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ご当地ラーメンで異世界の国おこしって!?  作者: 忠六郎
第四章 リーズ公国編
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第九十話 お姫様の実力

キリの良い所で切ったため、今回は少し短めです。

引き続きよろしくお願い致します。

それから数日が経ち、リーズで行われる経済交流会議は目前に迫っていた。


「おぉっ!結構な人出だな♪」


「そうだね〜♪」


「わ、私、また気持ち悪く〜」


「大丈夫ですか?ソフィア様?」


幹太、由紀、ソフィア、ゾーイの四人は例によって、ブルーガレリアで屋台を出店していた。

今は朝の仕込みを終え、スープが沸くのを待っている最中だ。


「ソフィアさん、もうすっかり街に慣れてきたと思ってたけど、まだ人酔いするんだな…」


ソフィアは以前、シェルブルックの王都、ブリッケンリッジで同じように人酔いしていた。


「仕方ないよ、幹ちゃん。

こんなの日本で言ったら新宿とか渋谷だよ」


由紀にそう言われ、幹太は目の前の人混みを見た。


「だよなぁ〜。確かにすごいかも…」


幹太が日本で住んでいた吉祥寺も休日になると混雑することで有名だが、さすがにここまで酷くはない。


「そんじゃ、ソフィアさんは屋台の裏で休んでてくれ。

体調が戻るまで、こっちは気にしなくていいからね」


「はい。すいません幹太さん〜」


「ではソフィア様、こちらへ」


ゾーイがソフィアに手を貸し、屋台裏の木陰に連れていく。

彼女は木陰に行く途中でクーラーボックスから氷を取り出し、それをタオルで巻いてソフィア首筋に当てた。


「あぁ…気持ちイイです。

ありがとうございます、ゾーイさん〜」


「それは良かったです。

芹沢様の言う通り、ゆっくり休んで下さいね」


「はい〜」


『とりあえずは大丈夫そうだな…』


幹太は木陰に横になるソフィアを見届け、再び屋台の前へと視線を移した。


「営業は由紀とゾーイさんがいれば大丈夫かな?」


「ん〜まぁなんとかなるよ。

お昼にはアンナも来るって言ってたから」


「そういや言ってたな。

しっかし、今日一緒に行けないってわかった時のアンナの顔、傑作だったよなぁ〜♪」


「ふふっ♪そうだね〜♪」


アンナとシャノンは、一応建前上は経済交流会議のシェルブルック代表としてリーズ公国に来ている。


「さぁ〜久しぶりに働きますよ〜♪」


そう言って、今朝のアンナは屋台をやる気マンマンで幹太のいる離れを訪れた。

しかし、その後すぐにビクトリアがやって来てアンナにこう言ったのだ。


「アンナちゃん、今日は各国大使にご挨拶しに行くぞ。

だから一日中お姉ちゃんと一緒にいてもらう」


「えぇっ!またですかっ!?

こっちに来てからそんなのばっかです!」


そうしてアンナは、めっちゃ不本意そうな顔をして宮殿へと戻って行った。


「まぁ仕方ないよな。あれでもお姫様なんだし」


幹太は無意識に婚約者をディスる。


「うん。元気にラーメン屋さんやってると、本当にそうは見えないけどね。

でも幹ちゃん、アンナがお姫様ドレス着たとこ見たことある?」


「あっ!そう言われてみりゃまだないな」


「すっごいよ〜アンナ。

私、ビクトリア様と並んでるとこ見たんだけど、なんていうのかな…これぞ王女ってビクトリア様と、深窓の姫君アンナって感じだった」


「あぁ…まぁなんとなく想像はつくな…」


あの見た目のアンナがドレスを着て黙って立っていれば、それこそクレアの言う通り、妖精の姫に見えるだろう。


「お、そろそろかな…」


二人がそんな話をしているうちにスープが沸き、開店の準備が整った。


「おーし!そんじゃ開店するぞー!

ごめーん!ゾーイさん、戻ってきてー!」


「はーい!」


「由紀、暖簾お願い!」


「ほーい♪

それでは開店でーす♪」


という由紀の掛け声とともに、幹太達の屋台は開店した。

まだ昼前ということもあって、開店後しばらくはヒマな時間が続く。


「ゾーイさん、やっぱりこの人出は経済交流会議と関係があるのか?」


「えぇ、そうですね。

世界各国の大使の方がご訪問されてますから。

取り巻きの人達も合わせるとかなりの数だと思います」


「あぁ、地球で言うサミット的な感じね…」


「そりゃすごい人になるよ…っと、はい!いらっしゃい!」


と、幹太が話している途中で本日一人目のお客がやって来た。


「「いらっしゃいませー♪」」


続けて由紀とゾーイも挨拶をする。


「えっと…メニューはつけ麺とラーメン…?なんだこりゃ…?

リーズ独自の食べ物か?」


お客は外国人らしく、幹太達の屋台のメニューを見て怪訝そうな顔をしている。


「いいえ♪リーズ独特じゃないんですけど、良かったら食べてみて下さい♪」


そんなお客の不信感を拭うように、由紀が持ち前の笑顔で接客をする。


「あ、あぁ、じゃあこのラーメンってのを頼むよ…」


「はい♪あっ!でも、お客様は辛いものは大丈夫ですか?」


「あぁ、大丈夫だけど…」


「はい!かしこまりました〜♪

幹ちゃん!海鮮辛味ラーメン一つでーす!」


「はいよー!」


幹太は威勢よく返事をしてラーメンを作り始めた。

彼が海鮮から取ったダシのスープと、醤油ベースのタレを中華鍋に入れて沸かし始めると、屋台の周囲が刺激的なトウガラシの香りに包まれる。


「芹沢様、結局は醤油ベースにしたんですか?」


「ん〜ホタテにはこっちの方が、このスープに合ってる気がしてさ。

はい、これでオッケー。

ゾーイさん、お願いします」


幹太は完成したラーメンを、表周り担当のゾーイの前に置いた。

今日の海鮮辛味醤油ラーメンは、焼きホタテ二つと味付け玉子が乗っている。

もちろんお客に出すには十分美味しいラーメンだが、実のところ、幹太はまだご当地ラーメンとしてはまだ何か足りないと思っていた。

さらに言えば、ホタテの仕入れにコストがかかり過ぎて単価も高くなっている。


『ひとまずスープと辛味ダレの相性をお客さんに確かめてもらわないとな…』


まずはそこの反応を見て、具の方はまだまだ改良を加えるつもりだった。


「おっ!こりゃけっこう辛い!でも…美味しいな♪」


お客はスープをレンゲで掬い、スープ一口飲んでそう言った。


「私は豚と辛いのって好きだけどなぁ〜。

ほら、豚キムチってあるじゃない?私、あれ大好きだもん」


「うん。確かにこの海鮮スープの辛味ラーメンとチャーシューの相性は最高なんだよな…」


「それでもやっぱり変えないとダメ?」


「芹沢様、私もそう思います…」


ラーメンをお客に運び、戻ってきたゾーイも会話に参加する。


「最初のチャーシューも良かったですし、今回のホタテだって、クレア様に頼めばコストはなんとかなるかもしれませんよ」


「そうかもしれないけど…やっぱりそれじゃあなぁ〜。

それにもちろん豚だって美味しいんだけど、ご当地ラーメンにはあともう一歩って感じなんだよ」


幹太が以前、ジャクソンケイブ村で作ったご当地ラーメンは、一見して分からないスープの塩と、目に見えるトッピングに地物の野菜を使ってご当地ラーメンとした。

だからこそ、リーズのつけ麺は魚介系スープに、近海で獲れた海老を具に使ってご当地っぽさを演出している。

その上、そのどちらのラーメンにもコストに問題はない。

幹太は海鮮辛味ラーメンでもそれを狙っているのだ。


『いまのお客さんには申し訳ないけど…まだクレア様の名前を使うわけにもいかないな…』


クレアのイメージを使うには、今の海鮮辛味ラーメンでは力不足なのだ。


「ん〜クレア様に頼まれたってのに不甲斐ないなぁ〜」


幹太はそう言うが、新しい土地で開店したラーメン店が初っ端から全て完璧に揃ったラーメンを作れることなどほとんど無い。

余程の有名チェーン店でもないかぎり、普通は徐々に改良していくものなのだ。


「す、すいません、芹沢様!悩むのは後でお願いします!」


「えっ?あっ、ゴメン!」


切羽詰まったゾーイの声に幹太が意識を取り戻すと、いつの間にか目の前には注文を待つお客が列をなしていた。


「ええっと、由紀、注文は?」


「ラーメン三、つけ麺三だよー!」


「はいよ!了解!」


それから集中を取り戻した幹太は、溜まったお客の注文をテキパキと捌いていく。


「ん〜あれって…?」


お昼を過ぎ、お客の数が徐々に減り始めた頃、由紀は広場の入り口に人だかりを見つけた。


「幹ちゃん。あそこ、なんか騒ぎになってる…」


幹太は手で陽射しを遮り、目の前のお客の頭越しに由紀の指差す先を見てみる。


「んん?ちょっと俺には見えないな…」


「せ、芹沢様、大丈夫でしょうか?ケンカとかじゃ…?」


「いや…まったくわからん…」


「あっ!こっちに近づいてくるよ!」


しかし、騒ぎはだんだん幹太達の屋台に近づいて来ているようだ。


そして、


「えぇっ!あれってもしかして!?」


と、まずは視力最強を誇る由紀が一番に気がついた。


「おい!すごい可愛い子だぞっ!」


「あれはもしかして…シェルブルックの妖精王女じゃ…」


「おかあさん…あれってアンナひめさま…?」


「ん〜?えぇ、そうよ♪とってもお綺麗ね♪」


どうやら向こうからやって来るのはアンナのようだ。


「なぁ由紀、どうしてこんなに騒ぎになってんだ?」


今までアンナが街に出ても、こんなに騒ぎになることはなかった。


「ドレス着てる…」


「えっ?」


「だ〜か〜ら!アンナがドレスを着てるのっ!」


「あっ!私も見えました!

本当です!アンナ様、ドレスをお召しになってます!」


「マ、マジか…」


幹太がそう言って再び騒ぎの中心を見てみると、そこには人混みのド真ん中でドレスを着て手を振るアンナがいた。



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