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ご当地ラーメンで異世界の国おこしって!?  作者: 忠六郎
第四章 リーズ公国編
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第八十七話 異世界温泉

翌日、

目を覚ました幹太が見たのは、間近に迫る由紀の真っ赤な顔だった。


「お、おはよう幹ちゃん」


「あ、ああ、おはよう由紀」


「どうして起きちゃた…ううん、幹ちゃんまだ支度してないよね?」


「そうだ!温泉だっけ!?」


幹太はそう叫んで飛び起き、時計を見た。

どうやら自分は昼前まで眠っていたらしい。


「ごっ、ごめん!今すぐ支度する!」


「あ、うん。ゆっくりで大丈夫だよ。

私達もいま買い物から帰ってきたばっかだから」


「あぁ、そうか。良かった〜」


由紀の言葉を聞いて、ホッとした幹太は一旦ベットに座った。


「やっぱ疲れてたんだなぁ〜」


「まぁ、そりゃそうだよ。

ここんとこずっと夜中までラーメン作りしてたんだもん。

私達が買い物行く前にも、ソフィアさんが幹ちゃんの部屋に来てたみたいだよ」


「そうなのか…」


幹太はなぜか無意識に鏡で口の辺りを確かめた。

しかし、彼は思いっきり首すじに付いているキスマークには気づかない。


「ほんじゃ準備しますかね」


と言って幹太は立ち上がるが、部屋の中を見回しても、誘拐されてきた自分には当たり前だが荷物などない。


「あ、ヤバい…そういや俺も水着なんて持ってないわ」


「ふふ〜ん♪だよね。だから私が買っておきました♪」


由紀は持ってきた紙袋から、真っ赤な水着を取り出す。


「へっ?由紀、それって?」


「えっ!あっ!やだっ!」


由紀が買い物袋から出したのは、ヒモとしか形容のしようがない女性用の水着であった。


「ど、どうしてこれがここに入ってるのよ〜!」


「ま、まさかゆーちゃん…そんな攻め攻めの水着を…」


そう言いつつ、幹太は頭の中で由紀がこのヒモ水着を着ているのを想像してしまう。


「着ない着ないっ!

これはクレア様がふざけて持ってきたのっ!

って、幹ちゃん!?鼻血出てるっ!」


「あ、あぁ…」


しかし、幹太は呆然と鼻血を流したまま由紀の体を見続ける。


「もうっ!幹ちゃんっ!」


由紀は服を着ているにも関わらず両手で体を隠し、真っ赤な顔で幹太に怒鳴った。


「ご、ごめんゆーちゃん」


「幹ちゃん、なんだか最近エッチになった気がする…」


「そ、それはゆーちゃんだって一緒だろ!」


「ま、まぁそれはそうだけど…」


それはそうなのかと幹太は思った。


「…でもゆーちゃんはそんな水着を着なくていいよ…」


「な、なんで?幹ちゃんは見たくないの?」


やはり見慣れた自分の水着姿などではもう魅力を感じないのかと、由紀は内心でガックリと落ち込んだ。


「そ、そりゃもちろん見たいけど、俺以外の男に見せるのはダメだよ…」


恥ずかしそうにそう言う幹太を見て、由紀は先ほどまでとは一転して、パアッと花が咲いたような笑顔になる。


「ふふっ♪そうなんだ♪

じゃあ幹ちゃんだけに見せるならいいの…?」


「うん…み、見たいかな…」


コン、コン


と、二人がいい感じになり始めたところで部屋の扉がノックされた。


「幹太さん?起きてますか?」


どうやら部屋の外にいるのはシャノンのようだ。


「あ、あぁ、起きてるよっ!」


「えっと…もしかして由紀さんもいますか?」


「は、はい!私もいますっ!」


「…もうそろそろ出発するそうです。

ほどほどして出て来て下さいね」


二人がイチャイチャしていたのは、完全にシャノンにバレていた。


「「今すぐいきますっ!」」


そう言って、二人はすぐに部屋を飛び出した。


「「お、お待たせしましたっ!!」」


「はい、幹太と由紀ね♪

えっと、これでみんな集まったのかしら…?」


幹太と由紀が離れの前の中庭に着くと、クレアは人数を確認し始めた。


「ビクトリア様、お姉様、アンナ、シャノン、ソフィア、ゾーイ、あとは…私で全員ね♪」


昨晩、クレアがビクトリアとクロエも誘ったため、今回の温泉ツアーはかなりの大所帯になっていた。

馬車も一台では乗り切れない為、クレア、ビクトリア、クロエ、ゾーイの四人と、幹太、アンナ、由紀、ソフィア、シャノンの五人に分かれて二台の馬車に乗ることになっている。


「それじゃあしゅっぱーつ!」


クレアの号令と共に、二台の馬車はゆっくりと走り出す。


「クレア、今日行く温泉とはどんな場所なんだ?

クロエにも聞いてみたのだが、まだ行ったことがないらしいのだ」


「えぇ、ビクトリア様。

もちろんご説明させていただきます♪」


クレアは待ってましたとばかりに説明を始めた。


「ビクトリア様、これから私達が行くのは、ブルーラグーンというこの大陸で一番大きな温泉ですわ。

その名の通りキレイな空色をしています。

今でも少しづつ広がっていて、そろそろせき止めようという案も出ているぐらいなのです」


「ほぅ…今でも広がっているのか」


「えぇ。地面をゆっくりと泥に変えていて、底の方も深くなっているというお話でした」


「それではいつか底なしの温泉になってしまうのか?」


「いいえ、ある程度の深さで岩盤に当たるようです。

大人が立ってちょうどいいぐらいだと聞いております」


「そうか、それは楽しみだな♪」


ビクトリアはそう言って、ニッコリと笑った。


「実を言うと、クロエ以外の人間と遊びに行くのは久しぶりなんだ。

最近では学園でもなかなか友人ができなくてな…」


「そ、それは仕方ありませんわっ!

ビクトリア様は王女なんですから!」


クレアはリーズの学園で、いつもビクトリアと姉のクロエの事を見ていた。

見た目は絢爛豪華なビクトリアではあるが、彼女自身はとても優しく気さくな人物である。


「だといいのだけど…」


「そうなんですっ!

本当は皆さんビクトリア様とお話ししたいに決まってますっ!」


「はは♪ありがとう、クレア」


ビクトリアはクレアの頭をポンポンと優しく撫でた。


「う〜、本当に本当なんですから〜」


「あぁわかったよ、クレア。

そうでなくても、優しい後輩がいて私は十分幸せだ♪」


一方、幹太達の馬車では、


「私、火山で温泉ってことは、絶対に体にいいと思うんだよね!」


と、由紀が温泉について力説していた。


「アンナも日本で一緒に行ったじゃん!最高だったでしょ!?」


「えぇ、覚えてます♪日本の日帰り温泉、最高でした♪」


と、由紀の目の前に座るアンナが頷く。

この馬車の御者は、女性だけの客車に乗りづらいという理由で幹太が務め、その隣にシャノンが座っていた。


「私の村の温泉も、普通のお湯よりも体の芯から温まると言われてますね〜」


ソフィアの村のジャクソンケイブは、高地にしては珍しい温泉の湧く土地である。


「確かに大きな温泉というのは、それだけで観光に使えそうですね」


「うん。とりあえずこの大陸で一番広い温泉なんて、日本人の私には楽しみでしかたないよ〜♪」


ラクロスの合宿で各地の温泉に泊まることの多い由紀は、かなりの温泉マニアであった。


「そういえば由紀さん、水着はどうされたんですか〜?」


客車の前の窓から、幹太の様子を見ていたソフィアが振り返って聞いた。


「あぁ…それね。なぜか出発前にゾーイさんから私が買った方の水着を渡されたわ…」


本来、由紀が買っていたのはもっと普通の水着である。


「そういえば二人はどんなのにしたの?」


由紀は自分の水着を買った後、幹太の水着も買いに行っていたので、他の女性陣がどんな水着を買ったのか知らなかった。


「それは着いてからのお楽しみにしましょう♪」


「あ〜、そう言えばアンナも時間かかってたもんね♪」


「アンナさん、可愛らしかったですよ〜♪」


「ソ、ソフィアさんのは凄かったですよね…」


事実、試着室から出てきたソフィアを見たアンナは、そのあまりの危うさに言葉を失った。


「そうですか〜?普通だと思いますけど〜♪」


そんな三人の客車での会話を、御者台に座る幹太とシャノンは聞いていた。


「…外にいて良かったですね、幹太さん」


「…あぁ、まったくだ」


それぞれがそんな話をしているうちに、馬車は町外れの丘を越え、温泉地ブルーラグーンへとたどり着く。


「さぁ〜着いたわ♪」


クレアが馬車を飛び出して、両手を広げて叫んだ。


「どう?無駄に広いでしょ」


クレアは呆れたようにそう言ったが、日本人である幹太と由紀にとってその光景は驚くべきものであった。


「由紀…これってすごくないか…?」


「…うん。私も自分の前にある景色が信じられないよ…」


幹太と由紀の目の前には、エメラルドグリーンの水を湛えた大きな湖があった。

簡素な木製の策で囲われた湖からは湯気が立ち上っており、それが温泉であることは一目で分かる。


「私でも向う岸が見えないけど、これが全部温泉なんだよね…?」


「あぁ、硫黄の匂いがするし、間違いないと思う…」


あらかじめクレアから、この世界で一番大きいと聞いていたものの、これほどまでに広大だとは、日本の常識的な規模の温泉を知る幹太と由紀は想像していなかった。


「それじゃあ行くわよ〜!」


そう言って、石造りの管理棟らしき建物に向かうクレアに幹太達一行はついていく。


「「「いらっしゃいませ〜」」」


管理棟の窓口では、数人のおばちゃん達が働いていた。


「まぁまぁ、こんな大人数で珍しいわね」


「あらやだっ!男の子は一人しかいないじゃない!?」


「それじゃ他にお客も来なそうだし、貸し切りにしちゃうかね〜」


「あっ!それは名案ねっ♪」


そう言って、クレアはパチンと手を打った。


「あらまぁクレア様!」


「えっ?あら本当だわ!クレア様!」


「えぇ、そうよ♪

おばさま達、ご迷惑でなければ本当に貸し切りにしてちょうだい。

お隣の国からお忍びでビクトリア様がいらっしゃってるの」


「あぁ、もちろんさ」


「そうだね。クレア様に頼まれたら仕方ないね」


「端から端までは見えないから何も心配はけど、お姫様になにかあっちゃ大変だからねぇ〜」


「ありがとう、おばさま♪」


リーズ公国唯一のプリンセスだけあって、やはりクレアの人気は高いようだ。


「アンナ…いまのおばさん達のお肌見た?」


「えぇ、もちろん。ツヤツヤでしたね、由紀さん」


「ここは日本でいう美肌温泉ということでしょうか…?」


シャノンも日本に滞在中に由紀と温泉に行っていた。

温泉に美容効果があることは、すでに知っている。


「なにっ!?温泉にはそんな効果があるのか、シャノンっ!?」


「それは一刻も早く入らないといけませんね!」


そんなシャノンの言葉に、年長組の二人が劇的な反応をする。

ビクトリアとクロエは、年齢的にお肌の曲がり角が近づいているのだ。


「はいはい、それじゃ女の子はこっちに入ってね。

そんで男の子はこっち。

ふふっ♪お兄さん、寂しいからって覗いちゃダメだよ」


「し、しませんよっ!」


異世界だというのに、パンチパーマのおばちゃんが幹太達を更衣室に案内する。


「それじゃ幹ちゃん外でね♪」


「あぁ」


幹太はそうして一人で更衣室に入り、由紀の用意してくれた紺色のハーフパンツに着替える。


「これでよし」


男性一人だけあって、一瞬で着替え終わった幹太は更衣室の外でみんなを待った。


「おおっ!本当に広いなっ!」


「はい。ビクトリア様」


まず最初に更衣室から出てきたのは、ビクトリアとクロエだった。


『あ、改めて見るとビクトリア様ってすごい…』


幹太は以前、ほぼ下着姿のビクトリアに襲撃されたことがある。

彼女は自身の金髪に負けないゴールドのビキニ姿であった。

色々な面で迫力のある彼女には、とても良く似合っている。


「せ、芹沢様、あまりこっちを見ないで…」


と言って、腕で体を隠すのは若草色のビキニを着たクロエである。

彼女の水着には花柄のパレオが付いていた。

淡い緑色の水着が、クロエの赤い髪を美しく際立たせている。


「ご、ごめん!クロエさん!」


と、幹太が慌てて視線を逸らしたところで、再び誰かが更衣室から出てきた。


「ね♪すごいでしょ、アンナ♪」


「えぇ、確かにこの大きさはすごいです」


「ゾーイさんも初めて来たのですか?」


「は、はい」


次にやって来たのはクレア、アンナ、シャノン、ゾーイの主従組だった。

クレアはその髪の色と同じ、真っ赤なワンピースの水着を着ている。

そしてその隣に立つアンナは、スカイブルーのビキニを着ていた。

アンナの水着には所々に白いフリルが付いている。


「あっ!幹太っ!

私の水着姿はどう?アンナには勝ってるでしょ?」


「そ、そんなことありませんっ!

幹太さんっ!私の方が勝ってますよねっ?ねっ?」


と言って、まだ顔の赤い幹太を見つけた二人が、グイグイと見せつけるように彼に迫った。


「い、いやっ!どっちも良く似合ってるって!

ふ、二人とも本当に可愛いから!ちょっと離れてくれー!」


普段着でもとんでもなく可愛い二人に水着で迫られ、幹太は思わず後ずさりをする。


「キャッ!芹沢様っ!」


「ゾ、ゾーイさんっ!」


後ずさりした幹太はゾーイとぶつかり、二人は重なり合うように倒れた。


「あ、あたた…ゾーイさん、大丈夫?」


「はひっ!だ、大丈夫ですけど…芹沢様の手が…」


ゾーイに覆い被さるように倒れた幹太の手は、黒いビキニを着た彼女の胸を思いきりワシ掴みにしていた。


「うわっ!ごめん!あだっ!」


と、飛び上がってゾーイから離れた幹太は、もんどりうって何かにぶつかる。


「まったく…少し落ち着いて下さい」


そう言って幹太に手を差し出したのは、紫色の水着を着たシャノンだった。

彼女の水着は競泳用水着のようなシルエットをしていて、シャープなイメージのシャノンにはとても良く似合っている。


「あ、ありがとう、シャノンさん」


幹太がシャノンの手を取ったところで、由紀が更衣室から出てきた。


「もう幹ちゃん、みんなが綺麗だからってあんまり浮かれちゃダメだよ」


そう言って、由紀も幹太の手を取った。


「あぁ、気をつけるよ」


とは言ったものの、幹太の視線は久しぶりに見た水着姿の由紀に釘付けだった。


「ゆ、由紀、その水着…」


「う、うん。さっきのやつほどじゃないけど、ちょっと頑張ってみたの…」


由紀の水着は白いシンプルなビキニだった。

シンプルと言っても、紐ビキニと呼ばれる少し大人っぽいタイプのものだ。


「ど、どうかな…?」


「うん…いい。すごく…いい」


「そ、そう。だったら良かった…」


「はーい!由紀さんっ!そこまでですよー!」


とそこで、ポーッと見つめ合う二人の間にアンナが割って入った。


「えっと、あとは誰だっけ…?」


「あとは…ソフィアさんですよ、クレア」


「アンナ、そういえばソフィアさんの水着って?

さっき私が出てきた時はまだ着てなかったんだけど…」


「大丈夫です、由紀さん。

先ほど私が常識的なのものを渡しました」


「シャノンが選んだなら大丈夫…」


と、由紀がそこまで言ったところで更衣室の扉が開いた。


「お待たせしました〜♪」


と言って更衣室から出てきたソフィアは、今朝由紀が持っていた水着の色違いを着ていた。


「やっぱりですか…」


「ええっ!シャノンっ!?」


「ち、違います由紀さんっ!私が渡したのではありません!」


「ほう…クロエ、あれは水着なのか?」


「そ、そのようですね…」


「裸よりやらしいじゃないっ!

まさか本気で着る人がいるとは思わなかったわ!」


「えぇ…私もです、クレア様」


ソフィアが着ているえんじ色の水着は、下は普通の水着ほどの面積があるが、そこからクロスして伸びる胸に至る部分は、リボンのような少し幅のあるヒモでできていた。

正面に立つ幹太から見れば、かろうじて隠れている先っぽ以外はほぼ全てが肌色だ。


「すみません〜着るのに時間がかかってしまいました〜♪」


「ソ、ソフィアさん…」


「はい♪どうですか〜?幹太さん♪」


「あ、ありがとうごさいますぅ〜」


という意味不明な感想を口にして、幹太は再び鼻血を出して倒れた。



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