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ご当地ラーメンで異世界の国おこしって!?  作者: 忠六郎
第四章 リーズ公国編
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第八十一話 ヘルプ仮面参上!

ご感想ありがとうございます。

面白すぎて、不覚にもコーヒーショップで吹き出しました。

これからもご感想お待ちしております。

ドシドシお寄せ下さい。

よろしくお願い致します。

「おわっ!」


幹太は突然の柔らかな衝撃によろめいた。

明らかに誰かが背中から抱きついている。


というより、


「ソ、ソフィアさんっ!?」


今、幹太を呼んだ声は間違いなくソフィアのものであった。


「はい〜♪」


幹太が首だけで振り返ると、そこにはなぜかマスクをしたソフィアの顔があった。


「あら、いけない♪

幹太さん、私はソフィア・ダウニングではありませんよ〜♪」


「マ、マジか…」


と言われても、幹太と鼻と鼻がくっ付きそうな距離にいるマスクをしたナイスバディの人物は、ソフィア以外の何者でもない。


「芹沢様っ!」


とそこで、一人注文を捌いていたゾーイが悲鳴をあげた。


「あっ!!ごめん!ソフィアさんっ!」


「はいっ♪」


ソフィアはクルリと回って幹太の背中を離れ、ゾーイの隣に立った。


「では、一緒に盛り付けをしましょう〜」


「よ、よろしくお願いします…」


ゾーイは突然現れたマスクレディに引き気味だった。

どうやら彼女は急いでやって来たらしく、いつもの白いブラウスは汗で透け、胸元がガッツリ開いていた。


「ソフィアさん!タレは擦り切れ一杯!エビ四つと味玉とメンマだよ!」


「わかりました〜♪」


そう返事をしたソフィアはそれだけで自分が何をすればいいのかを理解して、ゾーイと協力しながらつけ麺に具を盛り付けていく。


『この人がソフィア・ダウニング…?

ブリッケンリッジの調査では、もっとのんびりした方だと思ってたのに…』


ゾーイは目の前で目まぐるしく動くソフィアの手捌きを見て驚いた。


「…ゾーイ様ですよね。実は私、幹太さんの婚約者のソフィア・ダウニングです〜♪」


「は、はい…?」


と、呆気に取られている彼女にソフィアはそう囁いたが、ゾーイには「実は」の意味がさっぱりわからない。


「ゾーイ様?大丈夫ですか?」


「あ、はい、大丈夫です」


「今回は麺とスープが別々なんですね。

これも美味しそうです〜♪」


「…美味しいですよ。あとで芹沢様に食べさせてもらっては?」


ソフィアがヘルプに入った事で、ゾーイにもだいぶ余裕が出てきたようだ。


「そうですね♪そうします〜♪」


『この人、なんでマスクを…?』


しかしその一方で、疑問は増えるばかりだ。


「よっしゃー!終わった〜」


「よ、良かったです…これ以上あの状態が続いていたら…」


「お二人ともお疲れ様でした〜♪」


幹太が麺の仕込みの量を少なくしていただけあって、お昼を過ぎる頃には海鮮スープの海老味玉つけ麺は売り切れた。


「ソフィアさん、来てくれて助かったよ。

本当にありがとうな」


「ありがとうございます、ソフィアさん。

ご迷惑をおかけしてすいませんでした」


「いいんですよ〜♪私も久しぶりに幹太さんの手伝いを…」


と、そこまで言いかけたソフィアの動きがピタリ止まった。


「わ、私は、ソフィアではありませんっ!

と、通りすがりのヘルパー仮面ですよ〜」


ソフィアは額に冷や汗を流し、今さらながらごまかそうとする。


「そういやなんでそんな覆面をしているんだ?」


「ええっと、それは〜」


それは数時間前のこと、


ローズナイト家の使用人達の案内でレイブルストークの宮殿に到着したソフィア達一行は、アンナから幹太もこの宮殿にいると聞いた。


「じゃあ私は幹太さんに会ってきます〜♪」


出発した時から幹太に会いたくて仕方なかったソフィアは、一刻も早く彼の元へ向かいたかった。

それだけでなく、幹太に会ったらなんかもうメチャクチャにするつもりだったのだ。


「あっ!ソフィアさん達も着いたんだ!

幹ちゃん、今はお仕事に行っちゃってるよ」


「えぇっ!?でしたらなんでお二人はここにいるんですか〜?」


幹太がお店を出すとわかっているのになぜ二人がここに残っているのか、ソフィアにはまったく理解できなかった。


「えっとね…頭を冷やす時間を取ろうって…」


と、そこまで言った由紀は、ソフィアの纏う雰囲気が、急激に闇を帯び始めたことに気づく。


「…ってアンナが言ったの!」


彼女がそう言った途端、俯いていたソフィアの顔がグルリとアンナの方を向いた。


「由紀さんっ!?」


家族となる由紀の突然の裏切りに、アンナは思わず大声を上げる。


「アンナ様…それでアンナ様は、私の幹太さんに会ったんですか〜?」


「あ、会ったかも…」


「どっちですか〜?」


いつもはのんびり感じるソフィアの語尾も、今は怖いとしか思えない。


「あ、会いました…」


「それなら私も会いに行っていいですよね〜?

婚約者は平等でしょう〜?」


「は、はい!平等!大切ですっ!」


「ソレデ、ワタシノイトシイヒトハドコ〜?」


仄暗い目をしてそう聞くソフィアは、指輪を捨てに行く物語の変わり果てたホビット族のようだ。


「か、幹太ならブルーガレリアでお店を出すって…お、お兄様が言ってたわ…」


実の姉のクロエと先輩のビクトリアに挨拶をするため、部屋を訪れていたクレアが、豹変したソフィアの様子に怯えつつ、幹太の居場所を伝えた。


「ワタシ、ブル、ガレリア、イクゥ」


「…由紀さん」


「なに、アンナ?」


「わ、私達もソフィアさんと一緒にブルーガレリアに向かいましょう。

このままでは幹太さんが色々な意味で危険です…」


「そ、そうみたいだね」


「ではそのように。

クレア、馬車を用意していただけますか?」


「いいわよ。

そうだ!もしゾーイが困ったりしてたらちゃんと助けてあげてね♪」


「わかりました。

ではソフィアさん、行きますよ!」


「ワタシ、カンタ、タベル」


そうして半ば野生化したソフィアは、アンナと由紀とともにブルーガレリアにやって来たのだ。


『ア、アンナさん達が怖い顔でこちらを見てます〜』


先ほど急にソフィアの動きが止まったのは、物陰から自分を見るアンナと由紀を発見したからであった。


『でも…お手伝いはしないと〜』


ここまで来る道中で、幹太から分からないように遠くから見守ると約束させられたソフィアであったが、パニックを起こしかけているゾーイを見て居ても立っても居られなくなったのだ。


『あのお店にあるマスクなら〜』


彼女なりにバレなければセーフとでも思ったのか、ソフィアは屋台の手前にある雑貨屋で仮面舞踏会のようなマスクを買い、彼らの元へと駆けつけたのだ。


「と、とにかくお姉さんはこの辺で…あ、そうです〜」


ソフィアはそう言って、幹太の首筋に顔を寄せた。


「ど、どうしたのソフィアさん?」


「幹太…」


と、幹太の首筋で名前を呼ぶソフィアの声は、身震いするほど色っぽい。


「こんなに長く私の側から離れるなんて…帰ってきたらお仕置きですからね…」


「は、はいっ!」


「ふふっ♪は〜むっ」


「うっ!」


ソフィアは妖艶な笑みを浮かべて舌舐めずりをした後、最後に幹太の首筋をカプッっと噛み、ねちっこく味わってからゆっくりと唇を離した。


「ソフィアさん…」


「あんっ♪違います♪お助けお姉さんでしょ〜?」


幹太は真っ赤な顔で首筋を押さえ、放心状態でカクカクと首を縦に振った。

刺激的すぎるお姉さんの色気に完全にやられてしまったのだ。


「それではお片づけ頑張ってくださいね〜♪」


自称お助け姉さんは、そう言って二人の元を去って行く。


「せ、芹沢様…」


「は、はい…ゾーイさん」


「あの方も婚約者なのですよね?」


「…うん」


「女の私が言うのもなんですが…」


「な、なにかな?」


「私、あんなにエッチな人は初めて見ました…」


ゾーイは幹太とソフィアの会話を全部聞いたわけでもなく、もちろんソフィアが必要以上にセクシーな格好をしていたわけでもない。

しかし、彼女の行動の一つ一つが幹太を誘惑していると、隣にいるゾーイにも感じ取ることができたのだ。


「うん。ヤバいなソフィアさん…」


思考が停止していた幹太は、あっさりとそれを認めていた。


その一方、アンナと由紀の所へ戻ったソフィアはめっちゃ説教を食らっていた。


「「ソフィアさんっ!!」」


「は、はい〜」


「クレアにも頼まれていましたし、ゾーイさんを助けに行ったまでは許しましょう。

ですけど…」


「な、なんでしょうか、アンナさん〜?」


「あの最後のはなんですかっ!?」


「そーだよっ!あとソフィアさん!最初に幹ちゃんに抱きついてた!」


「えぇっ!?由紀さん、ここから見えていたんですか〜!?」


ソフィアは薄暗いキッチンワゴンの中でならば、二人から見えないだろうと高を括っていた。


「ふっふ〜ん♪私、めちゃめちゃ視力はいいんだよね♪」


高校時代、由紀の視力は保健室内では測定できず、距離を離すために体育館行われていた。


「ソフィアさん…幹太さんに何回チューすれば気が済むんですか…?」


「そ、それはもちろん何回でも〜」


「それは私もですっ!」


「わ、私もたぶん…」


と、由紀もおずおずと手をあげる。

芹沢幹太、今後と婚後のキッス天国決定である。


「いいですか、ソフィアさん。

私と由紀さんが幹太さんとキスするまで、ソフィアさんはキス禁止ですっ!」


「そっ、そんなぁ〜。

最近そういうのが多くありませんか〜? 」


とは言いつつ、そうでもしてもらわないと自分の欲望に歯止めが効かないことをソフィアは自覚していた。


そして、そんなソフィアの隣では、


『幹ちゃんとキス…?

そ、そんなの絶対恥ずかしいっ!

あ、でも、私がしないとソフィアさんが可哀想なんだよね…?

あーもー!どうすればいいの〜!?』


と、真面目な由紀が頭を抱えていた。


一方その頃、幹太とゾーイは屋台の片付けを終えていた。


「ありがとう、ゾーイさん。

今日は助かったよ」


「いえ、私も従業員の一人ですから…」


ゾーイは幹太がいる間、ずっと一緒に働こうと決めていた。

そしてそれは、クレアからの指示でもある。


「あ、そうだゾーイさん、今日は先に戻ってくれないか?

俺、ちょっと寄りたいとこがあるんだ」


「えっ?それなら私も…」


「いや、その…なんで言うか、ごくごく個人的なことだからさ、ひ、一人で行ってくるよ」


そう言いう幹太の視線は不自然に泳いでいる。


「…わかりました、では後で迎えにきます。

そうですね…夕方の鐘が鳴ったら、この広場の入り口で待ち合わせというのはどうでしょうか?」


「た、助かりましゅ…」


幹太はガッツリ噛んだ。


『怪しすぎますっ!

こんなに隠し事が下手で三人の妻とやっていけるのでしょうか!?』


それはたぶん無理だろうと、この時ゾーイは思っていた。


「じゃ、じゃあゾーイさん!あとでっ!」


ポカンとするゾーイをおいて、幹太は逃げるように商店の並ぶアーケードに走り去っていく。


「…そろそろですかね」


それからしばらくたった後、ゾーイは行動を始めた。

もちろん一度帰ってから迎え来るというのは彼を油断させる為のウソであり、少し間を空けてから尾行するつもりだったのだ。


「ええっと…一人で行くということは、食材じゃありませんよね?」


もしそうならば自分が一緒でも構わないはずだ。

そう考えたゾーイは、まずは大人の男の社交場へと向かう。


「今日のソフィアさんは強烈でしたからね…」


ゾーイは先ほどのソフィアの誘惑で悶々とした気持ちを、エッチなお店で発散するのではと考えたのだ。


「いませんね…もしかして即決で入った…?

いや、芹沢様にそんな勇気はないはず…」


ゾーイはかなりのスピードで幹太を追っているつもりであったが、エッチな店が多く立ち並ぶ辺りまで来ても、彼の姿は見当たらない。


「こっちでないなら…お酒ですかね?」


普通の飲食店を調査するのであれば、食材と同様に自分がいても構わないはずだ。

しかし、なんらかの理由で酔いたいのならば、一人で行きたいということもあり得る。


「ストレス解消でしょうか?」


先ほど会ったソフィアの行動だけを見ても、彼の日々の生活にはかなりのストレスがあるだろう。


「とりあえず行ってみましょう」


ゾーイはオトナのお店があるエリアを離れ、飲み屋街へと向かう。


しかし、その途中で、


「…アンナ。そう、アンナです」


と言う、聞きなれた名前と声を耳にして足を止めた。

ゾーイが声のした方を見てみると、路地にある露天の店主となにやら話をする幹太の姿があった。


「芹沢様?ここは…?」


そう言って、彼女は店先に立てかけられた看板を見る。


「あぁ…そういう事ですか。

確かにそれはいい考えですね♪」


身振り手振りを使って懸命に店主に何かを伝えようとする彼の姿を見て、ゾーイは優しく微笑んだ。


「お待たせゾーイさん。

わざわざ迎えにきてくれてありがとう」


「おかえりなさい、幹太さん。

えっ!?あっ、な、何か買い物をしたのですか?」


夕方、広場に戻ってきた幹太は、大きな木箱を抱えて持っていた。


『あそこの露店にあった物はこれほど大きくはないはずです…』


後を追っていたことを悟られまいとしていたゾーイだが、その予想外の大きさの荷物に戸惑う。


「そうそう。

そんでこれがゾーイさんにお土産。

今日の手間賃を考えてなかったからさ、とりあえずこれはその前払いって事で…」


そう言って、幹太は小さな紙袋をゾーイに手渡す。


「わ、私にですか?

えっと…ありがとうございます。

いま開けてみてもいいですか?」


「もちろん♪」


男性からの贈り物など初めてだったゾーイは、かなりドキドキしながらその小さな紙袋を開いた。


「あっ綺麗…」


袋を開けたゾーイは、思わずそう口にしていた。


「ピアスですか…?」


中に入っていたのは小さな赤い石のピアスだった。


「うん。ゾーイさんって、いつも銀のピアスをつけてるだろ」


「…はい」


彼女は砂漠の民の風習で両耳にピアスをつけている。


「それもすごく似合ってるけど、その赤いのも似合うと思ってさ。

それにクレア様と並んで立った時に、クレア様の髪の色と合わさってすごくいい気がしたんだ…」


そう言って、幹太は照れた様子で首筋を掻く。


「そこまで考えてくださったんですね…」


実は砂漠の民の彼女にとって赤いピアスはある意味を持つものなのだが、ゾーイはそれを幹太に返す気にはなれなかった。

徐々にですが加筆、修正も進めております。

良ければ読み返してみて下さい。

よろしくお願い致します。

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