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ご当地ラーメンで異世界の国おこしって!?  作者: 忠六郎
第8章 アビシニア大陸編
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第375話 セ・ベッラ・アルナ


「殿下…そろそろ着く」


しばらくして、アルナは早足はやあしで木の上の橋を渡りながら振り返る。


「あぁ…なら、良かった」


幹太は先ほどから、暗い森の中の橋をアルナの背中だけを頼りに渡っていた。


「えぇっと…確かこの橋の先が…あった」


再び振り返って先を見たアルナは、村の光を

みつけた。


「お、夜だけど、真っ暗じゃないんだな…」


「殿下、いくらうちの村が田舎でも、魔石灯ぐらいはある…」


「ご、ごめんアルナさん…」


「大丈夫…」


そう話しているうちに、二人は村の入り口までやってきた。


「わっ!すごい!」


あちこちに建つ家を眺めながら、幹太は思わずそう言った。


「こんなにたくさん家があるんだ…」


「私が村を出た時は、こんなにたくさんなかった…」


「へっ!そうなの?」


「そう。けど、なんだか人は少ないかも…」


「確かに、明かりのついてない家がたくさんあるな」


「…とにかく、私の家に行ってみる。殿下、ついてきて…」


「あ、うん」


言われた通りに幹太がアルナの後をついていくと、たまにすれ違う人たちが振り返ってルナのことを見ている。


「アルナさん…」


「なに、殿下?」


アルナは前を向いたままそう返事をした。


「村の名前にアルナって入ってるってことは、もしかしてアルナさんのご両親のどちらかが村長さんだったりする?」


「それはちがう…」


「あ、そうなの?」


「村長はウチのお婆様…」


「あ、両親でなくてってことか…」


「うん」


そう話しながら、二人は魔石のランプで照らされた橋を渡っていく。


「しかし、こんな時に不謹慎ふきんしんかもだけど、すごい綺麗な村だな…」


点々と明かりが灯る家々を眺めながら、幹太はそう呟く。


「ぜひもう一度、みんなと見ないとだな」


「…着いた」


「お、ここか…」


幹太は橋の途中で立ち止まり、目の前の大木に建つ大きな家を見上げた。


「めっちゃデカい家だな…」


「なんか、うちもおっきくなってる…」


「そうなの?」


「うん。昔は一階しかなかった」


二人の目の前の家は、どう考えても二階建以上にかいだていじょうに見える。


「それに、村の雰囲気もずいぶん変わってる」


「さっきも言ってた、人がいないってこと?」


「そう」


「そういやここへ来るまでに通ったお店も、あんまりお客がいなかったな…」


ラーメン屋という職業柄、幹太は飲食店の前を通る時に、お客が入っているか確認する癖がある。


「ちょっと聞いてみる…」


そう言って、アルナは目の前の家の扉をノックした。


ガチャ


「…はいはーい。どなた?」


ノックに返事をして扉を開けたのは、アルナと同じ髪の色をした、背の高い女性だった。


「おばあちゃん、ただいま」


「まぁアルナ♪おかえり♪」


「うん」


「急にどうした…あら、一人じゃないのね?」


アルナの祖母らしき女性は、なぜか呆気あっけにとられている幹太を見て言った。


「は、初めまして、俺は芹沢幹太といいます」


「はい♪はじめまして♪私はアルナの祖母のマリオンよ」


「祖母って、つまり…おばあちゃんなんですよね?」


「えぇ。私はアルナのおばあちゃん♪」


幹太はポカンとした顔のまま、自分に向かって差し出された手を取ってマリオンと握手する。


「あ、あの、失礼かもしれないですけど、すごくお若い気が…」


そうなのだ。

マリオンを見た幹太がずっと驚いていたワケは、アルナの祖母という割には、見た目が若ずぎるからであった。


「ありがとうね♪でも、うちの村の女性はみんなこんな感じよ」


とはいえ、ニッコリ微笑むマリオンはどう見てもアルナの母か姉にしか見えない。


「それにしたって、俺とそれほど変わらない気が…」


「あら、私はこれでも七十代♪」


そう言って、マリオンはウィンクする。


「えぇっ!すごいっ!」


とそこで、アルナが幹太のそでを引っ張った。


「殿下、おばあちゃんの見た目のことはいいから、早く中に入ろう…」


「あ、あぁ…ごめん。つい…」


「そうね。中に入りましょう♪」


そうして幹太は、アルナと共に彼女の実家に入った。


「で、急に帰ってきてどうしたの?」


そしてリビングであろう部屋のソファーに座って早々、マリオンはアルナにそう聞く。


「おばあちゃんは、シェルブルックのアンナ様、知ってる?」


「もちろん知ってるわ。確か…妖精姫だっかしら?」


「そう。その人と護衛の人が、ロシュタニアの洪水に巻き込まれて行方不明になったの…」


「行方不明…あぁ、だからこっちに帰ってきたのね?」


マリオンは少しだけ考えた後、そう聞いた。


「うん…」


「わかったわ。で、あなたがあのセリザワカンタなのね?」


「そうですけど、あのとは…?」


「フフッ♪今、それはいいわ。ということは、あなたがアンナ様のお婿むこさん?」


「はい」


「ロシュタニア方面からの洪水ならば、乾いた谷は捜索したの?」


「まだです。実はここで妻たちと待ち合わせをしていて…」


「おばあちゃん、殿下はアンナ様の他に三人の奥さんがいて、そのうち二人とここで待ち合わせてる」


「そうなの?けど、まだ来てないわよ」


「あ、あの!アンナとシャノンさんはいませんか?」


「残念だけど、そのお二人も来てないわ」


「そうなの?なんだか村の様子がおかしいから、誰か来てるのかと思った」


「あ、それは村の住民が減ったからだわね」


「住民が減った?どうして?」


アルナはこんな僻地へきちの村に何であれ変化はないと思っていた。

それもあって自分は村を出たのだ。


「それがある日から突然、男の人たちが村に戻ってこれなくなったのよ…」


「ある日に突然?」


「えぇ。まず森に出た何人かが行方不明になって、その人たちを探しに行った人たちが、一人また一人といなくなったのよ」


「一人も戻ってこないの?」


「そうね」


「…お父さんもいないの?」


「えぇ。セージもいないわ。それで色々と調べてみたんだけど、どうやらうちの男衆が村の近くまで来ると、どこかに飛ばされるみたいなのよ」


「近くに来たら飛ばされる?あ、でも、魔法ならできるのかな?」


幹太はアルナに聞いた。


「うん。ぜんぜんできる…」


「まぁ、そりゃそっか」


知らない言葉を聞いたり話したりできる魔法があるなら、その場所に入れないという魔法も可能であろう。


「おばあちゃん、その飛ばされた先はわかってるの?」


「確証はないけど、セ・ベッラ・カリナらしいの」


「うぇ、カリナ村…」


アルナは、あからさまに嫌そうな顔をしてそう言う。


「あの…セ・ベッラ・カリナって、なんかここと村の名前が似てない?」


「うん。最後の名前がちがうだけで、意味は一緒だから…」


「名前以外はどういう意味なの?」


「綺麗な、って意味ね♪」


マリオンはニヤニヤしながらそう言う。


「えっ!つまり、セ・ベッラ・アルナは…」


「そう!綺麗なアルナって意味になるのよ♪」


「つまり、その綺麗なアルナっていうのは…」


幹太は、隣で顔を真っ赤にして俯く《うつむく》アルナを見た。


「そうね。あなたの隣にいるアルナが綺麗なアルナ本人よ♪」


アルナが村の名前の意味を教えるのを嫌がっていたのには、そういうワケがあったのだ。


「確かにアルナさんは綺麗ですけど…」


「あら?可愛いじゃないの?」


「可愛い感じもしますけど、綺麗という方が俺的にはしっくりきますね…」


幹太はアルナの顔をジーッと見ながらそう言う。

幹太はアルナに初めて会った時から、可愛いというよりも綺麗な顔立ちをした女の子だと思っていた。


「良かったわね、アルナ♪さすがは妖精姫さまの夫だわ♪」


「う、うん。良かった…」


アルナは顔を背けつつ、幹太のシャツのすそつまむ。


「ってことは、その村には綺麗なカリナさんがいるってことなのかな?」


「うん。カリナ、いる…」


「そうね。アルナと同い年のカリナちゃんがいるわ」


「つまり、村にいる女の子の名前を村の名前するのは、この辺りのしきたりなんですか?」


「いいえ。そんなことないわ」


「えっ!だったら、なんでそんなことに?」


「そうね…それには二人の親バカが関わっているのよ」


「うん。本当にいい迷惑…」


アルナは呆れ顔でため息をついた。


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