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男のロマン

作者: U-3

俺は旅に出ている。


旅の目的は人それぞれだが、俺は男の浪漫を求め旅に出た。

今回の旅のテーマは男のロマンだ。

ロマンチックには程遠いドロドロした男の独り旅のロマンだ!


まずは交通手段。

飛行機?新幹線?フェリー?

男のロマンにはそぐわない。全然違う。

男のロマンだぜ……そこは夜行列車だよ。

それも山を通る列車ではなく海を通る夜行列車で決まりだ。

夜に海は見えないのじゃないのか?

野暮な質問は辞めてくれ。

見えないのではなく視るんだ!

揺れる列車の窓をサッとスムーズに開ける。ここを手こずるとカッコ悪い。

そしてまず風を顔面に感じる。

風と共にふんわりと来る潮の薫り。

なかなかいいじゃないか…。

少し目を開くと海に散らばる無数の光り。

さては漁り火だな……そう思う自分に黄昏てみたりもするが、黄昏るにはまだ早い。音が必要だ!

列車の揺れる音、斜め向かいの席でいびきをかいている親父、風の音、たまに訪れる無音、そしてかすかに聞こえる波の音。

聞こえてくる全ての音を自分なりにマスタリングしてみる。

結果、親父のいびきの音しか耳に残らないじゃないか!

……いいじゃないか、俺はドロドロした男のロマンを求めて来てるんだぜ。親父の疲れきった渇いたいびきの音。急にそのいびきが止まると無呼吸か?と心配にもなる。

音だけで他人を安心させたり不安にさせたり、親父!あんたもこの旅のいいスパイスだよ。


そうそう、そろそろ飯を食わないといけない。

用意周到な俺は駅弁片手にこの列車に乗り込んだ。

この旅はあくまでも男のロマンがテーマだ。

弁当にもこだわりがある。

ステーキやローストビーフ丼やサラダ?

全然違う。

そこは芋蛸南京の炊き合わせが添えられた烏賊飯御膳で決まりだ。¥2300…値段は高いが俺はもっと高い志しを胸にこの旅に来ている!胸元が寂しくなっただけの話しだ。

暗い海を眺めながら、親父のいびきを聴きながら食す芋蛸南京も烏賊飯も全てが調和され喉元を過ぎ胃袋へと流れて行く。

美味いじゃないか…。

これだよ!これ。俺が求めていたやつは。


さて、そろそろ寝るか。

重ねて言うがこの旅は男のロマンがテーマだ。

寝かたにもこだわりがある。

まずは表情。

疲れた男を演出する事に意味がある。

腕を組みながら少し顔を斜め横に傾ける。

眉間にしわを寄せるのは忘れてはいけない。

おっと、爪楊枝をくわえながら寝る演出も添えないと。

飯をがさつに食らい、疲れて眠りに落ちる男の演出だ。

完璧だ……。

完璧だ……。

たぶん完璧だ…。

こうして俺の旅は始まった。






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