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ご当地ラーメンで異世界の国おこしって!?  作者: 忠六郎
第7章 異世界クレイジーハネムーン編
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第289話 マグロ!ご期待ください!

「アンナお姉ちゃん♪」


「リンネちゃん♪」


早朝のサースフェー島に上陸して早々、アンナは飛びついてきたリンネを受け止めた。


「フフッ♪お久しぶりですね、リンネちゃん♪」


「うん♪アンナお姉ちゃん♪」


「リンネちゃん、元気だった?」


「元気だったよ♪由紀お姉ちゃん♪

皆さんも、サースフェーにようこそ♪」


リンネは両手を広げ、ニッコリ笑って一行を迎える。


「ねぇアンナ…リンネちゃん、なんだか大人になってきてない?」


「えぇ…今、私もそう思いました…」


「どうやらブリッケンリッジでの生活がリンネにとっちゃ良かったみたいでね」


「だな。ますますしっかりしちまったよ」


そう言ったのは、リンネの両親、ルナとニコラだ。


「ルナさん♪ニコラさん♪お久しぶりです♪」


「お久しぶりだね、姫様」


「アンナちゃん、元気だったか?」


「はい♪アンナ元気です♪」


「ハハッ♪何よりだね♪

それに比べて、旦那はどうしたんだい?」


と、ルナはヨロヨロと桟橋を歩いてきた幹太に目を向ける。


「さ、昨晩、色々ありまして…」


「なんだい情けない…ソフィアちゃんだってこんなに元気そうなのに」


そう言って、ルナはお肌がツヤツヤのソフィアの背中を軽く叩く。


「アハァンッ♪」


その途端、なぜかソフィアはビクビクと震えて甘い声を上げた。


「な、なんて声出してんだいっ!?」


「す、すいません…ま、まだ昨夜の名残りがぁ〜」


「昨夜の名残りって…あ、あんたたち…もしかして船の中で…?」


様々な面で新妻の四人よりも女性としての経験が豊富なルナは、ニヤリとしながら由紀にそう聞く。


「あ、あの…私はそんなに…」


「じゃあ幹太があんなにへっぴり腰になってるのは、ソフィアちゃんのせいってわけだね♪」


「はい…幹ちゃん、今朝まで部屋に帰ってこなかったんです…」


「そうかい、そうかい♪ソフィアちゃんはそれであんな声を…」


「えぇ、たぶん…」


「ハハッ♪まぁ新婚ならそんなこともあるさね♪」


「はい!今晩は私とゾーイさんの番です♪」


アンナはそう言って、まだ顔色の優れないゾーイの腰に手を回す。


「あ…すみませんアンナ様…」


「大丈夫ですよ♪船は夜出発の予定ですから、それまではまではルナさんのお宿で休ませていただきましょう」


「お、お世話なります…」


「あら?アンナは宿に行くの?」


そう聞いたのは、ハンナとマルコと共に船から降りてきたクレアだ。


「はい。ひとまずゾーイさんを宿に送らないと…」


「へっ?ゾーイはマルコの家じゃないの?」


と、クレアは振り返ってハンナに聞く。


「ウチは掃除しなければなりませんから」


マルコとハンナがこの島を出て、すでにひと月以上が経っているのだ。


「あらそう…だったら、ゾーイを送るのは私が引き受けるからいいわよ。

あなたはあそこでフラついてる幹太の世話でもしてあげなさい」


クレアはそう言って、アンナの反対側からゾーイを支えた。


「ほぇ?いいんですか?」


「そう言ってるでしょ」


「お二人もそれで大丈夫ですか?」


と、アンナは由紀とソフィアに聞く。


「私たちは昨日幹ちゃんを十分独占したからね♪

ね、ソフィアさん?


「はい〜♪」


「了解です。

では幹太さん、宿に行く前にちょっと私に付き合っていただけますか?」


「あぁ、俺もちょっと風にあたりたかったし…」


桟橋の柵に寄りかかっていた幹太は、アンナが差し出した手を取った。


「では、行きましょう♪」


「うん」


そうしてアンナと幹太は、久しぶりに二人っきりでこの島の海沿いを歩く。


「なんだか懐かしいですね〜♪」


しばらく歩いた後、アンナは白銀の髪を風になびかせながら光り輝く水面を見てそう呟く。


「本当だな」


「フフッ♪幹太さん、ちょっと元気になってきましたか?」


「うん。ようやく目が覚めてきたよ」


「フフッ♪でしたら、ちょっと砂浜に下りてみましょうか♪」


アンナは幹太の手を引き、石造りの護岸から砂浜へと下りた。


「そういえば私、前に幹太さんに怒られた後ここに来ました…」


「あぁ、あの時か…」


ご当地ラーメン作りに行き詰まった幹太は、一度アンナに辛く当たってしまったことがあったのだ。


「あの時は本当に悪かった」


「フフッ♪もう大丈夫ですよ。

あの時もさんざん謝っていたたきましたから」


「怒ったっていうか、ありゃ八つ当たりだよ。

アンナは一つも悪くなかったのに…」


「幹太さん、ルナさんにめちゃめちゃ怒られたんでしたっけ?」


「うん。めっちゃ怖かった…」


「思い返してみると、幹太さんと喧嘩っぽくなったのってあの時ぐらいですかね…?」


そう言って、アンナは幹太と繋いでいた手を引き、腕を組んで寄り添った。


「…ちょっと違うけど、リーズの時もそんな感じじゃなかったか?」


「あ!そーです!」


「だろ」


「ですです。私、怒ってました」


「うん」


「だってまさか、誘拐された本人がハツラツとその土地のご当地ラーメンを作っているとは思いませんでしたから…」


「うん。あの時もしっかり怒られたし、だけに反省もしたよ」


「まぁそれもあって、紅姫屋はかなり繁盛してるみたいですけど…」


二人の王女はこの旅の道中で、乾物を作ること以外の情報交換もしていたのだ。


「おぉ…そりゃ何より」


「姫屋もいつも売り切れですし、私たちの世界でもラーメンは人気ですね♪」


「だな。向こうとこっちで味覚が違わなくて良かったよ」


そう話をしながら海岸を歩いていた二人は、懐かしの魚市場へと到着する。


「おぉ!アンナちゃんじゃねぇか!」


そして二人が屋台を営んでいた市場内の広場に着いてすぐ、荷車を曳いた一人の漁師に再会した。


「ハイ♪お久しぶりです、ロンゴさん♪」


「ご無沙汰してます」


このロンゴという漁師の男は、幹太がこの場所に屋台を開いた時の最初の客であり、その後も毎日のように二人の屋台に通っていた常連客でもあった。


「おぉ!そういやニコラに聞いたけど、お前ら結婚したんだってな!」


「はい♪」


「よーし!そいじゃお祝いだ!」


そう言って、ロンゴは曳いていた荷車から大きな木箱を持ち上げて幹太に渡した。


「お、重っ!」


「ハハッ♪そんなに大物じゃないけど勘弁してくれよな♪」


そう言って、ロンゴは漁船のある港の方へと去っていく。


「ロンゴさんお元気そうでしたね♪」


「あ、あぁ…しかしこれ、どうしょうか?」


「この島のお魚なら、ルナさんにお任せするのが一番だと思いますけど…」


「船が出るのは夜だっけ?」


「はい」


「だったら、早いとこ戻るか?」


「ですね。そうしましょう♪」


そうして二人は散歩を切り上げ、大急ぎでルナの宿へと戻った。


「あれ、ルナさん一人ですか?」


「そりゃそうさ。リンネは学校だし、ニコラは小姫屋の準備に行ってるからね」


「ルナさん、私たちロンゴさんからお魚を頂いたんです♪」


「ロンゴから…?あぁ、結婚祝いかい」


「はい」


幹太は木箱を床に置き、蓋を開けた。


「あ、こりゃマグロだ」


「マグロ…幹太の世界じゃそういうのかい?」


「この形はそうだと思います。

たぶんキハダマグロじゃないかな…」


「こっちじゃ黄ビレって言ってなかなか獲れない魚なんだけど…ロンゴの奴やるじゃないか♪」


「フフッ♪確かにヒレが黄色です♪」


と、アンナは尾っぽに付いた黄色いヒレをツンツンとつつく。


「あ、やっぱり幹ちゃんだ♪」


とそこへ、幹太の声に気づいた由紀が客室から出てきた。


「由紀も見てくれよ、これ」


「すごい!これ、貰ってきたの?」


「うん。漁師さんから結婚のお祝いにって」


「わ〜♪だったらありがたく頂ちゃおう♪

けど、マグロってこっちじゃどうやって食べるんですか?」


と、由紀はルナに聞く。


「大きさによって変わるけど、これだけ立派なもんなら香草なんかで味付けして焼くのが普通だね」


「えぇっ!こんなに美味しそうなお魚なのに焼いちゃうの!?」


「焼いちゃうって…あんたらの国じゃ黄ビレを生で食べるのかい?」


「食べます。俺と由紀の国だと、どの種類でもマグロは生食…国の言葉だとお刺身が一番よくする食べ方ですね」


「オサシミね…まぁ今朝獲ってきたのだろうから無理ってわけじゃないけど、この島じゃあんまり生食はしないんだよねぇ…」


「そっか、ずっと暖かい島だし、保冷が日本と違うから…」


「ですね。魔法の氷で冷やせるとはいえ、こちらに保冷車はありませんから」


そう言って、アンナは木箱に入った氷を手にする。


「じゃあちょっともったいない気もするけど、こっち流で食べた方が良さそう?」


「うん。俺もそう思う」


つまり郷に入れば郷に従えということである。


「それじゃあさっそく焼いてみるかい?」


「「「ぜひ♪」」」


そうして急遽、幹太たちの新婚祝いバーベキュー、イン、サースフェー島が始まった。

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