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ご当地ラーメンで異世界の国おこしって!?  作者: 忠六郎
第7章 異世界クレイジーハネムーン編
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第260話 進化する80代

一方その頃、幹太たちシェルブルック組は、大慌てで出立の準備をしていた。


「だいたいさ…これから長旅だっつーのに、なんでギリギリまで屋台やってんの?」


背もたれのあるイスに前後逆に座りながら、亜里沙は幹太にそう聞いた。

当初はクレアやヘルガソン一家と同じ日に帰るつもりだった亜里沙だが、寂しがる由紀を見て、新婚旅行に旅立つ一行を見送ってから日本に戻ることにしたのだ。


「結婚式からこっち、なかなか売り上げが良くてつい…な、アンナ?」


「フフッ♪ですね。あれじゃ休めません♪」


「私…幹ちゃんとアンナは新婚旅行忘れてるんじゃないかなって思ってたよ」


由紀がそう思ってしまうほど、幹太とアンナは毎日イキイキと働いていた。


「けど〜旅の資金は増えましたよ〜♪」


そう言うソフィアは、周りから色々とハミ出している革製の旅行鞄りょこうかばんの上に乗り、どうにか閉めようとしている。

王女のアンナがいるため旅費のほとんどは国から出るのだが、そのお金でお土産や自分達の買い物ができるほど幹太たちの肝は据わってない。


「あ〜そっか、それもあったね♪

っていうか、幹ちゃんたちのお給料ってどうなってんの?」


そう聞く由紀は衛士隊のトレーナーとしての給料をシェルブルック王国からもらい、そして姫屋のバイト代もきっちりもらっていた。


「基本的には売り上げから経費を抜いて、俺とアンナとソフィアさんの三頭分って感じだよ」


「えっ!じゃあ私やゾーイさんみたいに手伝った人のバイト代はどこから?」


「もちろん、それも経費から出してるよ」


「あ、なるほどね」


「フフッ♪ゾーイさんも今ごろ準備してるんですかね〜♪ホッ!」


そう言いながら、ソフィアはどうにか鞄を閉める。


「…ゾーイさんといえば、今日のお昼に連絡を取るって約束でしたね」


若かりし頃にムーア導師が作った魔力通信機により、この城とリーズの宮殿はホットラインで繋がっている。


「フフッ♪幹ちゃんと離れるの寂しそうだったもんね、ゾーイさん♪」


と、由紀はニヤニヤしながら言う。


「俺もまさかあのゾーイさんに、芹沢様も一緒にリーズにいきませんか?って言われるとは思わなかったよ…」


「えっ!ゾーイさん、そんなこと言ってたんですか!?」


そう言って驚いたのはアンナだ。


「そうなんだよ。すっごく思い切って言ってくれた感じだったけど、姫屋があるからさ…」


継続して営業することが大切な屋台の商売で、さすがに結婚式から新婚旅行が終わるまでの期間、ずっと休むことなどできない。


「まぁ四人も妻がいるのですから、徐々にでも言いたいこと言えるようになるのはいいことです。

ソフィアさんも由紀さんも、そうは思いませんか?


「はい♪とってもいいことです〜♪」


「うん♪ゾーイさん頑張ったねぇ〜」


「だよな。なんか…俺も嬉しかった」


「ちょっとあんたたち…私がいるの忘れてない?」


独り身の亜里沙としては、結婚式以来、事あるごとにイチャイチャするバカ夫婦を一刻も早く見送って日本に帰りたい気持ちでいっぱいなのだ。


「ん〜?でも亜里沙、本当に一緒に来なくていいの?」


「んなもんぜってぇ行かねぇわ!」


と、亜里沙は部屋中に響き渡る声で叫ぶ。


「ふ〜ん、なんかもったいない気がするけど…」


「あのな…私だって、普通の旅行ならついていくさ。

でもよ…」


「えっ?けど、新婚旅行だと何かちがう?私なんか…いつも通りじゃない?」


と、由紀は自分を指差して亜里沙に聞く。


「ぜ…」


「ぜ?」


「ぜんぜんいつもとちがうっちゅーねんっ!!」


今度は城中に響き渡る声で、亜里沙はそう叫んだ。


「あのな由紀…お前、いま自分が何してるかわかってる?」


「何って…自分の荷物のパッキングだけど…?」


「ちっがーう!それそれ!その膝に乗ってんのだよっ!」


「膝…あ、幹ちゃんのことかぁ〜♪」


「あ、幹ちゃんのことかぁ〜♪…じゃねーわ!」


と、亜里沙は思いのほか上手く由紀のマネをしながら地団駄を踏む。

そう。

由紀は先ほどから、幹太に膝枕をしながらパッキングをしていたのだ。


「えっと…なんか変かな?」


「そりゃ変だね!なにせパッキングしにくいからねっ!」


亜里沙の見ている限り、最近の幹太たちは一事いちじ万事ばんじこの調子なのである。


「まぁまぁ亜里沙さん、由紀さんは小さな頃からの想いが叶ったというのも…」


「いいや!あんたもかなりおかしいからねアンナ!」


亜里沙は勢いよくイスから立ち上がり、目を血走らせながらアンナの肩を掴む。


「えっ?そうですかね?」


「そりゃそーよ!あんたもその状態はなんなのっ!?」


「ですから私もパッキングを…」


「してねーわ!なにせアンタはさっきから芹沢の足をずぅ〜と揉んでんだから!」


アンナは仰向けの状態で由紀に膝枕をしてもらっている幹太の足を膝に乗せ、先ほどからふくらはぎをプニプニ揉んでいた。


「フフフッ♪皆さんおかしいですね〜♪」


「そう言ってるアンタも相当おかしいんだよソフィアさ〜ん」


ついに亜里沙は床へと崩れ落ち、なに由来かわからない涙を流し始めた。


「ほぇ?ですけど、私もパッキングを〜」


「ならどーしてあんたは芹沢のお腹をマクラにして寝てんの〜?」


「フフッ♪気持ちいいからです〜♪」


パンパンの鞄を閉める作業でちょっと疲れちゃったソフィアは、なぜだか猛烈に幹太の上で一休みしたくなっちゃったのだ。

 

「あ〜そうですか…つか、芹沢もこの状態でなんで普通にしてられんのさ?」


「い、いやさすがにちょっと恥ずかしいよ…」


「…この状態でちょっとって、倫理観ブッ壊れてない?」


「そ、そうかな…?」


「フフフッ♪でも、まだどきませ〜ん♪」


「はいはい」


幹太はソフィアを落とさないように体を起こし、彼女を膝に乗せた状態でなんとかパッキングを始める。


「はぁ…それで?今日はこれからどうすんだっけ?」


と、亜里沙はため息を吐きながらアンナに聞く。


「ですから、旅の準備の後ゾーイさんに連絡です♪」


そうしてその日の午後、幹太たちはムーア導師の部屋へと向かった。


「ム〜ア〜♪アンナ来ました…」


と、アンナが陽気に扉を開けると、通信機のある部屋の中にはムーア導師とシャノン、そしてその二人の前には不機嫌そうなクレアが立っていた。


「…ク、クレア?いつこちらに…?」


驚いたアンナは、思わずそう声をかける。


『…ほらね、やっぱり気づきませんでしたよ、ムーア様』


「ホホッ♪本当じゃのう」


「気づかないって…なにがです?」


「アナ、このクレア様に触ってみて下さい」


シャノンはそう言ってアンナの腕を引き、クレアの肩を触れせようとする。


「あ、あれ?触れませんよ!?」


慌てたアンナはクレアのお腹の辺りを両手で触ろうとするが、空振りするばかりで触れられない。


「これは映像なんです」


「映像?つまり…通信機の機能なんですか?」


「ホホッ♪そうじゃよ、姫様」


「すごいです!これ、ムーアが作ったんですか?」


「もちろんそうじゃよ♪」


「わ〜♪ホントにクレアがいるみたいです♪

これって、クレアからはどう見えてるんです?」


『由紀まではこっちの部屋に立ってるわね…あと、幹太もその部屋にいるの?』


「はい。俺もここにいます、クレア様」


と、幹太は手を挙げつつ由紀に近づく。


『なんか…半分切れてて気持ち悪い感じよ、幹太』


どうやらクレア側の通信画像は、こちらの部屋より映し出す範囲が狭いらしい。


「…さてクレア、ゾーイさんはどこです?」


そこで突然、アンナはなぜか表情を引き締めてそう聞いた。


『あ、あのね…それが、さらわれちゃって…』


「「「えぇっ!」」」


『ごめんなさいっ!その…警備の隙をつかれたみたいで…』


「…クレア、詳しく話してください」


幹太や他の妻たちとは違い、アンナは目の前に立っているクレアの様子から、ゾーイに何かあったのだろうと薄々気づいていたのだ。


『私よりも事情がわかる人がいるわ…ちょっとこっちに来て説明してちょうだい』


『アンナ様…』


と、クレアに手招きされて立体映像の中に現れたのは、緊張した面持ちのマルコだった。

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