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ご当地ラーメンで異世界の国おこしって!?  作者: 忠六郎
第7章 異世界クレイジーハネムーン編
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第276話 それぞれの行方

一方その頃、由紀とシャノンは、アンナの予想通り先行してジャクソンケイブに着いていた。


「久しぶりだね、ジャクソンケイブ♪」


「ですね」


「こうして見ると、けっこう広い村だったんだなぁ〜」


と、由紀は夕暮れに染まる村を見つめる。


「人探ししているのはあの頃も今も変わりませんけどね」


「フフッ♪そういえばそうだね♪」


「さて…とりあえず今晩の宿を取りましょう」

 

「えっ!ソフィアさんの家は?」


気を使わず仲良くするのが家族の礼儀との信念を持つ由紀は、当然そうするものと思っていた。


「由紀さんはご親戚ですけど…」


「だって、シャノンもアンナのお姉さんじゃん」


「それはそうですけど、今回は事情が事情ですから、ご家族にご迷惑をかけないよう、宿をとりましょう。

いいですか?」


「は〜い」


そうしてシャノンと由紀は、辺りが暗くなる頃にジャクソンケイブ村唯一の宿に部屋を取った。


「とりあえず村の食堂に行く?」


これまたジャクソンケイブ村唯一の温泉施設兼食堂は、幹太たちがご当地ラーメンを作ったことにより、行商人や観光客などがたくさん訪れるようになっていた。


「いえ、それよりも…」


とそこで、由紀はここに来るまでずっと気になっていた事を聞くことにした。


「ねぇシャノン、どうして幹ちゃんたちと別々に行動することにしたの?」


「単純に早くこの村に着きたかったからですね」


「あ〜なるほど…姫屋、重いしね」


「そうなると、馬車の操作に長けたソフィアさんとアナ、それに馬に乗れない幹太さんは必然的に姫屋に乗ってもらうことになりますし…」


こんなこともあろうかと、シャノンと由紀は今回のゾーイ捜索に単騎で参加していたのだ。


「…乗馬の上手な由紀さんには、こちらに来てもらうことになりました」


「けど、先に来たってことはジャクソンに何かあるってこと?」


「もしかしたら、ジャクソンの村長は何か情報を持っているかもしれないんです」


「へっ?それはどうして?」


「ジャクソンケイブ村の村長の奥様は、ゾーイさんの一族出身なんです」


そうして由紀とシャノンは、村長の家へと向かう。


「これはこれはシャノン様と奥方様。

遠いところ、よくいらっしゃいました」


村長はそう言って二人を向かい入れ、リビングへと案内する。


「で、突然どうしたのですか?」


そして席に着いてすぐ、二人にそう聞いた。


「実は芹沢様の奥方様の一人がロシュタニアの人間に攫われてしまって…」


「ほうほう、ロシュタニアですか。

でしたら…おーい!ハーラ!」


村長はシャノンが話を始めてすぐ、奥にいる妻のハーラを呼んだ。


「はいはい…どうしましたか?」


呼ばれて出てきたハーラは、長い白髪を三つ編みにして一つに纏め、ゾーイと同じ赤い瞳をしたおばあさんであった。


「ハーラ、シャノン様がロシュタニア絡みで聞きたいことがあるそうだ」


「ロ、ロシュタニア…でござ、ごじゃりますか?」


「ハーラさん、何かありましたか?」


「い、いえ…ひ、久しぶりに家族の者が会いに来たぐらいで…」


「家族の方ですか?」


「は、はい…」


とそこで、由紀がテーブルの上で震えるハーラの手を優しく掴んだ。


「…ハーラさん、私はアンナ姫様と同じ人の妻です」


「もちろん…あなたが芹沢様の奥方様なのは存じ上げております、ユキ様」


「でしたら、ゾーイさんのことも知ってますよね?」


「はい。そうでなくてもゾーイは家族ですから…」


「そのゾーイさんが攫われたのはご存知ですか?」


「えぇっ!?さ、攫われたって誰…あぁ〜」


由紀の言葉を聞いたハーラはイスから崩れ落ちた。


「ハーラさん!」


由紀は素早く立ち上がり、ハーラの身体を支える。


「シャノン様…それは、ウチのめいの仕業なんですね…?」


「…おそらく」


ハーラはオルガの母の姉、つまり叔母だったのだ。


そしてその頃、シャノンたちから少し後を走っていたミンとリンは、ジャクソンケイブ村の境界内に入っていた。


「姉さん、本当にここでいいの?」


「アメリア様の手紙にはジャクソンに入ってから五本目の小川を越えた場所って書いてあったから、たぶんここであってると思うんだけど…」


急いでアークエイリの街を出た二人は、シャノンたちより遅く、幹太たちより先にジャクソンケイブ村に到着していた。


「もう少し行ったら宿だってあるのに、なんでこんな村の外れで待ち合わせなのかしら?」


「さあ?

アメリア様の決めたことだから何か意味はあるでしょうけど、できたらこの食料品は早く下ろしたいわね」


アメリアからの指示書には、食料品を大量に買ってジャクソンケイブに来るようにと書かれていたのだ。


「さて、どうしようかな〜♪」


そう言って、馬車から飛び降りたミンの横の草むらが揺れた。


「わっ!なにっ!?」


「ようやく来ましたね…」


「「アメリア様!」」


「はい。ミン、リン、あなたたちどこに寄り道してたんです?」


「ア、アメリア様、わたしたち寄り道なんてしてません!

ね、姉さん!」


「そうです!指示されたものを買ってからすぐにこちらに向かいました!」


「…そうですか」


そう言って、アメリアは無表情で二人の頭を撫でる。


「アメリア様、なぜこの場所で待ち合わなんです?」


と、ミンが聞き。


「それにこの大量の食料はどうするんですか?」


と、リンが聞く。


「ミン、リン、それはひとまず置いておいて…」


「「はい…」」


「実はオルガ様とゾーイ様が行方不明なったんです…」


「えぇ!またですか!?」


そう言ったのはリン。


「はぁ…やっぱりオルガ様って、アメリア様がいなくなると好き勝手に行動しちゃうのね…」


ため息混じりに言ったのはミンである。


「確か…オルガ様はこちらの山脈ではなく、平原のルートを通る予定でしたよね?」


と、ミンはアメリアに聞く。


「はい…」


ゾーイを攫った場合、当然マルコが追ってくるだろうとわかっていたアメリアは、彼の予想の裏をかいて自分が囮として山脈ルートを行き、オルガには平坦なルートでラークスに向かうようお願いしていた。


「ですが、途中から約束した街で連絡が取れなくなってしまいました…」

   

「えっと…つまりオルガ様は本来のルートを外れたんですね?」


「えぇ、間違いなく」


なのでアメリアはマルコと同じくオルガなら一番意外な道であるこの街道を通るであろうと予想し、それを追っていたクレアも当然ジャクソンへと向かっていたのだ。


「あのアメリア様…」


「なんですか?」


「馬車はどうしたんです?」


「遅かったので置いてきました」


と、リンの質問にアメリアは即答する。

自分の指示でミンとリンを囮にしたことにより、幹太たちをオルガが向かったであろう山脈越えの街道に引き付けてしまったアメリアは、どうしても彼らより先にジャクソンに着く必要があった。


「あ、あれだけ色々仕掛けをした馬車を置いてきちゃったんですか!?」


「えぇ。ですから、最後の最後で私が囮になるという作戦はもうムリでしょう…」


「メイドはどうしたんです?

オルガ様がご自分で御者をしているわけでわないんでしょう?」


「残念ながらミン…今、お二人と一緒にいるメイドはピナです…」


「「ピ…ピナかぁ〜」」


その名前を聞いた双子が頭を抱えてしまうほど、御者を務めているであろうメイドに好き勝手に行動し始めた主人を止める力はない。


「申し訳ありませんアメリア様。

私とリンがアンナ様たちをこちらに引きつけてしまったからこんなことに…」


ミンはアメリアに頭を下げ、それを見たリンも頭を下げる。


「ミン、リン、あなたたちは謝らなくていいのです。

悪いのは奔放すぎる奥様と、その行動を予測できなかった私なのですから」


「「アメリア様…」」


「とりあえずハーラ様の家に急ぎましょう。

来る途中に私が集めた情報では、ゾーイ様の旦那様も決してこちらに向かっているようですから…」


「「はい!」」


そうして三人のメイドは、由紀やシャノンと同じく村長の家へと向かった。

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