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ご当地ラーメンで異世界の国おこしって!?  作者: 忠六郎
第四章 リーズ公国編
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第九十五話 ラ・フォンテ夫妻

「おぉ!やっぱりクレア様でしたか!

これはこれはいらっしゃいませ♪」


クレアが店の前まで来ると、それまで店の裏にいたジェイクがわざとらしく出てきてそう挨拶をした。


「…ジェイク、あなたって本当に恥知らずなのね…」


すでにクレアは怒りを通り越して呆れている。


「さて、なんの話しですかな?

私は会議に参加する皆さんに、私のラーメンを食べて喜んでもらおうと思っただけですが…」


「この腹黒、よくもぬけぬけと…」


あまりにふてぶてしいジェイクの態度に、ゾーイが苦々しい表情をする。


「あ、あらそう、それじゃぜひいただくわね♪」


「次の方どうぞー!」


クレアが引きつった笑顔でそう言ったところで、ちょうど前のお客が注文を終えた。


「ではクレア様、私はこのあたりで失礼を。

ごゆっくりお食事を楽しんで下さい♪」


ジェイクはそう言っていやらしい笑顔を浮かべ、広場に停められた豪華な馬車に乗り込んだ。

どうやらこの彼は店を手伝っていたわけではなく、クレア達が来るのを待ち構えていただけらしい。


「ほんっと嫌なヤツよねっ!」


「えぇ、本当に…」


「クレア様、注文はどうするんだ?」


そんな二人に幹太が声をかける。


「えっ?みんなはもう決まったの?」


「あぁ、メニューは一つしかないからな」


「あら、そうなの?」


「うん。しかもつけ麺でも辛味でもないみたいだ…」


「ウソ…でしょ…」


驚いたクレアは屋台の前に置かれた看板に目をやった。


「リーズの黒ラーメン…?」


「うん。たぶん俺たちがブルーガレリアで出してたラーメンのパクりじゃないな。

こりゃとりあえず注文してみないと…」


「え、えぇ、そうね。わかったわ…」


「すいませーん!黒ラーメン六つお願いします!」


「はーい♪」


そうして幹太は、笑顔でカウンターに立つ女性に人数分の黒ラーメンを注文した。

ジェイクの屋台は幹太達の屋台と同じく、注文をしてから店先でラーメンを受け取るスタイルの店で、若い夫婦と見られる男女が切り盛りしている。


「匂いもウチのスープと違うな…」


「えぇ、海鮮系って感じじゃありませんね…」


「すごい!アンナ、もうそんなのまで分かるようになったのっ!?」


由紀も同じように屋台を覗き込んで匂いを嗅いでいたが、ラーメン屋さんの匂いというところまでしか分からなかった。


「ふふっ♪さすがにこれだけ幹太さんと仕込みをしていますからね。

だいぶ分かるようになってきました♪」


「はーい!黒ラーメン!おまたせしましたー!」


そうこうしている内に、幹太達の注文したラーメンが完成した。

どうやら幹太と同じように、こちらの屋台でも先行して麺を茹で始めているようだ。

メニューが一つしかないなら、それは効率よく屋台を営業するのにとても有効な手段なのである。


「「「「「「いただきまーす!」」」」」」


ラーメンを受け取った六人は広場に置かれたテーブルに座り、それぞれがまずじっくりと黒ラーメンを観察した。


「アンナ、やっぱりだ…」


「はい。全然違います…」


「どちらかというと日本の幹ちゃんのラーメンに似てる?」


「見た目は確かにそうだな…」


「幹太さん、これは前に作った醤油の焼きチャーシュー麺ですか〜?」


東京の幹太のラーメンを知らないソフィアが、自分が見た中で一番シンプルなラーメンを思い出した。


「それだっ!それだよ!ソフィアさん!」


「えっ?どういう事、幹太?」


「いやさ、この世界でラーメンをやっている以上、必ず俺たちのラーメンを参考にしているはずなんだけど…」


「という事は、やっぱりこれは幹太がリーズで作ったものを参考にしているわけじゃない…ってことかしら?」


「うん。たぶんそれが正解だよ、クレア様」


目の前にある見た目が真っ黒なラーメンは、幹太が以前、アンナとシェルブルックに向かう旅の途中で作った焼きチャーシューの醤油ラーメンに確かによく似ていた。


「まずはチャーシューが違うな…っていうか具は全部違うのかな…?」


幹太が姫屋の街道ラーメンと名付けた、焼きチャーシューの醤油ラーメンは、焦がしネギと茹でた八宝菜、そして本当に直火で焼いたチャーシューが乗っていた。


「ですね。

これは…普通に茹でたチャーシューでしょうか?

まずはこれから…ハグッ!」


肉好きのアンナは、やはりまずチャーシューから口にする。


「あっ!美味しいですね♪

やっぱりこれ、茹で後にお醤油に漬けて作ったチャーシューです♪」


日本漢字で焼豚と書くチャーシューであるが、実際には茹でてタレに漬け込む作り方が一般的だ。


「あとはほうれん草と…味玉か。

こりゃなかなかいいな…」


新しい店舗としてはいい具の選択だと幹太は思った。

ほうれん草は茹でるだけで仕込みが終わるものであるし、味玉は茹でた後にチャーシューと同じタレに漬ければ完成だ。


「そんじゃスープいってみるか…」


そして、レンゲを使ってスープを一口啜った。

たぶんこのレンゲもどこかで幹太達のラーメンを見て作ったものだろう。


「…うん、悪くはないな。

ただ…こりゃやっぱり俺達のラーメンとは違う…」


「うん。よくわからないけど、とにかく日本のラーメンとは違うね。

ん〜なんだか洋食って感じ?」


「あぁ、そうかも…」


由紀の感想の通り、ジェイクの店のラーメンは洋食のコンソメスープに醤油ダレを足したような味だった。


「私、このスープも嫌いじゃないです」


アンナもすでにチャーシューを食べ終え、スープを飲んでいる。


「私はもうちょっと濃いほうが好きです〜」


塩湖の塩を使った料理に慣れているソフィアにとっては、ちょっとパンチが足りないようだった。


「よし。残るは麺だな…」


幹太は麺を一口啜った。


「おぉっ!麺もちゃんとしてるぞ!」


ラーメンの麺とその他の麺の大きな違いは、かん水というラーメン特有の水を使って仕込んでいるかどうかである。

どうやってそれを知ったかは定かではないが、このラーメンの麺はしっかりとかん水を使った味がしている。


「そうだね、幹ちゃん。

麺は日本のラーメンと大差ないかも…」


実際に日本でも、かなり無茶なスープにかん水を使った麺を使ってラーメンと名乗っている例は数多くある。


「それで幹太…あなたにとってこれはラーメンって言えるものなの?」


クレアが目の前に置かれたどんぶりを指差して聞く。


「言える…かな。

うん…これはラーメンだよ」


「ほ、本当ですかっ!?」


と、幹太の背後で突然叫んだのは、先ほどまで注文をとっていた女性であった。


「うわっ!ビックリしたっ!」


「す、すいませんっ!

でも…本当にラーメンって言って大丈夫なんですか?」


「え、えぇ、大丈夫だと思いますよ」


「ああ…よ、良かった…」


と、白いエプロンを付けた小柄な金髪の女性はホッとした笑顔を見せる。


「ちょっと!あなた一体誰っ!?」


「あっ!申し訳ありません、クレア様!

私はメーガン・ラ・フォンテと申します。

ジェイク様からこのお店を任された、ダニエル・ラ・フォンテの妻です」


「メーガンね…」


そう言って、クレアは上から下までメーガンを観察する。

大きな青い瞳を涙で潤ませたメーガンは、見るからに気の弱そうな女性であった。

身長だけで言えば、まだ成長途中である自分と大差がない。


『ん?あら…?』


とそこで、クレアの視線がメーガンの体のある場所で止まった。


『ちょっ!えぇっ!な、なんなのこの人の胸っ!?』


メーガンのエプロンは胸から下が体にフィットせず、胸から腰紐の間に巨大な空間ができていた。

ぱっと見でクレアはメーガンがふくよかな女性だと思っていたのだが、それは胸が大きすぎて洋服が体に沿わないからだったのだ。


『えっ?ちょっと待って…胸ってこんなに大きくなるの…?』


驚愕のあまり、クレアはゴクリと唾を飲み込んだ。


とそこへ、


「メーガン…大丈夫?」


屋台から彼女の夫であるダニエルが様子を見にやって来た。


「えぇ大丈夫よ、ダニエル♪」


メーガンは心配そうに自分を見つめるダニエルの両手を取り、笑顔でそう返事をする。


「クレア様、この人が私の夫です」


と、メーガンに紹介されたダニエルはスッと頭を下げた。


「お初にお目にかかります、クレア様。

ダニエル・ラ・フォンテです」


ダニエルは茶髪で長身のイケメンであり、妻と同様に気の弱そうなタイプの男性であった。


「そう。

それでダニエル、あなた自分が何をしてしているかわかってやっているの?」


「何をと言いますと?」


「ジェイクの片棒を担いで、ここでラーメン屋台をやっているということよっ!」


「片棒…?」


「ダニエル…どういうこと?」


メーガンは握った手を離さず、ダニエルに顔を寄せて聞く。


「いや、僕はこのラーメンという料理を自分なりに作ってみろと言われただけで…ジェイク様も許可は取ってあるから大丈夫だと…」


「えっ!?なにか見本があったんじゃないんですか?」


幹太は思わず大声で聞いた。

まさか本当に一からラーメンを作ったのかと思ったからだ。


「いいや。参考になるラーメンは食べたし、色々な場所で調査もしたよ。

確か…ジャクソンケイブっていうシェルブルックの村だったかな…」


「あぁ、そういう事か…」


ジャクソンケイブは、幹太とアンナが村おこしのためにご当地ラーメンを作った村だ。

そう言われてみれば幹太は、ジャクソンケイブの食堂に姫屋の街道ラーメンのレシピも伝授していた。

姫屋という屋号と共に食堂のメニューに加えてもらうことで、自分達の屋台の宣伝になると幹太は考えたのだ。

これはジャクソンケイブのご当地ラーメンを作った幹太への、村からの唯一の報酬と言ってもいい。


「麺の作り方とかはそこで教えてもらったんだよ♪

さすがにスープは秘密だと言われたから、その辺は見た目を参考に自己流で頑張ったんだ♪」


創意工夫で似たスープを作る。

それはラーメンが普及していく過程としては普通の流れであろう。


「そうですか…」


「あぁ、だから麺がちゃんとラーメンだったんですね」


「か、幹太さん!アンナさん!村の人達がすいません〜」


ソフィアが涙目で二人に謝った。


「あぁいや、ジャクソンケイブで作った麺のレシピぐらいならいいんじゃないかな。

なっ、アンナ?」


「えぇ。それは私も大丈夫ですけど…」


それは本格的に麺の仕込みを任されているアンナも同じ意見であった。

そもそもこの世界でラーメンを広める以上、基本的な麺の製法などは公開していかなければ話が進まない。

幹太はその内、どこかで基本的なスープのレシピなども公開するつもりであった。


「クレア様、もしかしてなにか問題が…?」


「ど、どうしましょう、ダニエル…?」


と言いつつ、二人はギュっと抱きしめ合う。

先ほどからこの夫婦は異常に距離が近い。


「えっと….お二人は勝負のことを聞いていますか…?」


ゾーイが抱き合う二人に恐る恐る聞いた。


「勝負…?メーガン、何か聞いてる?」


「いいえ、私は何も…」


メーガンはダニエルの胸でキョトンとした顔をしている。


「ウソでしょ!ジェイクっ!あいつ何考えてんのっ!」


クレアは髪の毛を逆立てて、再び烈火の如く怒った。

10連休中、少し投稿間隔が長くなるかもしれません。

更新は必ずいたしますので、よろしくお願い致します。

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