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俺はバベルで冒険王  作者: お茶菓子
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1部-1章-4話


「さっき遠くの方で声が聞こえたわ!」


「ああ、行こう!」


今縛り上げているところのこの盗賊の男たちと戦っていた時に雄たけびが聞こえた。

ラティーは怪我をしている女の人の応急処置を終え、俺を急かす様に言った。

雑だが縛り上げた俺たちは戦いの中心地へと向かう。

雄たけびの聞こえた方へ、戦いの怒声が鳴り響く方へと近づいていく程、音はどんどん大きくなっていく。


--------------------


…あの日を思い出す。ようやくだ。ようやくお前をぶっ殺せる。

―坊主頭のテオドラは思い返し、感慨にふける。


「なんて横暴なんだ…っ!」


「みんなで守ろう!」


「「おお!!」」


一つの小さな部屋に男達が集まり、一致団結している。

まだ子供だった頃のテオドラは扉の隙間からそれを見ていた。

次の日の朝、村は焼かれた。


「何としてでも生きろ…テオドラ!」


「父さん…!父さん!!!」


「この村の事は忘れろ…!!!いいな!!」


村の外れに連れてこられた俺はそのまま森へと逃げて行く。

それでも気になって気になってしょうがなかった俺は、後から村に戻ったんだ…。

あの時、戻らなければ、あるいは一緒に残っていれば…。

あの光景は今でも焼き付いてやがる。


「―――…。おい!団長ってば!!!」


「!…どうした、ビガス…」


「見てみろ、そろそろケリがつくぜ」


「…ああ、分かった。じきにヤツが来る」


「…ヤツ?」


「見てろ」


着々と決戦へ向かっていく戦場。

見た限り数の差で勝っている。そろそろ計画は次の段階へ進むところだ。


「グゥッ…ディ、ディエゴォ、気様…」


「わりぃな、ゴンサロ…」


ディエゴが裏切った、計画通りに事が進んでいる。


「毒だ、もうすぐお前は死ぬ。あまり動かない方が良い、死期を早めるだけだ」


「な、なんだアイツ…味方を殺った…?」


「アイツは俺の仲間だ。今まで黙っていたが、話せば長くなる」


「…どういう事だテオドラ」


「俺がガキの頃、この町は一つの村だった。そこにサンドナの野郎が来て、俺たちの居場所を奪いやがった。見た事あるか…?テメェの親父が焼かれるのを。あの光景が目に焼き付いてやがんだ…。ディエゴとは同じ村で育った仲だ、あの時、散り散りになったが最近ヤツと再会を果たしたのさ。アイツもぶっ飛んだ事考えててな…サンドナの懐に潜り込もうと、騎士団に入ったらしい。今回の計画は俺とディエゴが考えた、勝手な復讐だ」


俺はビガスに簡単に説明すると、ビガスはそうか、と一言だけ残した。

ドナートとフレッドは戦っていたが、飽きたのか、戻ってきた。

ディエゴの裏切りに敵は動揺し、ビガスは戦いを鎮めていった。


「ディエゴ、きさまぁあ!!」


「……おい、よそ見してていいのか?」


ベニートの意識が完全にディエゴに向いたところを突いて、俺は銃を撃った。

間一髪のところで避けたが、頭を少し掠めたベニートはよろけて膝をついた。

俺の雷の魔力を込めた一撃だ、痺れたのだろう。


「さすがレイピア使いだな、致命傷は避けたか」


「ディエゴ…裏切りか…」


「……最初からあっち側だ」


携えた剣を振りかぶり、斬りかかるディエゴに何かが飛んで来て、阻止された。


「ふぅ…間に合った!」


ソイツは黒髪でどこか頼りなさげな雰囲気だが、ディエゴの剣を刀で受け止めしっかりとそこに立っていた。


同時にサンドナ邸のドアが蹴破られる。


「強いヤツだけかかってきなぁ!」


「おぉおい!わ、私の家だぞ!!!」


「……計画通りにはいかねえか」


勢い良く飛び出してきた赤と金の混ざった短髪でボサボサ頭の女にサンドナは裏返った声で叫んだ。

憂鬱な気分になり、溢すように呟いた。


--------------------


俺たちは物陰から様子を伺い、出るタイミングを計る。


「今ね」


レイピアを持った髪の毛が長めで切れ長の目をした騎士が坊主頭の男に撃たれ意識が完全に向いたところでラティーが合図した。

二人で一気に飛び出し、ラティーは斬られて倒れた長身の男にで解毒のポーションをかけた。


「ふぅ…間に合った!」


同時に後ろの家のドアが俺の横を掠めて吹っ飛んでった。

いやぁ、急に変な汗がブワっと湧いた。


「強いヤツだけかかってきなぁ!」


更に威勢のいい声と同時に、騎士と盗賊団の雑兵はすくみ、時が止まったかのようにみんな動きを止めた。

さっきまでとは違う、嫌な冷や汗が俺の頬を伝う。

半分錯乱しながら身長の低いバスタードソードを持った男が突撃してきた。


「やめろドナートォ!!!」


「剛体・衝」


素手でバスタードソードをはじき、手の平でドナートと呼ばれた男は吹っ飛ばされていた。

赤と金髪の混ざったボサボサ頭の女の人は涼しげな顔で続けた。


「…ま、相手にはならねぇよな」


「ディエゴ、フレッドと一緒にガキ始末しろ!」


「ぁいよ!」


返事をしながら攻めてくるディエゴの剣をラティーは横から入る形で弾いた。

そこにすかさず距離を詰めるフレッドに対して、レイピアを持ったベニートがギリギリと言ったところで対処した。


「ゲイルブラストォ!」


「ぐぅうおっ!?なん…だこの…風……」


「ネル!!!」


追い風に乗って膝蹴りを喰らわせた。

倒れこむディエゴにそのまま刀を向け、振り下ろした。

間一髪といったところで、ディエゴはロングソードで身を守り力任せに剣を振るった。

少しでも喰らうと毒になるのはさっき見ていたので、必要以上に避け、距離を取った。


「ぐはぁあ…!」


「ぐあ!」


そんな俺の横にベニートが飛んできて、さらに素手の男が飛んできた。

それを見たディエゴはしびれを切らしたかのように口を切った。


「おめーら何もんだ!騎士じゃねえだろ!!」


「俺はネル!冒険者だ!!!!!」


「ぼ!?冒険者だとぉ!?尚更関係ねーだろ!引っ込んでろ!」


「関係ないからなんだ!引っ込まない!!!」


「町の人が襲われてたわ。それを見過ごすなんて、できないわ」


「…分かった、一つ教えてやろう。後ろにいるこの町の町長サンドナは、かつてここにあった村を襲い、自分の町をここに作ったのさ…あまつさえ盗賊に襲わせわざと負けさせることで民衆から支持を得ている、正真正銘のクズだ」


「じゃあサンドナをやればいいだろ!町の人は関係ねえ!!」


「俺は…その村の出だ、てめーの住んでたとこが焼かれて、親たちはみんな殺された…。その後にのうのうと暮らしてやがる…知りもしねーで!なあお人好しの冒険者さんよぉ、どう思う!?サンドナの方についていいのかよお!?」


「……俺はサンドナとかいうやつの味方をするつもりはねえ。この町の人たちの味方だ!」


「そういうことね」


ディエゴは剣の刃に柄から刃先まで滑るように手を当てた。その剣が緑に光る。

間合いを詰めた勢いに乗せて斬りかかるディエゴの剣を刀で弾く。

右、斜め、左と、次々と振りかかってくる。


「ソニックカッター!」


途中途中でラティーが魔法攻撃を挟んでくれる。

1発目は剣で防ごうとしたが、貫通する攻撃だったので少なからずダメージを負ってしまい、2発目以降から避けるようになった。


「ソニック…カッター!!!」


6発目のソニックカッターが放たれた時、ディエゴは丁度剣を振り下ろすタイミングで迷ったのか一瞬だけ止まった。

そこを突いた俺は横一文字に刀を振りながら下がり、ディエゴの勢い任せに振り下ろした剣は空ぶる。

間合いを詰めて、切り上げ、ディエゴは倒れた。


「ぐうあっ…!」


「答えろぉ!!!何故だサンドナァ!!!」


怒鳴り声が聞こえたので、そっちを見る。


「ぐぅう、うおぉお、うぉーーーーー!!!」


ロングヘアーのナイフを持った男が突撃し、坊主頭の男が魔弾を7発打つ。


「剛体・穿」


無間ムケン剛体ゴウタイゲキ


ナイフも数発の魔弾もまるでダメージになっていない様子だった。

手でロングヘア―の男の肩を貫き、瞬きした時には銃を持った男の前にいた。

そのまま殴り下ろしてぶっ飛ばされていた。

しかし2発の魔弾が、サンドナに向かって飛んでいた。


「ぶばぁ!」


正直気づいてたけど、きっと誰もがわざと見逃した。


「うおぉらぁ!!!」


投げナイフを投げる、投げ続けるロングヘアーの男。

あっちの戦いに気を取られていたら、ディエゴが起きぬけに斬りつけてきた。


「…ッハァ!」


「うわ!」


驚いた俺は咄嗟に刀で剣を受けた。


「…もうおしまいだ!!!ヒート!」


「っづぅ!」


熱さに驚いたディエゴは距離を取りつつ、一本のナイフを投げつけてきた。

刀で叩き落す。


「っぐぅ…俺を殺さねぇと…止められねぇぞ!!」


まだ剣を振るおうとするディエゴ。


「ネル!!!」


ラティーの叫び声が聞こえ、気付いた時にはもう遅かった。

素手の男に殴り飛ばされた。


「っぐ…っつぅ…」


転がって受け身を取り、立ち上がったが、既に間合いを詰められていた。

防戦一方で、フレッドの奥でディエゴは休んでいる。

ポーションを飲んで、一呼吸し、こちらに向かってきた。

斬りかかってくるディエゴの剣、フレッドの拳をさばいていたが、遂にさばききれず剣を刀で受けた時に出来た隙をついてフレッドが渾身の一撃を繰り出してきた。


「フレイム・フィストォ!!!」


咄嗟に俺は左手で拳を掴む行動をとった。

力押しされ、後ろに下がってしまったが何とか攻撃を防ぐことが出来た。


「…な!?」


拳を纏っていた炎が消えて、フレッドは驚いていた。


灼熱(エグゾ)ォ!!!」


「グギャァアアア!!!!!!!」


一瞬で黒焦げになる拳に、戦意を完全に喪失した。


「ウォオーーー!!!!」


ディエゴの剣はもう光っていない。

魔力切れなのか、肩で息をしながらそれでも尚立ち向かってきた。

剣戟の中に、殴り蹴りを混ぜてくるようになった。

蹴り足を掴む。


「エグゾ!」


「グアァアアァ!!」


右足の膝をつき、いよいよ勝ち目が見えなくなったディエゴは最期の行動に出た。


「ハァ、ハァ…おめぇら…人、殺したことねえんだろう…ククク…」


自分にロングソードを突き立て、刺した。


「パンデミック!グウゥッ…」


ディエゴを中心に、おぞましい毒気が地面を侵食していく。


「ガァアアァアアアアアーーー!!!!!」


とんでもない叫び声が聞こえ、直ぐに声の聞こえた方を見ると、血管のような線がボコボコに浮き出た、坊主頭の盗賊団の頭が両手に持った魔導銃をボサボサ頭の女戦士に向けていた。


「グ…グラエ…」


白目をむき、意識があるかどうかすら怪しそうな男は声を振り絞った。

まばゆく光る魔導銃から、一際大きい魔弾が発射された。


「剛体・無間・剛体・尖」


女戦士は軽々と弾き、テオドラの心臓を手で貫き、戦いは終結した。

緊張の糸がほぐれたような空気になり、盗賊団は蜘蛛の子を散らすようにして逃げて行った。


「とりあえずこれは没収したけど、アタシはこれ要らないし、アイツに持たせてもろくな事にならなさそうだから、アンタら持ってきな」


「いいの?ありがとう」


赤と金の短髪ボサボサ頭の騎士―フーアン―がテオドラから没収した魔導銃を俺たちに渡した。フーアンは要らないようでサンドナ町長に渡すのは良くないと判断したみたいだ。

魔導銃を俺が受け取るとバチっと電気が走り落としてしまった。

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