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ご当地ラーメンで異世界の国おこしって!?  作者: 忠六郎
第四章 リーズ公国編
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第九十六話 幹太出航!

連休中、名古屋、伊勢にてしこたまラーメンを食べてきました。

「すっごいやりにくい相手でしたね…」


離れに戻ったアンナはカウンターにアゴを乗せて呟いた。


「そうだな…俺もおしどり夫婦の邪魔するみたいで気が引けるよ…」


アンナの隣に座る幹太も、苦笑しつつ彼女に同意する。


あれからラーメンを食べ終えた幹太達は、改めてラ・フォンテ夫妻に勝負の話をした。


「わ、私…あぁ…」


「メーガンっ!!」


話を聞いたメーガンはその場で立ちくらみを起こし、それを咄嗟にダニエルが支えた。


「ダ、ダニエル…私、もうダメかもしれないわ…」


「そんなっ!メーガンっ!

逝く時は一緒っていつも言ってるじゃないかっ!」


イケメンと金髪ロリ巨乳(成人)の小芝居に幹太達は呆気に取られる。


「ダニエルだっけ?それで、どうする?」


妻を抱きしめダバダバと大袈裟に涙を流すダニエルに、呆れた様子でクレアが聞いた。


「でも…ジェイク様が勝負をすると決めたんですよね…」


「そうね。決めたっていうより、調子に乗って墓穴を掘ったって感じだけど…」


「…でしたらお受けします」


「ダニエル…?」


「ごめん、メーガン。でもやるしかないんだ…」


ダニエルは元々、ジェイクの持つレストランの新人コックだった。

レストランに入ってまだ半年ほどの彼の才能を目ざとく見つけたジェイクは、彼をラーメン屋台の店主に抜擢したのだ。


「でも、ダニエルさん…」


それは無謀な挑戦だと幹太は思っていた。

彼に言わせれば、ダニエルのラーメンはお客に出せる最低ラインの出来だ。

幹太の見立てでは、下手するとダニエルのラーメンよりコンビニの冷凍ラーメンの方がまだ美味しい。


「…やるよ。たとえこれがジェイク様の決めた事でなかったとしても、たぶん僕は君に挑戦する。

もちろんまだまだ色々と足りないのわかってる…。

でも僕は諦めたくはないんだ」


そう言うダニエルの目を見た幹太はその気持ちがよくわかった。


「あぁ…それじゃしょうがないな…」


幹太もこれまで努力して、美味しいラーメンを求め続けた料理人の端くれだ。

自分が作ったものより美味しいラーメンがあるのに、努力をしないなんてとてもじゃないが我慢できない。


「ダニエル…かっこいい♪」


そんな決め顔のダニエルを、メーガンが瞳をハート型にして見上げていた。


「あれじゃなんだかこっちが悪者みたいだわ…」


「明らかに悪いのはジェイクですよ、クレア様」


「まぁクレアは悪者っぽいですよね…」


「なんですって!?」


「でも幹ちゃん、スープのコツなんて教えて良かったの?」


「あれは私もちょっと驚きました〜」


由紀とソフィアが言うように、あの後すっかりお客の引けてしまった二人の屋台で、幹太は基本的なラーメンスープの作り方をダニエルにレクチャーしていた。


「まぁラーメンって名前で売るなら、せめてもうちょっと美味しいもの作ってもらわないと…」


それは今後のこの世界のラーメンの発展にとって重要な事だ。


「元々コックだって言ってたから、具と麺はかなり良かったんだけど…やっぱりスープは難しいからな」


「…それで、幹太さんのラーメンはどうするんですか?」


アンナにそう言われた幹太はガバッと立ち上がった。


「そうだった!俺、港で約束があるんだっ!」


「えっ!今からですか!?」


「あぁ、ちょっと漁船に乗せてもらう約束をしててさ!

ゾーイさん、時間は?」


「はい!まだ間に合います!」


「それじゃ行こうっ!みんな、話はまた帰った後で!」


ポカンとするクレアやアンナ達を残し、幹太とゾーイは慌しく離れを出た。


「ゾーイさんの知り合いってどんな人なんだ?」


離れを飛び出した幹太は、漁港へ向かう道すがらゾーイに聞いた。


「私と同郷のご婦人です。

えっと…ずいぶん前にリーズの方と結婚して、このレイブルストークに来たと言ってましたね」


「あっ、じゃあこの前市場の魚屋にいたのが…」


「はい。彼女の旦那さんです」


「へぇ〜奥さんが漁に出て旦那さんがお店って珍しいな」


「えっ?そうでしょうか…?」


「うん?もしかしてリーズじゃ女性が漁に出るのが普通なの?」


「えぇ…というより、この大陸では大体そうみたいですね」


「えぇっ!そりゃまたなんで!?」


「確か…女性が漁をすると大漁になるという言い伝えがあるみたいですよ。

芹沢様の世界では違うのですか?」


「うん。たぶんだけど、女性の漁師は少ないと思うよ」


「芹沢様の世界ですか…。

アンナ様は行ったことがあるんですよね?」


「あぁ、シャノンさんも一緒にね」


「…私もそのうち行ってみたいです」


「そっか…ゾーイさんは見物を広めたくて旅してたんだもんな…」


「えぇ」


「そんじゃもし帰れる機会があったらぜひ一緒に行こう」


「はい♪その時はぜひ!」


そんな話をしているうちに、馬車は漁港へとたどり着いた。

漁港の入り口には、二人の待ち合わせ相手であろう女性が立っている。


「レスリーさんっ!」


「ははっ♪やっと来たな、ゾーイ!」


レスリーと呼ばれた女性は、馬車から降りたゾーイに向かって豪快な笑顔を見せた。


「お待たせしてすみません」


「あぁ待った待った。

それで、その人かい?」


「はい。芹沢様です」


「は、初めまして芹沢幹太です…」


「おー!なかなかいい面構えじゃないかっ!

私はレスリー・オロフソン。

ゾーイの友人でこっちでの母親だ」


そう言って、レスリーは女性としてはかなり大きな手を差し出して幹太と握手をする。


「よろしくなっ!」


「は、はいっ!」


笑顔のレスリーは普通に握手をしているつもりだろうが、彼女に握られた幹太の手はミシミシと音を立てていた。


『この人…すっごいデカい!』


幹太は内心そう思った。

百七十センチ後半という、日本人としては背の高い部類に入る幹太だが、レスリーの身長はそれを軽く十センチ以上は上回っており、漁で鍛えられているのか体格もかなりのものである。


「よし!それじゃさっそく行こうっ!」


「「はい。よろしくお願いします」」


そうして三人はレスリーの双胴の帆船に乗り込み港を出る。

今日は風向きいいのか、これといった操作もせずに漁船はグイグイと沖に向かって進んで行った。


「そっか、こっちにはまだエンジンがないんだ…」


日本で言えばよく見る漁師一人で操作するような大きさのレスリーの船だが、帆以外の推進装置は見当たらない。


「そんじゃ一丁やるかね!」


しばらくして漁場に着き、レスリーは何本かの釣り糸を一気に船から垂らした。

そしてすぐに一本の釣り糸にアタリがくる。


「ほいっ!一本目っ!」


これといって格闘することもなく、レスリーは力任せに釣り糸を手繰り寄せ、あっという間に1匹目の魚が船に引き揚げられた。


「おぉ!こりゃカツオ…かな…?」


幹太は足元でビチビチと跳ねる魚を掴み上げた。

その胴体にはカツオ特有の筋模様が入っている。


「そんでコイツが二本目っ!」


幹太が一匹目を観察している間にも、レスリーは次々と魚を釣り上げている。

どうやらレイブルストーク周辺の海は豊富な漁場のようだ。


「さぁ〜これで今日の漁は終わりだよ!」


それから二時間ほどで船の生簀がいっぱいになり、レスリーは港へと船を向けた。


「私、お魚を釣るところ初めて見ました」


「あぁ、おれも生で見るの初めてだ…」


「それで芹沢様、ラーメンのヒントになるお魚はいましたか?」


「う〜ん…正直、残念ながらって感じかな…」


幹太の見た中では、スープが取れそうな魚はあったものの、具になりそうな魚は無かった。


「あらま、そりゃ残念だね。

でも魚ダメってんなら、最後のはどうだろうね」


「えっ?レスリーさん、まだ何か釣るんですか?」


幹太はもうすっかり港に帰るものだと思っていた。


「いや、漁はもうおしまいだけど、帰る途中でウチの養殖場に寄るんだ」


「養殖場ですか…」


「オストーラって貝なんだけど、リーズじゃ稚貝を海に沈めてるだけで育つから、ここいら辺の漁師はみんな副業で養殖してんのさ。

おっ!着いた着いた」


レスリーは話をしながら、器用に船を海に浮かぶ生簀に寄せる。


「ここらの漁師はみんなか…」


「芹沢様、それなら仕入れの問題は…」


「あぁ、たぶん大丈夫だろうな…」


生産者が多いのならば、それに応じて商品の単価も下がる。

幹太とゾーイは期待に胸を膨らませて、浮きの付いた縄を引き上げるレスリーを見つめた。


「ほらっ!これがオストーラだよっ!」


と言ってレスリーが引き上げた縄には、海藻と共にたくさんの岩の様な物がぶら下がっていた。



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