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ご当地ラーメンで異世界の国おこしって!?  作者: 忠六郎
第7章 異世界クレイジーハネムーン編
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第316話 忘れていたこと

そうしてそれから幹太たちは、四人で市場を見て回る。

ちなみに四人に配置は、アルナを真ん中にして幹太とアンナの三人が手を繋ぎ、その後ろにシャノンが控えていた。


「なんか…探せば盗まれたものが全部揃いそうな勢いだな…」


「雪平は向こうの仕入れ値で買うことになっちゃいましたけどね」


「そりゃあっちもお金を払ってたんだからつっても、まぁ納得はいかないわな…」


「私も納得いきません」


強い口調でそういうシャノンは、先ほど雪平鍋を売っていた店の店主とさんざんやり合った後である。


「とりあえず、盗品のセリ市があるってのは驚きだよな…」


「はい。やはりロシュタニアは我が国ほど治安は良くないみたいですね」


と、シャノンは先程の店を睨みながら言う。


「そうですね。俺、シェルブルックに来てから物騒な話なんて聞いたことない気がするんだけど…」


「いいえ、一度だけありましたよ」


「ほぇ?ウチで何かありましたっけ?」


「幹太さんがリーズに攫われた時ですよ、アナ」


「「あぁっ!」」


と、幹太とアンナは揃って声をあげる。


「そういや、そんなこともあったなぁ…」


「ありましたね。

誘拐なんて初めてだったんで、本当にビックリしました」


「あ、あれって初めてだったのかよ…」


「それに私、あの時のソフィアさんが忘れられないんです…」


「えっ?ソフィアさん、なんかあったの?」


幹太はあの日、一緒に働く予定だったソフィアを部屋で待っていた時に攫われたのだ。


「あのソフィアさんが、めちゃくちゃ怒ってたんです」


その時を思い出したアンナは、ブルッと身震いをする。


「私も驚きました。

ソフィアさん、言葉使いがいつもと変わってましたから…」


「えっ!ソフィアさんが?」


と、幹太はシャノンに聞く。


「はい。語尾を伸ばさず話すソフィアさんを見たのはあの時が初めてでしたね」


「殿下、殿下…」


とそこで、アルナが幹太と繋いでいた手を引っ張った。


「なにかな、アルナさん?」


「ソフィアっていうのも殿下のお嫁さんなの?」


「うん。そうだよ」


「どんな人?」


「えぇっと、なんて言うか…のんびりしてて、優しくて、可愛らしい人だよ」


そんな幹太の言葉を隣りで聞いていたアンナは、ニッコリと笑った。


「幹太さんからのソフィアさんの印象って、初めて聞いた気がします♪」


「まぁそりゃ初めて聞かれたし…」


「というより、容姿の説明はしないのですか?」


シャノンは当然、見た目の説明からするのだろうと思っていたのだ。


「あ、そういうもの…?」


「ですよね?」


と、シャノンはアルナに確認する。


「私もそう思ってたけど…そうじゃないのがなんか殿下っぽくっていいかも♪」


「ま、まぁ…ソフィアさんはまだ色々あるんだけどね…」


実を言うと、幹太とってソフィアの一番の印象はエロスなのだが、小さなアルナにそれを言うのはなんとなくはばかられたのだ。


「さて、それじゃあそろそろ食品の方へ行ってみるか…」


「ですね♪行ってみましょう♪」


四人は市場の怪しい場所を抜け、食材を見て回る。


「じゃあ、まずはスープから考えてみようか?」


「そうしましょう♪」


「殿下、スープを作るの?」


「俺たちが作るのは、スープと麺の料理なんだ」


「そうなんだ…」


「アルナさんの国には、何か名物のスープはありますか?」


そう聞いたのはアンナだ。


「えっと…お野菜のスープならある」


「お野菜…お野菜でスープを取るんですか?」


「ううん。スープは色々で具がお野菜なの…」


アルナはそう答えながら、辺りを見回す。


「例えばアレ…」


そう言ってアルナが指差したのは、八百屋らしき店の前に積まれた丸くて小さな葉物の野菜である。


「あれは…芽キャベツ?」


「殿下の国ではそう言うの?」


「うん」


「私たちの国ではヒメビスクっていうの」


「ヒメビクス…なるほど、たぶん厳密には種類が違うのかな…」


幹太は八百屋の主人に声をかけ、芽キャベツによく似たヒメビスクを一つ貰った。


「なんか…ちょっと葉がレタスっぽくもあるな」


「匂いはどうですかね…?」


そう言って、アンナは幹太が手にするビスクの匂いを嗅ぐ。


「爽やかな葉の香りって感じです。

これなら、ラーメンの具にもできそうじゃないですか?」


「確かにスープにも具にもイケそうな感じはするな。

具ならあんかけ…はジャクソンでやったか…」


「殿下とアンナ様、なんかおいしそうなお話してる…」


「お二人はいつもこうですよ」


そう話しながら、四人は食肉を扱う店の前までやって来た。


「…やっぱりスープのメインは鶏ですかね?」


「鶏が良ければそうしようと思ってるけど、アンナは何か意見はある?」


「いえ、私もそう思ってましたから」


二人は肉屋の前で立ち止まり、店先に積み重ねられた丸のままの鶏肉を見る。


「うん。ガラはなんとかなりそうだな…」


「フフッ♪もしかして幹太さん、お肉だけになってたらどうしようって思ってたんですか?」


「うん。だって、もしかしたらロシュタニアの人は丸鶏の鶏ガラのダシなんて使わないかもしれないだろ?」


幹太が前回ホテルでスープを仕込んだ時は、唐揚げなどに使う骨つきのモモ肉でダシを取っていたのだ。


「でも、ロシュタニアに来るまでの間も、けっこう鶏ガラのダシを使ったスープって出てませんでしたか?」


「あ、そういやそうかも…」


全てが辛い味付けのためにわかりにくかったが、こちらの大陸に来てから、アンナは何度か鶏ベースのスープを飲んだ記憶があったのだ。


「俺にゃ辛いって感想がほとんどだったからなぁ〜」


「フフッ♪幹太さん、実は辛いの苦手ですよね♪」


「殿下も舌がお子様なの?」


「ち、ちがうって!あえて食べないってだけで苦手じゃないよ!」


と、幹太は珍しく口を尖らせて言い返す。


「フフッ♪それを苦手って言うんですよ♪」


「あ、いや…まぁそうなるのか…?」


「私と一緒♪」


アルナは嬉しそうにそう言って、幹太と繋いだ手にキュッと力を込めた。


「そういえば…私の国でもお肉でスープを作ることがある…」


「おっ!それはぜひどんなものか聞いてみたいな!」


「ですね♪アルナさん、教えていただけますか?」


「うん。えぇっと…」


アルナは肉屋をキョロキョロと見回しながら、ゆっくりと話し始める。


「私の村は深い森の中だから、あまり牧畜にも向いてなくて…」


「なるほど…そういうこともあるんだ」


「だから、たまに狩りに出かけて野生の動物を狩ってくるんだけど…よく捕れるのがハバーリって動物で、煮たり焼いたりして食べた後、骨でスープを取るの…」


「お、今、イノシシって聞こえたな…」


「ムーアの翻訳魔法ですね♪」


「…どういうこと?」


「つまり、アルナさんの村で捕まえる動物と同じのが俺の故郷にもいるってとこさ」


「そうなんだ。

とにかく、そうやって一匹のハバーリを余す所なく食べるの…」


そう言って、アルナはなぜかため息をついた。


「残念ながら、ここにはないみたい…久しぶりに食べれるかもって思ったのに…」


「他にもお肉屋さんはありますし、ここでは鶏だけ買っていきましょう。

ご店主さん、この鶏肉はロシュタニア産の鶏肉ですか?」


アンナは店先の鶏肉を指差しながら肉屋の女主人に聞く。


「ハハッ♪そうだよ。何せ、エサまでロシュタニア産だからね♪」


「えっ!エサまでですか?」


「そうだよ。砂漠の真ん中にあるとはいえロシュタニアは湖の国だから、ある程度の作物は収穫できるのさ」


「あの…例えば、その作物ってなんですか?」


そう聞いたのは幹太だ。


「そりゃ一番はトウモロコシだよ♪」


そう言って、女主人は隣りの店にあるトウモロコシを手に取り幹太に渡す。


「わっ!こりゃ立派だ!

これは人用なんですよね?」


「もちろんさ♪」


「でも、トウモロコシ…って、ラーメンに使えます?」


「えっ!アンナ…?」


まさか質問に、幹太は信じられないようなものを見るような目でアンナを見る。


「あ、あのアナ…日本の屋台でもトウモロコシは使ってましたよ…」


あまりの出来事に、シャノンまでが思わずそう言う。


「ほぇ?日本の屋台…?じゃ、じゃあ姫屋では?」


只事ただごとではない二人の様子を見て驚いたアンナは、ちょっぴりビビりつつそう聞いた。


「初っ端のサースフェー島で使ったんじゃなかった?

もちろん生のじゃなくて缶詰だけど…」


幹太がそう言った瞬間、トウモロコシを凝視していたアンナの脳裏にある物が浮かんだ。


「あぁ!コーン!コーン缶ですか!?」


「そうそう。それだよ」


「さすがに私でもわかりましたよ」


「言われてみれば、私、味噌ラーメンにめっちゃ入れてました♪」


「まぁこっちに来てからぜんぜん使ってないもんなぁ〜」


「姫屋のメニューにはないですもんね」


「じゃあこれも殿下のお料理に使う?」


と、アルナは幹太の持つトウモロコシをつつきながら聞く。


「まだわからないけど、とりあえず買っていこう」


そうして幹太たちはひとまず気になる食材を全て買い、ホテルに戻った。

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