桜散るバス停
さくらと出会ってから、2年近く経った。
僕の話は黒宮さんばかりだったけれど、そのうち進路の話も混ざるようになってきた。
進路は思ったより早く決めたけど、いつも話さなかった。
でも、受験も合格したことで、進路はどうにか決まった。
そしてもうすぐ、僕は卒業する。
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「黒宮さん、警察になるんだってさ。」
『....にゃあ。』
そうなんだ、といった感じでさくらは鳴いた。
黒宮さんは正義感が強いし、運動神経もいいし、意外と勉強もできる。
だから、すごくぴったりだと思った。
それに......
「なあ、さくら。」
『...?』
「黒宮さんが警察って、すごくぴったりだと思うんだよね。」
『...にゃ?』
僕が話しかけると首をかしげたさくらが、僕の言葉でさらに首をかしげた。
そんなさくらに、僕は言葉を続けた。
「だって、強いし優しいしかっこいい、正義感も強い。
それに、桜って警察の人がつけてるマークじゃないか。」
『...!』
さくらは驚いて、目を見開いて、僕を見つめる。
そのうちに恥ずかしくなったのか、下を向いた。
「僕もちょっと、かっこよくなろっかな!
ほら、僕じゃなくて俺っていうとか!」
そんなことを言うと、さくらはばかなの? とでも言うようにぽかーんと口を開けている。
なんかさっきまでの雰囲気が嘘のよう......悲しい。
「そんな顔しないでよ......ちょっと悲しい。
ところでさ、僕...あ、いや、俺の名前ってさ、虎井 統じゃん?
統って、統べる、とか統一の統っていう字なんだけど、この日本を犯罪のない国に統一する!......ってのはどうかな?」
さくらは真剣そうな表情でこちらを見つめて、そのうちにいいんじゃない? というようににゃあと鳴いた。
「後、トライって、英語で言う挑戦なんだよね。
だから、頑張ってみたいなって。
大学もなんとか合格できたし、このまま頑張って....つまり......
さくら、俺、警察になろうかな。
......いや、なりたいな。
てか大学合格したんだし、なってみせる。」
『......にゃあ!』
そんなこと言うならさっさとなりなさいよ! といういかにもツンデレっぽそうな感じで鳴かれた。
可愛い。
「応援してくれるのか?
ふふっ、ありがとな。
卒業したら、さくらにも会えなくなるなぁ。」
『............』
しゅん、と下を向いて、と思ったら顔を横に振った。
会えると思っているのだろうか。
なら俺も頑張って会いに来よう。
「さみしい? ま、大丈夫。
きっとすぐ、また会えるさ。
......バス、来たな。 じゃあ、またな。 さくら。」
それから、後何回か会っただけで、卒業してから会うことはなかった。