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ご当地ラーメンで異世界の国おこしって!?  作者: 忠六郎
第7章 異世界クレイジーハネムーン編
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第293話 ノームの港

「思った通り…バレずに到着しましたね」


「…はい」


そしてその日の深夜、アメリアとピナは久しぶりに故郷とつながる大地を踏み締めた。


「この港も久しぶりね〜♪」


と、二人の前で踊るようにスキップしているのはオルガだ。


「ぜんぜん変わってないけど♪」


サースフェー島を出てから丸一日、連絡船はアビシニア大陸のノームという港に到着していた。


「オルガ様…この船にはアンナ様たちもいるのですから…」


「フフッ♪大丈夫よ。大きな馬車の人たちはもっと時間がかかるんだから♪」


ここにはいないミンとリンは一足先に船を降り、この街に来る時にオルガが常宿としている宿泊先に向かっている。


「…けど、アメリア様、さっきのオルガ様の話って本当でしょうか?」


鼻歌を歌いながらスキップするオルガを見ながら、ピナはそう聞いた。


「信じられませんか?」


アメリアは何も答えずにそう聞き返す。


「…いいえ。なんとなく、私もアメリア様の言う通りな気がします♪」


そんなアメリアに、ピナは首を振ってそう答えた。


「アメリア〜!ピナ〜!」


「はーい!今行きまーす!」


そしてオルガたちが宿に着いた頃、幹太たち一行はようやくノームの港に降り立った。


「幹ちゃん…気づいてた?」


「あ、あぁ…アレってオルガ様のメイドさんだったよな」


幹太と由紀は、セーラー服姿で船内にいたピナとアメリアを見かけていたのだ。


「でも、なんでセーラー服だったんだろ?」


「…わからないけど、女の子ってセーラ服があったら着たくなったりする?」


「どうなんだろ?私は制服だったから、そうでもないけど…」


由紀と幹太の中学校は、セーラー服と詰め襟の学ランという制服だった。


「そういや由紀って、あの制服似合ってたな…」


「えぇっ!急にどうしたのっ!?」


「いや、ずっと思ってたんだけど、そういや言ったことなかったか?」


「う、うん、初めて。

もしかして…できたら今でも見てみたいとか…ある?」


と、由紀は真っ赤な顔をして聞く。


「…あの、由紀さん?」


そんな由紀に同じく顔を赤くしたアンナが声をかけた。


「はい!なんでしょうアンナ様!?」


「いや、アンナ様って…」


「そうだね!ごめん!」


「今日の宿はどうしますかって話してるんですが…」


そう言うアンナの周りには、若干呆れ顔のソフィアとゾーイとシャノンとクレア、そしてニコニコと笑顔のマルコとハンナがいた。


「フフッ♪最近の由紀さんは油断なりませんね〜♪」


「本当ですよ。船に乗ったぐらいから欲望に際限なしって感じです」


「そ、それは大変申し訳なく…」


というより、ゾーイとアンナが無事に戻ってきて以来、なぜか由紀はずっと幹太にムラムラしているのだ。


「だ、旦那様、私もセーラー服頑張ります!」


「ゾーイさんまでっ!?

違うからっ!そ、そういうことじゃなくて…」


「ん〜?でも〜、昼間に着るわけじゃないですよね〜?」


と、ソフィアは口元に人差し指を当てながら聞く。


「う、う〜ん…ま、まぁ確かに昼間着るのはね…」


なまじ中学生時代に着ていただけに、白昼堂々人前で着るには勇気がいるのだ。


「そうなんですか?私、ちょっと着てみたいですけど…」


「わたしも着てみたいです〜♪」


日本に行った時にセーラー服の学生たちを見ていたアンナとソフィアは、以前からそう思っていたのだ。


「う〜ん、アンナには貸せる…かな?」


由紀は自分と身長を比べるように、アンナの頭の上と自分の胸元に手のひらを当てる。


「やたっ♪っていうか…やっぱりこっちに持ってきてるんですね」


「残念です〜」


芹沢家お嫁さんズの中でサイズ的に中学時代の由紀のセーラー服が着れるのは、アンナとゾーイぐらいなのだ。


「ずるい!私には?」


「クレア様にはブレザーの方をあげましたよね?」


「あ、そうだったわね。最近、着慣れちゃってて忘れてたわ…」


由紀の高校時代の制服は今、クレアの普段着になっている。


「そのせいでクレア様、ウチの高校で謎の美少女って噂になってたからな…」


「うん。卒業した私たちまで噂が届くなんて相当だよね」


「そういえば…向こうで何度かクラスはどこって聞かれたわ」


「…それよりも今は宿です」


そう言ったのはシャノンだ。


「シャノン、お二人が見かけたメイドさんたちはどうするんです?」


「どちらにせよロシュタニアに向かっているのですから、メイドたちのことも後回しでいいでしょう」


「わかりました。でしたらひとまず宿を探しましょう」


そうして幹太たち一行は、深夜のノームを歩き始める。


「…なんか、やっぱり違う大陸って雰囲気だな」


十メートルほどの幅のある赤土の道を、由紀と並んで歩きながら幹太はそう呟く。


「だね。シェルブルックとかリーズが私たちでいうヨーロッパなら、こっちは…中東って感じかな?」


「うん。建物は建物はまだ石造りだけどな…」


「文化的にはどっちの大陸も同じぐらい?」


「だな。あのさ、ゾーイさん…」


「はい」


「今は涼しいけど、昼間もこうなの?」


「少し暑くなりますけど、ここは昼間でも快適だと思いますよ」


「良かった…」


「フフッ♪幹ちゃん、暑いの苦手だもんね♪」


そして翌朝。


「あ、あのゾーイさん…?」


「はい?」


「…昨日、ここはまだ快適って言ってなかった?」


昨晩、あの後見つけた宿の前で幹太はグッタリしていた。


「ほぇ?海風も気持ちいいですし、快適じゃないですか?」


と、海風に髪をなびかせながらそう言うゾーイは確かに涼しげだが、彼女以外の芹沢家の面々は夫と同じくグッタリとしていた。


「な、なんか日本の夏の暑さに似てるんだよ…ムシムシするっていうか…」


と、由紀はTシャツで胸元を扇ぐ。


「わかります。湿気ですよね…」


そう言うアンナも、手で顔を扇いでいた。


「わ、わたし…これ以上暑くなったら死にます〜」


そして高地出身のソフィアは、いつもなら雪のように白い顔を真っ赤にし、白いシャツが透けるほど汗だくになっていた。


「…ハンナは大丈夫かい?」


そう聞いたのは、ゾーイと同じく涼しい顔をしているマルコだ。


「私はこのぐらいなら大丈夫だけど…マルコの国はもっと暑いの?」


「僕らの国はオアシスがあるから涼しいけど、そこに行くまではけっこう暑いよ。

ね、ゾーイ?」


「うん」


「ゾ、ゾーイさんたちが暑がるって…どのぐらいなんだよ…」


「どのくらいって…そうだね、暑すぎて昼間は移動する気がしないってぐらいかな♪」


と、日陰にいるにもかかわらずグッタリとする幹太に、マルコは笑顔でそう言う。


「まぁ夕方ぐらいから涼しくなるから、移動するのはそのぐらいからにした方がいいね♪」


「って、なると夜移動か…ゾーイさん、ロシュタニアってここからどのぐらいかかるの?」


そう聞いたのは由紀だ。


「普通に行けば二日ぐらいですね。

けど…」


「けど…?」


「その内の丸一日は砂漠を移動するので、ちょっと過酷かもしれません」


「砂漠ね…」


ラクロス日本代表で海外の経験がある由紀とはいえ、さすがに砂漠を移動するなどという経験はない。


「…お馬さん大丈夫かな?」


由紀は振り返って自分の馬の首を撫でる。


「ハハッ♪それなら心配いらないよ。あそこでラクダを借りるから♪」


と、マルコが指差す先では、柵で囲われた中から数頭のラクダが顔を出して幹太たちの方を見ていた。


「すごーい!本当にラクダだよ、シャノン!」


「…ですね」


「わっ!見て見て♪舌がムラサキ♪」


「…え、えぇ、本当に…」


シャノンはなぜかこわばった顔でそう返事をする。


「あ!っていうことは、ここにお馬さんを置いていくの?」


と、由紀はゾーイに聞いた。


「はい。ラクダと同じように大切に扱ってくれるので心配はいりませんよ」


「そっか、なら安心だね。

けど、ラクダって馬と一緒の乗り方でいいのかな?」


「どちらも乗ったことのある私たちからしたら一緒だと思いますけど…」


と言って、ゾーイはシャノンの方を見る。


「さすがに私もラクダに乗った経験はありませんけど、由紀さんなら心配いらないですよ」


そうして一行は、ひとまずラクダを借りに向かった。


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