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ご当地ラーメンで異世界の国おこしって!?  作者: 忠六郎
第6章 四人の花嫁編
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第239話 宣誓式

アンナたちが入場する少し前、ビクトリアに引きずられるようにして祭壇に上がった幹太は、参列客の多さに圧倒されていた。


『シャノンさんとムーア導師がいる…』


視線をさまよわせていた幹太は、祭壇の上に杖を持ったムーアと紫のドレスを着たシャノンが座っているのを見つけた。


「私が司祭をやることになったからな、シャノンには姉として参列してもらったのだ」


そうは言うが、ビクトリアは最初からシャノンを警備から外す段取りをしていた。


「…シャノンさん、なんだか落ちつかない感じですね」


「フフッ♪ドレスを着るのが久しぶりだからであろう。

まったく…よく似合うのに、もったいない」


「そういえば初めて見ますね…」


「おーい、婿殿♪しっかりするのよ〜♪」


とそこで、同じく祭壇の上の席に座ったジュリア王女が幹太に声をかける。


『ありがとうございます…』


幹太はそれに、呟くように礼を言って頭を下げた。


「よし。そこで止まれ」


「あ、はい」


「おや、少し余裕が出てきたか?」


「そうかもしれません…自分より緊張しているシャノンさんを見たからかな?」


「ならいい。では、花嫁たちの入場だ」


ビクトリアは祭壇下にいる衛兵に合図を送る。


「これよりシェルブルック国王、トラヴィス・バーンサイド様、シェルブルック王国王女、アンナ・バーンサイド様、ならびに花嫁の方々のご入場です!

皆様、ご起立をお願いします!」


そう衛兵が号令をかけ終えると同時にパイプオルガンの演奏が始まり、教会正面の巨大な扉が開かれる。


「気合いを入れろ、芹沢幹太…お前にとって今日は、人生で最も格好つけなければいけない一日だぞ」


ビクトリアは幹太の斜め後ろに立ち、そう耳打ちする。


「…しかし、貴様には礼を言わなけれればならないようだな…」


「礼…ですか?」


「なにせ今日のアンナちゃんは、これまで私が見た中で一番綺麗だ…」


「えっ!じゃあそれって…」


「…さぁ入ってくるぞ」


もちろん先頭はトラヴィスとアンナだ。


「フフッ♪お父様…本当にグラグラしていらっしゃいます♪」


「あぁ…さっきからビクトリアが果てしなく遠くに見える…」


その次に由紀と亜里沙。


「これって本当にお前の結婚式なんだよな…?」


亜里沙は正面にある巨大なステンドグラスを見上げながら、ヒソヒソ声で由紀に確認する。


「い、今話しかけないで…わ、私、どうやって歩いてたっけ…?」


「あ、動画撮りゃよかった…」


「だからちゃんと腕組んでてって!」


そしてその次はソフィアとパット。


「大丈夫かい、ソフィア?」


パットはそう聞きながら、娘と繋ぐ手に少しだけ力を入れる。


「フフフッ♪大丈夫ですよ〜。

お父さんは…大丈夫そうですね〜♪」


「あぁ、あれだけ国王様に気を使っていただいたんだ、しっかりしないと申し訳ないだろ?」


「そうですね〜♪」


そして最後にゾーイとマルコである。


「ゾーイ…お兄ちゃん、ちょっとチビッちゃった…」


「えぇっ!ウソでしょ!?」


マルコは目だけで下半身を確認した。


「…ホントです」


「だからトイレ行ってって言ったのに…」


「まぁ出ちゃったもんはしょうがないさ。

しかし、今日は幸せだなぁ〜♪」


「何が?」


まるで反省してない兄に、ゾーイは呆れ半分でそう聞く。


「そりゃもちろんゾーイの結婚式にこうして出れたからさ♪」


「…お兄ちゃん、私の結婚式に出たかったの…?」


「もちろん♪」


「な、なんでよ…」


ゾーイはいつも自分勝手な兄が、なぜ自分の結婚を見届けたいのかわからなかった。


「ハハッ♪そりゃあれだけ兄弟がいるのに、俺に懐いてくれたのはゾーイだけだったからだよ」


「えっ!あ…そうだっけ…」


そう言われてみれば、幼い頃のゾーイはこの兄と四六時中一緒にいた記憶がある。


「…だから、今日は本当に嬉しい日だ♪」


「もう…これじゃ怒れないじゃない…」


と、ゾーイは真っ直ぐ前を向きながら少しだけ頬を膨らませた。


「怒るなんてとんでもないぞ、妹よ♪

今日はずっと可愛らしくいなきゃ♪」


「フフッ♪そんなのお兄ちゃんに言われなくてもわかってるよ♪」


ゾーイはそう言って、周りからは見えないように兄の脇腹を肘でつついた。


『よし…はじめるか…』


そうして花嫁たちが祭壇の下に到着すると、司祭であるビクトリアが祭壇に向けて祝詞を唱え始める。


「…プラネタリア大陸のおわす、全ての神と人々に…」


そして祝詞を唱えると、再び幹太の後ろに立った。


「では、国王様とアンナ姫は壇上に…」


「うむ。行くぞ、アンナ…」


「ハイ♪」


そうして壇上に上がったトラヴィスから、幹太はアンナの手を引き継ぐ。


「フフッ♪幹太さんも手が震えてます♪」


参列客に背中をむけながら、アンナはそう囁く。


「そ、そりゃ仕方ないだろ…けど、もってことは?」


「はい。お父様もでした♪」


そう言って、アンナは参列客の方へと振り返る。


「では、皆さんも…」


そうアンナが促すと、由紀と亜里沙、ソフィアとパット、ゾーイとマルコが次々と幹太に花嫁を預け、参列席へと降りていく。


「ソ、ソフィアさん…私はこっち?」


「由紀さんは私と一緒にこっちですよ〜」


と、一度繋いだ手を幹太から離した由紀は、戸惑いつつもアンナとは反対側に立ち、その隣にはソフィアが、そしてアンナ隣にはゾーイが立つ。


『わっ!すごい!』


振り返った由紀は、その人の多さに圧倒される。


「では一同、神と王と民の前で宣誓を!」


そうして、左からゾーイ、アンナ、幹太、由紀、ソフィアの順に並んだのを確認すると、ビクトリアは教会中に響き渡る声でそう叫んだ。


「「「「「シェルブルック国王と全ての神々と人々に対して、私たちは支え合い、いつまでも共に生きることを誓う!」」」」」


そうして五人が宣誓し終えると、アンナにとって最大の危機が訪れる。


「では!宣誓の証として、王女の歌を捧げよ!

王女アンナ・バーンサイド!前へ!」


「ハイ!」


しかし、ビクトリアに呼ばれて祭壇の前に立ったアンナは、なぜか柔らかな笑顔を浮かべていた。


「…緑輝く山脈と青く輝く湖に〜♪」


そしてパイプオルガンの前奏が始まり、アンナが歌い出した瞬間、全員が息を呑んだ。


「ウソ…アンナ、本当に上手くなってるじゃない…」


参列席の一番前でそう言ったのは、アンナの歌ヘタを誰よりも知っているクレアだった。


「う、うん…僕も驚いた…」


クレアに続けてそう言ったのは、隣に座るマーカスである。


「アンナお姉ちゃん、すっごく上手だね、お父さん♪」


「あぁ、さすがはお姫様って感じだなぁ…」


「なんだかウチにいた子とは思えないねぇ…」


しみじみとそう話しているのは、この国の名だたる貴族と共に最前列に座らされたヘルガソン一家である。


『いいですよ…アンナ様…そのまま…そのまま…』


そして壇上からは、アンナの努力を間近で見てきたゾーイが、情感豊かに歌い続けるアンナの背中を祈るような気持ちで見つめていた。


「シェルブルック、愛しき我が〜国〜♪」


そうして人々が聞き惚れている間に、アンナは見事にシェルブルック王国国歌を歌い終え、教会での宣誓式は無事に終わった。


「よし、これでひとまずは解放される…」


と、自分たちの結婚お披露目パーティー、つまり披露宴の会場に向かいながら、幹太は額に浮んだ汗を拭う。


「そっか…幹ちゃん、後から来るんだっけ?」


「そう。ローラ様がそうしてくれたんだ」


「わ、私もそっちが良かったです…」


そう言ったのは、一世一代の大舞台を終えてすっかり気の抜けたアンナである。


「さすがにアンナが抜けちゃダメでしょ。

ってことは、アンナと私と…あと誰が残るの?」


「あ、はい。私です」


と、ゾーイが手を上げる。


「ってことは、ソフィアさんが幹ちゃんのお手伝い?」


「はい〜♪」


そう言うソフィアは、すでに十二単衣のような花嫁衣装の帯を解き、あ〜れ〜状態である、


「ソ、ソフィア様、まだ着替えは…」


「フフフッ♪大丈夫ですよ。

ここには女性しかいないそうですから〜」


「ソフィアさん?俺がいるんだけど…」


「夫は別腹です〜♪」


「べ、別腹って…」


「んじゃ、とりあえずソフィアさんも幹ちゃんも頑張ってね!」


「はい〜♪」


「うん。由紀たちも頑張ってな!」


「うん♪」


「はーい、アンナ…頑張ります」


「はい♪」


そうして新郎新婦は、二手に分かれて別々の場所へと向かった。


 


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