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ご当地ラーメンで異世界の国おこしって!?  作者: 忠六郎
第6章 四人の花嫁編
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第230話 王女の危機

「あ〜♪美味しかった♪

やっぱり幹ちゃんのラーメン最高〜♪」


その後もおおむね好評だった新ラーメンの試食会後、幹太だけを舗兼住居に残し、その他の面々は王宮へと戻ってきていた。


「うん。ほんっとに美味かったな♪」


二人並んで王宮の廊下を歩きながら、由紀と亜里沙はパンパンになったお腹をさする。


「ダニエル…どうしたの?」


とそこで、メーガンは隣を歩く夫が何か考えごとをしているのに気がついた。


「もしかしたら、あれに気づいたのは僕だけだったのかなって…」


「あれ?あれってなんなの?」


「フフッ♪そうやって聞くってことは、メーガンも気づいてないんだ♪」


「あ♪ダニエル、なんかイジワルしょうとしてるでしょ♪」


「ううん、そんなのじゃなくて…」


「そんなのじゃなくて、なぁに?」


「たぶん今日のままじゃないだろうから、次に食べた時の楽しみにしといた方がいいと思うんだ♪」


「そうなの…?」


「うん♪ですよね、アンナ様?」


と、ダニエルはシャノンと共に一番後ろを歩いていたアンナの方へと振り返る。


「ですね♪ダニエルさんの言う通りまだまだ改良の余地があるみたいです♪」


「アナが改良…ということは麺ですか?」


「ですです。シャノンは今回の麺で何か気づきませんでしたか?」


「先ほどの麺ですよね?」


シャノンは頬に手を当て、改めて先ほど味わったラーメンを思い返す。


「…なにかありませんか?」


「いつもより細い…とかでしょうか?」


「フフッ♪もちろんそれもありますね♪」


アンナが今回の塩ラーメン用に用意した麺は、太さの規格でいうと二十八番という極めて細いストレート麺だった。


「うん。めっちゃ細かったな…ありゃ博多ラーメンぐらいか?」


亜里沙が以前バイトしていた中華レストランは、北海道から鹿児島まで日本全国のラーメンが食べられるのがウリだった。

なので彼女は、ご当地ラーメンそれぞれの麺の特徴を知っている。


「もっと細いですよ♪

ラーメンに使えるギリギリかもって、幹太さんもおっしゃってました♪」


ちなみに、今回アンナが使った切手番手二十八番の麺の太さは1.1ミリ。

一般的にはそうめんの製造に使われる番手である。


「確かに美味しかったけど、なんでそんなに細くしたのよ?」


「そっちの方が麺にスープがよく絡むからですよ、クレア」


「えっ?もっとクネクネの麺の方がよく絡むんじゃないの?」


クレアは太くて縮れている麺の方が、たくさんスープが絡むのではないかと思っていた。


「いいえ、違います。

細くまっすぐな麺の方が、スープから引き上げたときに麺と麺の間にスープがたくさん残るんです」


隙間の多い縮れ麺と比べ、麺同士の隙間が少ないストレートの細麺の方が、毛細管現象により、より多くのスープが麺と麺の間に残るのである。


「そうなのね…ぜんぜんイメージと違ったわ」


「これは私の研究結果ですけど、縮れ麺にするのはたぶん歯応えを良くするためですよ」


どこへ行っても好き勝手にラーメンを作りまくる幹太に鍛えられたアンナは、膨大な試行錯誤の末に太麺や細麺、縮れ麺やストレート麺などの特徴をほぼ完璧に理解していた。


「あんたって本当にラーメン屋さんね…」


そう言って、クレアはため息をつく。


「えぇ、まぁ王女兼ですけど♪」


どうやらクレアの言葉を褒め言葉と受け取ったらしく、アンナは鼻歌を歌いながらスキップを始めた。


「王女兼…ってか、兼とれかかってないか?」


よく考えてみると、亜里沙がこちらの世界に来て以来、一度も王女らしいアンナを見たことはない。


「まぁ芹沢もアンナみたいな子が嫁が来て幸せ…って、ちょっと待った!」


次の瞬間、亜里沙はスキップで自分を追い抜いたアンナの脇腹を両手で掴んだ。


「ほぇっ?亜里沙さん?」


「……」


「あ、亜里沙さん…?どうしました?」


「……」


「ちょ、あ、亜里沙さん…く、くすぐったいです♪」


「こりゃヤバい…」


と、しばらくアンナの身体を触りまくった亜里沙は、思わず天を仰いだ。


「ヤバいって、亜里沙…まさか?」


「うん…アンナ、めっちゃ太ってる」


「「「「「「「「!!!」」」」」」」」


それは当然といえば当然の結果であった。


「そ、そんな…ぜ、ぜんぜんそんな風には見えませんけど…」


この中で唯一の結婚式を経験した女性であるメーガンは、声を震わせつつそう言った。


「いや、ぜったい太ってる…アンナ、体重測ったのっていつ?」


と、アンナの二の腕をプニプニしながら亜里沙は聞いた。


「ウ、ウェディングドレスの採寸の時にですけど…」


動揺しつつもなんとかそう答え、アンナはゴクリと唾を呑む。


「だとすると、約ひと月前ぐらい?」


と、由紀はソフィアに聞く。

由紀の記憶が確かなら、ウェディングドレスの採寸は花嫁全員同じ日に行ったはずだ。


「そ、そのぐらいだと思いますけど〜」


そう言うソフィアも、かなり深刻な表情をしている。


「…ヤバいわね。ゾーイは大丈夫?」


そう聞きつつ、クレアはゾーイの脇腹を摘んだ。


「だ、大丈夫ですよね?」


「…うん♪さすがゾーイ、完璧だわ♪」


お腹の出るウェディングドレスを着る予定のゾーイは、ここのところ誰よりも体型を気にしていた。


「アンナ様…もしかして、ずっと今日のようなペースでお肉を?」


「ですね。最近のアナは、試食と称してチャーシュー食べまくっていましたから…」


そうメーガンに答えたシャノンは、悲しげに首を横に振る。


「そ、そんな…それじゃあもう…」


「いや!ぜんぜん大丈夫ですよっ!」


これまでまったく自覚のなかったアンナは思わずそう叫んだ。


「私ってお肉じゃ太らない体質ですから!」


「そんな体質はねぇ!」


亜里沙は往生際の悪いアンナのシャツをガバッと捲り上げ、いつもならくびれているはずのウエストを剥き出しにした。


「「あ…」」


と、同時に声を上げたのは、アンナの目の前にいたメーガンとダニエルだった。


「ごごご、ごめんなさい!アンナ様!」


「…マズいです、アンナ様…この時期にそのお腹はとってもマズいです…」


真っ赤な顔で振り返るダニエルには見向きもせず、メーガンはアンナのお腹に釘付けだった。


「えっ?えっ?そんなにですか…?」


皆の様子にさすがに不安になったアンナは、恐る恐る視線を下げようとする。


「アンナ、ちょっと来て!」


「えっ!あ、あ、亜里沙さんっ!一体どこへ!?」


「いいから!ちょっとこっちに来なさい!」


「そ、そっちってまさか…?えっ、えっー!?」


亜里沙はアンナの手首を掴み、強引にお針子たちの作業部屋へと連れていく。


そしてそれから一分後、


「ほげー!!!」


という叫び声が王宮に響き渡った。


さらにそれから五分後。


「アンナ…めっちゃデブってました…」


クレア、ゾーイ、ソフィア、由紀、亜里沙、シャノン、メーガンの集まる客間で、アンナはソファーにグッタリともたれかかっていた。


「ヤバいよ…背中のフック、ぜんぜん留まんなかったし…」


アンナに仮縫いのドレスを着せようとした亜里沙は、背中で留めるフックとフックの果てしない距離に絶望した。


「たぶん、今からドレスを修正すんのはムリだろうな…」


「ってことはつまり、このお肉をどうにかするしかないってこと?」


そう言いながら、由紀はアンナの腹の肉を両手で掴んで上下させる。


「だな」


「ん〜?けど、あと一週間ちょっとだよね…」


中学時代から毎日体を動かしまくっていた由紀は、実のところ一週間で人がどれほど痩せられるか知らなかった。


「あんだけバカスカ食べてたんだから自業自得よ!」


「そうです。クレア様の言う通りですよ、アナ」


「…ごめんなさい」


アンナは珍しく本気で反省していた。


「結婚式のラーメンのために頑張ってたんですから仕方ないですよ〜」


と、ソフィアはそんなアンナの頭を優しく撫でる。


「それだけ短期間となると、アンナ様の体調も心配ですね…」


と言ったのは、自身の結婚式にそれなりの努力をして臨んだメーガンである。


「私、結婚式中に何度かクラッとしちゃいましたから…」


「由紀、そういう勉強してないの?」


亜里沙は、由紀が大学でスポーツ解剖学の授業を受けているの覚えていた。


「いくらなんでも、短期間での痩せ方なんてわかんないよ…」


「ゾーイは何か知らない?」


「すいません、クレア様。

私も短期間での痩せ方というのは…」


そもそも実家にいた時も毎日お腹の出る民族衣装を着ていたゾーイは、由紀同様、一度も太ったことがないのだ。


「わ、私!今から走ってきますっ!」


自身を発端とする重苦しい空気に耐えられなくなったアンナは、立ち上がって客間から逃げ出そうとする。


「あ!そうだ!」


しかし、そんなアンナを由紀が羽交い締めして引き止めた。


「ダイエットの先生だったら、うってつけの人がいるじゃん♪」

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