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私という女  作者: 志賀朔夜
1/1

 ー4月8日火曜日ー


 6:48分発京成上野行きの電車に乗り、私はいつも通りに学校に向かう。

今日は朝練もなければ学校の授業自体がない。

入学式が行われているからだ。

部活は今日の12時から。

普段ならば部活の始まる30分か1時間前に来るのだが、今日は特別だ。


 ー6:55ー


 高校の最寄り駅に着きホームに降りるが、当然彼1人を除いて見覚えのある服を見ることは出来ない。

同じ服にバックを背負った彼は耳にかかっていたイヤホンを取りながら、ぶっきらぼうに『おはよう』と言った。


「おはよう。」


  私は今日は何でもないような普通の日常が始まるかのような、いつも通りの普通の挨拶をした。

しかし、彼に呼び出された日だけは特別なようで意識をしていないと顔がニヤけてしまいそうだった。

そのまま2人で学校に向かったが、坂を歩いている15分間は無言のままだった。


 ー7:10 正門前ー

 

正門から新1年生が続々と学校の中に入っていく。

ちらほらと2、3年生と先生がいるのが見えたので、少し歩いて校門をくぐることにした。


「おはようございます!」


いきなり前を歩いていた彼が大きい声で挨拶をした。彼の影で見えなかったが、どうやら部活の顧問がいるようだった。


「おはようございます。」


彼より少し小さめの声で顧問に挨拶をした。

『おお、早いな。』と声をかけられたので、私は慌てて『勉強をしに来ました。』と嘘をついた。

顧問の頑張れという言葉に、少しだけ罪悪感を感じた。

2人で長い長い階段を降りた。

階段を全部降り切ると、学校の名前が入った人工芝が見えた。

今日は4月にしては少しだけ気温が高い。

スウェットに汗が染み込む。

グラウンドの奥がカゲロウのせいで揺れて見える。

『あぁ…夏が来るんだな。』

私は今年で最後の夏なんだなと痛感した。


「【私】。先に4階の女子更衣室に行ってて。」


彼はそれだけ言うと私には目もくれずに校舎に走っていった。

部室の鍵を開けると、日が当たっていなかったせいか少し涼しい風を感じた。


ー7:20 4階女子更衣室ー


〘もう着いた? 〙


〘 うん。着いてるよ。〙


彼からのメールを返すとすぐに私を呼ぶ声がした。


「そんなに小さな声で話さなくても大丈夫よ。」


「バレたら嫌じゃん。」


彼のその言葉に私は少しだけ心がチクンとした。


ーーーーーーそう。これは誰にも言えない秘密。


私はそれが頭では分かっているのに、どうしようもない悲しさを覚えた。


「【私】。おいで。」


彼は女子更衣室に入るないなや、1番奥の個室へと入っていった。

4階の更衣室は体育の前に使うには少し遠く、殆ど使う人がいないせいか、少しホコリっぽかった。


「ーーケホッケホッ。」


「大丈夫?少し落ち着いて深呼吸しな。」


彼は私を優しく抱きしめ、背中をポンポンっとさすってくれた。


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