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雪包むバス停

やがて、バス停の周りの桜も、黒宮さんと一緒に見た紅葉も、全ての葉っぱが落ち葉となり、雪まで降り始めた今日。


それでも、僕の暖かい日常は続いていた。




。:*━❆━*:。━❅━。:*━❆━*:。━❅━。:*━❆━*:。




『.....くしゅっ!』


今日はかなり冷え込んで、雪まで降ってきた。

そのせいで、どうやら...さくらは風邪気味?


ねこって風邪引くのかな?



「...あ、そういえば黒宮さんも風邪気味だったよ。」


ふと思い出して、さくらに言ってみる。

普段、あっそう、て感じなんだけど、今日は聞く気も起きないぐらい寒いらしい。


すぐ近くに自販機があるのが見えて、ちょっと待ってね。 と声をかけてから、財布を持って走った。




こんなバス停の近くだからか、自販機もあまり豪華なものがない。

ほんとはホットココアがほしかったけど、残念ながらなかったので、缶コーヒーを買った。


「ただいま、さくら!

ほら、これであったかいだろ?」


さくらの体にぴとりと缶コーヒーをあてると、一瞬びくっとしたものの、体をすり寄せてきた。



そんな状態をほのぼのと見ていたら、今日はいつもより早くバスが来てしまった。

缶コーヒーを飲まないのはもったいないけど、正直苦いのは苦手だ....なので、そのまま置くことにした。

もはや抱くようにくっつくさくらは、すごく可愛い。


そして僕は、今日も別れを告げてバスに乗る。


「じゃぁね、さくら。

風邪引くんじゃないぞ!」


『にゃあ!』


じゃれつくように缶にくっついたさくらが、とても嬉しそうに返事をした。




。:*━❆━*:。━❅━。:*━❆━*:。━❅━。:*━❆━*:。




翌朝、バス停に着いた時、視界の端にいつもはないものがあった。

昨日買った缶コーヒー、しかも中身は空っぽ。

さくらが飲んだ...?

いや、そんなわけないかーと思いながら、自販機の横のゴミ箱に捨てた。

今日も寒いし、ココアでも買おっかなー、とぼけーっとしながら小銭を入れて、昨日と同じ位置にあるボタンを押す。


......押してから、そういえばこの自販機にはココアないんだ、昨日買ったのコーヒーだ、なんでコーヒー買っちゃったんだ。


なんて感じで、正気に戻った。

ぼけっとしてるからこうなるんだろう。

でもしかたない、昨日のさくらを思い出して可愛いなあって思ってたし。

......言い訳にならないか、でも買っちゃったし。


しかたなく、後で頑張って飲みきろうと思って、ひとまず鞄に入れた。




。:*━❆━*:。━❅━。:*━❆━*:。━❅━。:*━❆━*:。




校門を通り、歩いていると前の方に黒宮さんの姿発見。

僕はすぐさま駆けよって、声をかけた。


「黒宮さん、おはよ!」


「ん、(すばる)か。 おはよ....」


相変わらず長い黒髪が冷たい風に揺られて、とても綺麗だ。

そして僕のことを下の名前で呼んでくれるのがすごく嬉しい。

実を言うと、修学旅行の時ランダム交換で偶然もらった黒宮さんのお土産に、僕がお礼のプレゼントを渡した時から、下の名前で呼んでくれてる。

それまでは名字で呼び捨てだったけど、もう友だちだから...って言ってくれたんだよね。

ちょっと照れてる感じが可愛かった。


でも、今元気がなさそうなのは....やはりこの寒さのせいだろうか。

そういえば、さっきコーヒー買ったんだった。

黒宮さんが好きならあげようか、飲めば体もあったまるだろうし。

嫌いだったら....僕が頑張って飲めばいいか。



「黒宮さん、コーヒー好き?」


僕が問いかけると大きな黒い瞳が僕をとらえて、小さな顔が縦にうなづく。


「好きだけど、それがどうしたの?」


「さっき自販機で間違えて買っちゃったから、あげるよ。」


僕苦いの苦手だからさ、と言って熱いくらいの缶コーヒーを手渡す。

それを受け取った黒宮さんはその缶コーヒーをじっと見つめている。


「あれ、もしかしてメーカーとかで好き嫌いある?」


と聞いてみると、慌ててそんなのねーから気にすんな、と言われた。

その後、小声でさんきゅ、と言ってくれたのも聞き逃さなかった。


僕は、笑顔でどういたしまして! と答えた。




。:*━❆━*:。━❅━。:*━❆━*:。━❅━。:*━❆━*:。




「黒宮さん、どうしよう〜〜〜〜〜〜?!」


僕は机にぐったりと倒れて、すまし顔の黒宮さんに話しかける。


「わたしに言ったところで解決しねーだろ。」


僕が悩んでいるのは、進路アンケートだ。

そんなのもちろん書けるわけがない。


今朝間違えてコーヒー買っちゃったけど、その後いいことあったからルンルンだったのにー!

ていうか、僕らはまだ1年生なんだから、来年再来年でいいじゃないか....なんて投げやりなことさえ考える。


「そういう黒宮さんは決まってんの?」


落ち着き払った様子の黒宮さんを少し睨むような目をしながら、僕は問いかけた。


「決まってるわけないじゃん。

でも成績高いし、もう少し考えたいとでもいえば納得するだろ。」


そう、黒宮さんはすごく成績がいい。

体育はもう当たり前のことだけど、勉強までできる。

きっと、裏で努力するタイプなんだろうな。

見てる限り、普段からものすごく勉強してるわけではないから。



でも、黒宮さんなら.........

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