野球スパイク製作のバイト ~8~
決意を固めた表情をして、重い口を開くと・・・
「うち・・・男なんですけどいいんですか?」
・・・
パアドゥン?
何ていいました?
俺の聞き間違いだろうか?
いや・・・
目が点になってる北谷と藤本を見る限り、
俺の聞き違いではない・・・
「・・・え?・・・男?」
北谷が恐る恐る聞くと、
「はい!だけど、今度のゴールデンウイークに工事してきます!」
「・・・こ、工事?」
「はい!今あるゾウさんをなくす工事です!」
「・・・え?」
完全に話しについていけない面々に・・・
何を思ったのか娘さんから、
「触ってみますか?」
そう言いながら、恥ずかしそうに自分の股間を指さす。
・・・・
無理でしょう!!!
そんなの出来るわけないでしょう!!!
ちょっと頭の処理が追い付かない!!
一旦整理しよう!!
娘さんは・・・実は息子さんだったって?
しかも工事を今度のゴールデンウィークにすると!
・・・OK、だいたい事情も理解できた・・・
そして、今後は女性として生きていくという未来も理解した!
だけど・・・
そもそもの性別は理解できません!!
え?男性なんですか?
で、今は工事を済ませようとしている?
え?じゃあ、今の恰好は?
「・・・女装してるってこと?」
「そうですね・・・。だけど!心は女性なんです!!」
その必死な言葉に俺は言葉を紡いでしまう・・・
確かに・・・
見た目も心も女性だろう・・・
彼女・・・彼の一つ一つの態度からもそれが溢れているのは分かる!!
ただ・・・
体だけが男性だと・・・
そして、たぶん、今俺達は試されているんだ!!
男だけどいいの?って・・・
北谷、藤本共に呆然としてしまっている・・・
完全に口から何か見えてはいけないものが抜け出ているようだ・・・
戻ってこい!2人とも!!
下手すればそのまま死んでしまうぞ!!
娘さん・・・いや、息子さんの俺達を見る目は真剣だ・・・
きっと覚悟を決めて、真実を俺達に伝えてくれたんだろう・・・
だから、俺達も真剣にその思いに応えなくてはいけない!!
そう・・・
無理です!!
全然俺のキャパを越えてしまって答えなんて出せないですわ!!
だけど、真剣な目を俺達に向けてくる彼女・・・いや彼にどうすればいいんだろうか・・・
どう答えを出したものかわからずに固まってしまう。
当然他の二人も同様で、そんな俺達が固まっていることを理解して、
彼のその真剣だった目は、ふっと柔らかな目に代わって、
「皆さんの真剣な思いには真剣に答えたかったので・・・。」
そう言いながら、財布を取り出し、お金を置いて立ち上がる。
「すいません・・・・こんな空気にしてしまって・・・。」
ぺこりとお辞儀をして、すっとその場から立ち去って行くのであった・・・
それを俺達は誰も止めることは出来ずに・・・
ただ、見送ることしかできなかったのであった・・・
気づいた点は追加・修正していきます。
拙い文章で申し訳ないです。