシルディーグ王国は俺でも知っている。


魔人は少なく、亜人種が数多くいるラグシルディーグ王国に行ったが、それでもいなかったらしい。そこでドラコスピナに竜人が住んでいる噂を聞き、旅をしていたところ奴隷商に捕まってしまい、今に至る。


「亜人種は普通の人間に比べて回復能力が高いから、地下の実験室で眼の移植をされていたわ。いつ自分の番になるかも分からない、暗い牢の中、眼を移植された者たちの悲痛な叫び、それを聞いた者たちの命乞い、怒号。結局私は魔人というだけで一番最後に移植されたわ。どうやら適合したみたいで、この眼の力を使って逃げたけれど…この国から出なければまた捕まってしまう…」


「ふぅむ…そんな恐ろしい実験が行われていたのか…」


神父は手を口元に当てて考え込む。

そこで勢いよく教会の扉が開かれた。


「バリフィストス様親衛隊だ!」


勢い良く扉は開かれた音がした。

俺たちは教会の奥にいるので、姿を見ているわけではない。


「私が対応しよう、少し待っててくれ」


神父はそう言って、部屋を出た。

その間俺たちはどうやってこの街を出るか考えよう。


「さっきの話の続きだけど…」


気になることがあるのかラティーは続けた。


「あなたにはなんの眼が移植されたの…?」


「恐らく魔物か何かの眼ね…あんな禍々しい眼…うぅう…」


「ご、ごめんなさい…辛いこと思い出させてしまったわ…」


「どうしてこんな目に……」


左眼を抑えながら静かに泣くセレスベルのそばで慰めるラティー。


「ネル、何としてもこの人連れて出よう」


「だけどどうやって出ようか…街が広いから騎士の数も多いし…」


「ギルドからまた馬車を借りるしかないわね…」


「待たせたね、何とか出て行ってもらったが…」


「神父さん、とりあえず俺たちがセレスベルと一緒に街を出ようと思うんだけど、いい案無い?」


戻ってきた神父さんに俺は何か良い案が無いか問いかける。


「ああ、そうだね…セレスベルさんは、そもそも奴隷であると考えるとどこかに隷属紋があると思うのだが、恐らくその隷属紋から大まかな位置が相手側に分かってしまう」


「私はメイワールス帝国第三皇子の奴隷よ…奴隷オークションでアイツに買われたわ」


「であるとするとこの街から出られさえすれば…」


「じゃあギルドから馬車をもう一回借りて出ちゃいましょう!」


「いや、今騎士達が街から出るときに検問していると話していた」


「それじゃ出られないじゃない!」


「早馬で駆け抜けるしかない!」


神父さんとラティーとのやり取り、ラティーが軽く嘆いたところで俺が割って入った。

ラティーはポカンとしたが、神父さんは何か思いついたように話を続けてくれた。


「それだ!ではこっちで誘導しておこう」


「待って待って待って!ネルあんた…」


「ん?」


「馬乗れないじゃない…」


「…セレスベルは馬乗れる?」


「セレスで良いわよ。私は乗れるわ」


「俺はセレスと乗った方が良さそうだね」


「夕刻には出ましょう」


「じゃあラティーとセレスはギルドに馬を借りに行って、俺はポーションとか買うから」


「アンタ字も読めないじゃない!なんなのよ!物資は後回しよ、マラミグル町で調達しましょ!」


「よ、よし、急ごう」


3人でギルドに向かい、馬を借りてこの街から出る事にした。

後の作戦会議は全部歩きながらだ。


「そういえばセレスは冒険者ライセンス持ってるの?」


「何年か前にギルドに登録したけど、ギルドカードは失くしちゃったわ」


「じゃあついでに再発行もしちゃおう」


「持ち物は全部奪われたからお金もないわよ」


「いいよいいよそれくらい」


「じゃあ武器も無いの?」


「ええ、丸腰よ」


「じゃあこれ使う?私たちは使わないからあげるわ」


マラミグルの町で手に入れた魔導銃を渡した。


「これ、マジックアイテムじゃない、いいの?」


「いいのいいの私たち使わないんだってば」


「俺は触る事すら許されない…」


「そ、そう、ありがとう…」


ギルドに着き、早速馬を借りる手続きに移る。


「あら、良くなったのかしら?」


「ええ、おかげさまで」


「早速だけど受付さん、早馬を2匹借りたいんですけど」


「はい、分かりました、ちょっと待ってね」


もう日が暮れる頃になっている。

ギルドの外では何やら騒がしい。神父さんが陽動してくれてるのだろう。

この隙に出るしかない。

手続きが終わり、俺とセラス、ラティーが馬に乗る。

するとギルドからギルドマスターが出てきた。

俺たちの顔を見ると察したのか、一本の瓶をセレスに投げ渡した。


「…毒だ、飲みたくなったら飲め」


「えええ!!なんでそんな危ないもの…!」


「冗談だ」


冗談に見えない顔で言ってたぞ…。


「睡眠のポーションだ、珍しいポーションだろう。餞別だと思って持っていけ」


馬を連れながらありがとうとお礼を言い、ギルドから出て行く。

俺とセレスが二人で乗り、前をラティーが走る。

そこら中が騒がしく、騎士達が俺たちと反対側に走って行く。


「スラム街にガーゴイルが出たってよ!」


「なんだってそんな魔物が…!」


「とりあえず急げ!!」


きっと神父さんだろう。ところで何故あんなにも協力的だったのか…。

とりあえず今はこの街を出よう。もうすぐ陽が落ちる。

暗くなる前になるべく離れておきたい。

前に門が見え、さっきの門衛がいた。


「おい!止まれ!!」


叫ぶ声に反して、更に速度を上げた。

それを見た門衛はロングソードを引き抜いた。

ラティーが左手をかざす。


「ガスト!!!」


「ぬぅおっ!!」


よろめき、尻餅をついた門衛、そして傍を駆け抜ける。


「く、クソ!伝達だ!!」


街を出た後、陽が落ちてもしばらくは走らせ続けた。

街から離れれば離れるほど、セレスが苦しみだし、馬を御するのが難しくなっていった。


「っつぅ…はぁはぁ…」


「どこが痛いんだ?」


「全身…あぅう…」


「と、とりあえず今日のところはここで休もう!」


「そうね…」


ラティーと交代しながら見張りをしていたが、セレスは一晩中うなされていた。

次の日の早朝にマラミグルの町に着く。

この間の戦いの跡がまだ残っているが、活気はあった。


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