表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

酔っ払いは楽しい。

作者: 生川気軽


酔っ払いは楽しい。


かかととつま先が離れないように歩く。

夜のすんとした空気。

吐く息は白くても体はあたたかい。

鼻歌なんか漏れちゃったりして。

思ったことも全部口から出ちゃったりして。


だから酔っ払いは楽しい。

酔っ払いは

「たのしい!!!!!」



「だから全部出てる、思ったこと」


たしなめてくれる新谷くんの腕をかっさらってそのまま組む。


いやがってるかなあ。

けどいやだったらそもそもここまで付き合ってくれないよね。


「それは当たり」


やったあ。花丸満点みたいです。


そういえば小学校の先生の花丸ってほんときれいだったよね、あんなきれいなくるくる書けなかったし花びらも手慣れたおしゃれさ?あってさ、うらやましくて練習したけど全然無理で


「ふみか。あぶない。」


おっとっと。こんなところに信号があるのは反則だって。


急ブレーキするために、新谷くんは私の手首をとっていた。

これってもう手繋いでるようなもんだよね。


赤信号の間にしっかりと繋ぎ直す。



「あのーふみかさん?」


あ。青になった。


「なに?」


「なんですかこの手は」


見ればわかるのにばかだなあ。


「恋人繋ぎだよ」


普通の繋ぎ方よりなんとなくあったかくって、お腹の底がきゅんってしない?それでさ、ああこの人のこと好きなんだなあ幸せだなあって思えて


「待って」


なに。


「それ聞いてない。好きだって聞いてない」


「当たり前じゃん、言ったことないんだから」


しれっと投げた言葉は新谷くんには刺さらなかったみたいだ。だって応答がない。


「つまんないのーーー」


横断歩道をゆっくりと渡り切る。繋いだ手をぶんぶん振り回したりなんかしながら。


Y字路を右に行こうとしたところで急に半身が重くなった。


「待って」


「どしたの新谷くん」


「脳の処理が追いつかない」


なんだそれ。ふふふと笑おうとした私の声は、なぜか新谷くんの胸のあたりに溶けていった。



好きな人に、抱きしめられている。

なんてあったかいんだろう。


心が。お腹の底がきゅんってする。



「俺も。俺もしてる」


おそろいだ!と笑おうとしたら。今度はそれは新谷くんの唇へと溶けていったのでした。




酔っ払いは楽しい。


鼻歌なんか漏れちゃったりして。

思ったことも全部口から出ちゃったりして。



新谷くんの横で素直になれるの、楽しい。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ