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ご当地ラーメンで異世界の国おこしって!?  作者: 忠六郎
第6章 四人の花嫁編
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第236話 親子

「…あ〜まぁ細かいことは聞かない方がいいよな?」


ニコラはなんとなく、幹太の相手が誰が察した。


「は、はい。できれば…」


「よし!そんじゃあもうちょい頑張るとするか!」


「ですね!」


それから二時間ほどで普段の日の一日分近い売り上げを叩き出し二人は、猛ダッシュで王宮へと戻った。


「ハ、ハァッ、ハァッ!」


「おいおい、これから本番だってのに大丈夫か?」


「こ、これだけ走って、ニコラさんは疲れないんですか?」


「うん?あぁ、ぜんぜん平気だな」


そう言って、ニコラは荒く息をする幹太の代わりに部屋の扉を開く。


「よし、そんじゃ俺も部屋に戻…あっ!」


「へっ?ニコラさん、どうしたんです?」


幹太はなぜか扉を開けたまま固まったニコラの横から、部屋の中を覗き込む。


「ト、トラヴィス陛下!」


「あぁ、ようやく帰ってきたか…」


幹太の部屋の中にいたのは、アンナの父、トラヴィス国王だった。


「おはようございます、国王陛下」


と。幹太よりも先に意識を取り戻したのはニコラだった。


「ほらっ、ボーっとしてんなよ、幹太…」


ニコラは頭を下げつつ、隣にいる幹太を肘でつつく。


「お、おはようございます、国王様!」


「あぁ、おはよう」


「国王陛下、ご挨拶したばかりで恐縮なのですが、式の準備があるので私は家族のいる部屋へ戻ります」


ニコラはスッと立ち上がり、部屋へと戻ろうとした。


「ちょっと待ってくれ…確か君は…ニコラだったか?」


「はい。そうです国王陛下」


「このあいだ中庭でアンナと遊んでいる娘さんに会ったが、元気がよくて可愛らしいお子さんだったな」


「ありがとうございます。

アンナ様には娘と仲良くしていただいて、大変感謝しております」


「アンナも以前そちらの世話になったのだろう。

こちらこそ感謝している」


「はい。ありがとうございます」


「ニコラ、もし時間が許すなら…どうかこの場にいてくれないだろうか?」


「おおせのままに」


ニコラはそう返事をして、幹太の後ろに立った。


『そうだよな…国王つっても、この人も父親なんだ…』


同じ娘を持つ者として、このタイミングで婿になる者と二人きりになりたくない気持ちは、なんとなくニコラにもわかる。


「………」


そんな二人のやり取りに見入っていた幹太は、普段はノリの良いニコラの急変に驚いていた。


『こ、この人、同じニコラさんだよな…?』


扉を開けた瞬間こそ怯んだものの、ニコラは国王に失礼のないようその場を立ち去ろうとし、その後も王の問いに簡潔に返事を返すだけだった。


『ちゃんと失礼がないようにしてる…』


たぶんニコラが女性にモテるのは、顔だけでなくこういうところが理由なのだ。


「さて、幹太君…」


「は、はい!」


「まずは…これからは幹太でいいか?」


トラヴィス国王は苦労をしてアンナを城まで送り届け、今までビクトリア王女の粗相を黙ってくれていた幹太を君付けで呼んでいたのだ。


「はい」


「では幹太…キミはご両親を亡くしているんだったね?」


「はい。母は私が幼い時に、父は数年前に鬼籍入っております」


「そうか…」


「あぁ、なるほど…だからか…」


気づけばニコラはそう口にしていた。


「し、失礼しました…」


「いや、いい。

しかしニコラ、君も何か思う所があるのか?」


「…はい」


「それが何か教えてくれるか?」


「では、失礼して…」


ニコラはトラヴィス国王に近づき耳元に顔を寄せた。


「なんと言いますか、幹太を見ていると、なぜか世話焼きたくなるんです。

その理由が今わかった気がしました…」


そして彼にだけ聞こえる声でそう伝える。

確かにラーメン家業では幹太が師匠であるが、その他の部分ではニコラや妻のルナが幹太の世話をしたり相談に乗っていることの方が多い。


「なるほどな、お互い親だからか…」


「ということは、国王陛下も…?」


「ウチの場合は、主に妻たちがだがな」


「あぁ…そりゃ良かった…」


ホッとしたニコラは、思わずいつもの口調でそう呟く。


「良かったとは?」


「アイツ…幹太に優しい両親ができるのだなと思いまして…」


幹太が家族の愛に飢えていることは、彼がサースフェー島にいた頃からニコラもルナもなんとなく気が付いている。

そしてそれは、まだ子供のリンネでさえなんとなく感じていた。


「私も妻も娘も、幹太たちとは家族同然のお付き合いをさせていただいています。

けれど、やはり本当の家族とまではいきませんから…」


「彼に両親…そうか、今日から私に息子ができるんだったな…」


「えぇ、国王陛下。

同じ娘を持つ身としては、羨ましいぐらい好条件の婿かと…」


「…キミもそう思うか?」


「はい。それは間違いなく」


ハッキリとそう答えながら、ニコラは出会った当初の幹太を思い出していた。


『あのときゃ、アンナちゃんの為に必死だったもんな…』


自分も事故に巻き込まれてこの世界にやってきたというのに、サースフェー島での幹太はアンナを無事にこの城に戻すことしか考えていなかった。


『考えてみりゃ…そりゃ惚れて当たり前だな』


東京にいる時から好意はあっただろうが、サースフェー島での毎日が、アンナの中にある幹太への想いをより大きくしたのは間違いない。


「なにより、アンナ様の人を見る目が素晴らしかったということでしょうか…」


「ハハッ♪そうであると私も思っているよ。

おっと、さすがにこれは娘贔屓むすめびいきがすぎるか…」


「いいえ、国王陛下。

我がに対する評価としては、まだまだ控えめかと…」


「「フ、フフッ…ワハハハッ!」」


と、二人の父親は顔を見合わせて笑い合う。

国王であろうがラーメン屋台の店主あろうが、父親である以上、我が娘が一番可愛いのである。


「では、幹太…」


「はい!」


「あの子一緒にいる以上この先も色々とあるだろうが、これからも娘をよろしく頼むぞ」


と、トラヴィスは優しい笑顔でそう言う。

彼にとってビクトリアもシャノンもアンナも変わらず可愛い娘だが、誰より一番心配なのはなにかと騒ぎを起こす末娘のアンナなのだ。


「はい!こちらこそよろしくお願いします!」


幹太はそんな父親に深々と頭を下げてそう答えた。


「あぁ…つ、疲れた〜」


親子の挨拶を終えてトラヴィス国王が部屋を去った後、緊張の糸が切れたニコラはそのまま床にへたり込んだ。


「えぇっ!ニコラさん、そんなに緊張してたんですか!?」


「あ、あったり前だろ!なんてったって国王陛下だぞ!」


「ぜ、ぜんぜんそんな風には…」


幹太は先ほどニコラに憧れたのをちょっぴり後悔した。


コンコン!


とそこで、幹太の部屋の扉がノックされた。


「はい」


「幹太さん…シャノンです。

今、大丈夫でしょうか?」


「大丈夫です。今開けます…」


そう返事をして幹太が扉を開けると、そこにはシャノンではない女性が立っていた。


「ジュ、ジュリア様!?」


「ハーイ♪」


「おぉっ!ヤバっ!」


と、ジュリアの姿を見たニコラは急いで立ち上がる。


「あら、やっぱりお客さんがいたのね♪」


「はい、王妃様。

ですが、式の準備があるので私はこれで失礼いたします。

じゃあ、幹太も後で…」


「は、はい」


さすがに二人続けて王族の相手をするのはしんどかったらしく、ニコラはそそくさと部屋を出ていく。


「さて、幹太ちゃん♪」


「はい!」


「どーして私がここに来たかわかる?」


そう聞きながらジリジリと幹太に近づいてくるジュリアは、先ほどドレスルームにいた時とは違うドレスを着ていた。


「わ、わかりません…」


「ふふ〜ん♪実は幹太ちゃんにこのドレスを見せにきたの♪」


ジュリアはニコニコ笑いながら後ろ手に腕を組み、幹太にグイッと近づいた。


「どう?似合うかしら♪」


「す、すごくお似合いです…」


王妃と二人きりで緊張している幹太が素直にそう言ってしまうほど、光沢のある濃紺のドレスはジュリア王妃によく似合っている。


「フフフッ♪じゃあこれから、もっと素敵な子たちに会ってもらうわね♪」


「へっ?もっと素敵って、まさか…」


「みんなー!入ってきていいわよー♪」


ジュリアの掛け声と共に扉が開き、花嫁たちは部屋へと入ってきた。


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