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ご当地ラーメンで異世界の国おこしって!?  作者: 忠六郎
第8章 アビシニア大陸編
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第373話 イケメンゆえに

「あぁ、なるほど…」


恋する乙女全開なカリナを見て、アンナは全てを理解した。


「なにせ、マーカスですからね…」


アンナとて、マーカスの見た目が人並み以上なことはわかっている。


「えぇ…できれば私の夫に迎えたぐらいです…」


既婚なはずのサラサも、そう言ってアンナの言葉に頷く。


「そ、そんな目的で僕は捕まったんだね…」


マーカスは恐る恐る、シャノンの様子をうかがった。


「…マーカス様が魅力的な男性であることは確かですけど…」


「えっ!シャノンちゃんも僕のことをそう思ってくれているんだ♪」


マーカスはシュバっとシャノンの前に移動して、その手を握った。


「…だからといってあまり調子に乗らないでください、マーカス様」


そう言って、シャノンはマーカスの手を振り払う。


「シャノンちゃん、ひどい!」


「けど、どちらにせよ、この村に男性がマーカス一人では厳しくないですか?」


「おっしゃる通りです、アンナ様。なにせ結婚せずとも、マーカス様にお相手していただきたいという希望が村中の女性からきていますから…」


「そ、そっち方面の話じゃなくてですっ!

それに、そっち方面の話だとしてもマーカスが死んじゃいます!」


そう言うアンナの脳裏には、枯れ枝のようになったマーカスが浮かんでいた。


「はい。それは私たちもわかっているのですが、ここまで男性と接触がないと、何が正しい方法なのかわからなくなって…」


要するに、サラサや村の大人な女性たちは、ムラムラしすぎて冷静な判断ができなくなってしまったのだ。


「わかりました。でしたら、私たちが手を貸しましょう♪」


一方その頃、二人を探している幹太とアルナは、砂漠ラクダに乗って川の流れた跡の中を進んでいた。


「アルナさんの村って、あらためてどんなとこか聞いていいかな?」


幹太はラクダが余っていたにもかかわらず、なぜか自分と共に二人乗りしているアルナ聞いた。


「木の上に家があって、その木同士が橋で繋がっている…」


「うん。そう言ってたね。あとは?」


「いちおうそう遠くない場所に市場はあるけど、基本は自給自足している」


「えっ!自給自足!?」


日本生まれの幹太としては、この森の中での自給自足はかなり大変に思えた。


「そう。森を切り開いて畑にしたり、鶏や豚を飼ったりしてる」


「なるほど、だからいつも木を切ってるんだね」


「うん、そう。あとは狩りもしたりする…」


「か、狩り…そっか、そういやそう言ってたな…」


「うん」


「それで、住んでいる人はみんなアルナさんみたいな感じなのかな?」


「私みたい?」


幹太の前に座っているアルナは、見上げるようにして振り返る。


「みんな身軽みがるで力持ちなの?」


「女の人はそうだけど、男の人はそうじゃない…」


「えっ!性別によって違うんだ?」


「うん。男の人も力がある人が多いけど、他の国の人から見ても、見た目通りみたい…」


「あ、なるほど。ちゃんと鍛えて、それなりの体をしてるってことなのか…な」


そう言って、幹太は辺りを見回す。


「…アルナさん、そろそろなんか見えたりする?」


「ん〜と、ちょっと待って…」


アルナは由紀の時と同じように振り向いて幹太の肩に手をかけ、ぐるりと背後に回って肩の上に座った。


「わっ!ちょっ!」


幹太は慌てて、肩に飛び乗ったアルナの足を掴んだ。


「ん〜?」


「…な、何か見える?」


「ラパルパの森…が見える」


「森…?」


アルナにそう言われた幹太は目をらして先を見てみるが、見渡す限りの砂漠である。


「つまりその森との間に、二人はいないってことなのかな?」


「…たぶんそう」


「そっか。だったらひとまず、その森まで行ってみるしかないのかな?」


「うん」


「よし!じゃあもうちょっと頑張ろう」


「おー!」


そして、もう一方の由紀とソフィアは、


「ねぇソフィアさん、これって幹ちゃんたちからけっこう離れてない?」


「ん〜と、ちょっと待ってくださいね〜」


たどってきた川の跡が消えた場所で、地図を確認していた。


「やっぱり、乾いた谷からはだいぶ離れた場所みたいです〜」


「ん〜?どうするかな〜?」


辺りを見回すソフィアの隣にラクダを寄せ、由紀は考える。


「もうこの先、川の流れた跡はないし…」


どうやら幹太とアルナがたどっている流れよりもこちらの流れの方が水量が少なかったらしく、ここから先の川の跡が完全に乾いてしまっていた。


「ソフィアさん、この先、川がどっちに行ったかはわからないよね?」


「どうでしょう〜?おそらく最終的には乾いた谷に行き着くと思いますけど〜」


「どこでどうそっちに向かったかはわからないってことかな?」


「はい〜」


「よし!そんじゃあもうアルナさんの村に向かおう!」


闇雲やみくも捜索そうさくしても、自分たちも遭難そうなんするだけだと思った由紀は、即座そくざにそう決断する。


「ここからアルナさんの村に向かう方向はわかる?」


「はい〜。まずは森にぶつかるまで北って感じですかね〜」


ソフィアは方位磁針を確認して、右正面を指差す。


「北か…」


ソフィアが指す先を見た由紀には、壁のような黒い影が見えていた。


「森ってあれかな…?」


「たぶんそうです〜」


由紀ほどではないが、山岳地帯出身のソフィアにも、うっすらではあるが黒い影は見えていた。


「じゃあ…」


「行きましょ〜♪」


そして二人はそのまま北に進み、あっという間に森と砂漠のさかいにたどり着く。


「軽いアルナさんとはいえ、ラクダは一人乗りの方がやっぱり早いね♪」


「ですね〜」


「で、ここからアルナさんの村はどっちに行けばいいの?」


「ちょっと待ってくださいね〜」


ソフィアは地図を開き、由紀と共にそれを見る。


「…ひとまず森と砂漠の境を東に進んでいけばいいみたいですね〜」


「え〜と、それでそのうち谷にぶつかる感じかな?」


由紀は地図上の海の近くにある乾いた谷を指差す。


「ですね。村はその手前で森に入るみたいです〜」


「夜までに行ける…よね?」


由紀は手綱たずなを引き、ラクダを東に向けつつそう聞く。


「はい〜♪」


「じゃあ行こう♪」


そうして二人は東に進み、日暮れ前に森の中にある村へと到着した。


「さすがソフィアさん、ナイスナビゲーション♪」


「フフッ♪わかりやすくて良かったです〜♪」


二人はアルナが地図に書き加えた場所で砂漠と森の境界から森の中へ入り、そしてその先で、木の上に掛かった橋を見つけたのだ。


「確か…セ・ベッラ・アルナだっけ?」


「ですね〜」


そして、その木の上に上がった二人は、いくつかの橋を渡って大木の上に民家が建ち並ぶ場所に来ていた。


「ソフィアさんって、ムーアさんに翻訳魔法かけてもらってたっけ?」


「はい〜。向かう先が外国でしたから一応かけてもらってます〜」


「そっか〜、やっぱりそうだよね…」


「でも、由紀さんもロシュタニアでシャノンさんにかけてもらってませんでしたか〜?」


「あはは…実は私、ロシュタニアを出る時に翻訳魔法を解いてもらっちゃたんだよね…」


「えぇっ!なぜですか〜?」


「い、いや〜、せっかく騒動が治ったから新婚旅行を楽しもうと思って…」


そう言って、由紀は頭を掻く。

由紀は海外旅行などでも、カタコトの言葉や身振り手振りで、現地の人との交流を楽しみたいタイプだった。


「なんだか色々ややこしくなったから、ロシュタニアではシャノンに翻訳魔法かけてもらってたんだけど、あとは戻るだけたからいいかな〜って思って…」


「もともとロシュタニアの言葉も、私たちの言語に近かったですからね〜」


ロシュタニアで使われている言葉とプラネタリア大陸の共用語は、ゆっくり話せば通じるほどよく似ているのだ。


「で、さっき分かれる前にアルナさんに聞いたら、ラパルパの言葉はロシュタニアと違うって言うし、どうしようかと思って…」


「そういうことなら、私が通訳するから大丈夫ですよ〜♪」


「ごめんね、ソフィアさん。お願いします」


「フフッ♪任せてください〜♪」


そう言って、ソフィアが目の前にある鳥の巣箱を大きくしたような形の小屋の扉をノックしようとしたその時、小屋の裏から飛び出した何者かが、ソフィアと由紀の口を塞いだ。

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