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ご当地ラーメンで異世界の国おこしって!?  作者: 忠六郎
第6章 四人の花嫁編
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第226話 地下室にて

前話の投稿が遅れまして本当に申し訳ありませんでした。

このお話より本編に戻ります。

よろしくお願い致します。

そして翌日。


「ハハッ♪そんじゃあ自分たちのラーメンも頑張らなきゃいけねぇなぁ♪」


ダニエルと再会した幹太は、久しぶりにニコラと二人で姫屋の営業をしていた。

昨日、到着早々この場所に出店していたダニエルたちは、旅の疲れを癒すため今日は休日にしている。


「そうなんです。色々考えて、ほぼ決まってきてたんですけど…」


「お、その感じだとなんか納得してないのか?」


「納得してないわけじゃないんです。

けど、昨日ダニエルさんに会ってから、自分にも何かできるんじゃないかって思っちゃって…」


「あ〜、つまり天才に感化されたってヤツか?」


「そう…だと思います」


「ハハッ♪なるほどなぁ〜」


そう言って、ニコラは姫屋の奥にある御者台へと続く階段に腰を下ろした。


「なぁ幹太、今んとこそのラーメンってどんな感じなんだ?」


「結婚式のラーメンですか?」


「あぁ…」


「基本は俺のあっちの世界で使ってトンコツと鷄のスープで、味はこっちの塩ですね」


「あっちのスープにしたのは何か理由があんのか?」


「由紀と俺の思い出のスープっていうのがありまして…」


「んっ?思い出だから…?

お前にしちゃ珍しい感じがするな…」


「珍しい?それはどういう…」


幹太がそこまで言ったところで、姫屋に家族連れの客がやってきた。


「いらっしゃい!

まぁ話の続きは後にしようか♪」


「ですね」


そしてこの日の営業後、ニコラは幹太を市場近くの繁華街の地下にある接客を伴う飲食店に誘った。


「こ、この街にこんなお店が…」


アンナやクレアのものとは違う夜のお仕事系のドレスを身に纏った女性二人に挟まれた幹太は、挙動不審になりつつ辺りを店内を見回した。


「ハハッ♪やっぱりこういう店は初めてか?」


一方のニコラは、隣に誰もはべらせることなく幹太の向かいに座っている。


「もちろん初めてですよ!」


簡単に言うとニコラは、幹太を異世界版のスナックに連れて来ていた。

ここで大事なのは、二人が来たのはキャバクラではなくスナックというところである。


「ニコラさんはどうなんです?」


「そりゃもちろんあるさ。

サースフェー島の酒場の半分はこんな店だしな」


どうやら漁師の街にスナックが多いのは日本だけではないらしい。


「けどニコラさんって、私たちとはぜんぜん話してくれないのよ♪」


そう言ったのは、幹太の左側に座る黒ドレスを着た女性だった。


「へっ?そうなんですか?」


「うん。いっつも来てすぐカウンターに座っちゃうし、話すのもママとちょっと世間話するぐらいなの」


「そ、それは…なんだかもったいない気が…」


幹太が思わずそう言った途端、カウンターの向こうに立つママ(源氏名、ルミ子)がギロリと彼を睨む。


「ひっ!ご、ごめんなさいっ!」


「ハハッ♪まぁ俺の隣はルナの指定席だからよ。

他の女を座らせるわけにゃいかねぇのさ」


「フフッ♪ニコラさんっていっつもこう言うんだよ〜♪」


楽しそうにそう言ったのは、先ほどの女性とは反対側、幹太の右側に座った赤いドレスを着た女性である。


「ニコラさん、なぜ俺をここに?」


「そりゃ幹太んとこの嫁さんたちはいっつも集まってるみたいだし、たまには男同士飲むのもいいだろ♪」


「はぁ…」


そう言われみれば、幹太が年上の男性と外で飲むのはこれが初めてだった。


「うん…そうですね。たまには男同士もいいかも」


「だろ♪」


そうしてニコラが掲げたジョッキに幹太がジョッキを合わせ、男二人の飲み会が始まった。


「そういえば…昼間言ってた珍しいって、なんのことだったんです?」


「あぁ、それか。

ん〜?そうだな…だったら、まずは幹太、お前もしかして婚約者の誰かとヤッたか?」


「ブッホッ!」


ニコラからの予期せぬ質問に、幹太は飲んでいたビールを吐き出す。


「ヤヤヤ、ヤッたかって何をですかいっ!?」


「そりゃねぇ♪ミナ?」


「うんうん♪一つしかないよね〜エダ♪」


どうやら幹太の右に座る女性がミナ、そして左の女性がエダという名前のようである。


「で、どうなんだよ?」


「ないない!なんもないですっ!」


「えぇ〜!本当か?

俺の予想じゃアンナちゃんあたりと先週ぐらいに…」


「う…いや、ないですって!

だいだいそれが珍しいってこととなんの関係があるんです!?」


「いや、なんつーか…お前今日、自分たちの思い出のスープを使ってとかなんとか言ってただろ?

なんかさ、そんな気持ちになるキッカケがあったんじゃねぇかなって思ってよ」


「へっ?それだけですか?」


「そうだけど…じゃあなんで思い出のスープを使おうなんて思ったんだ?」


「ですから、それは俺たち五人の結婚式に向けて一人一人にまつわる何かを使ってラーメンを作ろうと…」


「あぁ〜!なるほどそういうことか!

だったらスープは幹太と由紀ちゃんで、塩は…ジャクソンだからソフィアちゃんか?」


「はい。そうです」


「そうか。そんじゃ珍しいって感じたのも間違いじゃない…のか?」


「どういうことです?」


「幹太がウチの島に来た時は、ウチの島の人間がどんなラーメンなら食べてくれるかってのだけを考えてただろ?」


「そうですね…」


「売り上げをアンナちゃんとの旅の資金にするって言ってたから、そりゃ最終的には自分たちのためだったんだろうけど、けどよ、色々工夫している最中はそんなことちっとも考えちゃいない様子だったし…」


「……」


「そんなお前が自分たちにまつわるものを使ってなんて言ってるから、珍しいこともあるもんだって思ってよ…」


「……」


「まぁ幹太がやるってんだから、そりゃ自分たちをテーマにしたって美味いもんはできるんだろうけど、なかなか難しそうだよなぁ〜」


そう言って、ニコラはジョッキに残ったビールを飲み干した。


「それにダニエルだったか…?に影響されてさらにラーメンに工夫をしようってんだから、ちょっと心配になってな…」


ラーメン屋の全てを幹太から教わったニコラは、結婚式のラーメンについて話す彼の様子がいつもと違うことに気づいていた。


「…俺、知らない間に煮詰まってたんですかね?」


「そうだな。少なくとも俺にはそんな風に見えたぜ」


「はぁ…今日誘ってくれた本当の理由はそれなんですね?」


そう言って、幹太もジョッキに残ったビールを飲み干す。

やはり二十代そこそこの幹太では、様々な人生経験をしてきたニコラには到底敵わないのだ。


「ハハッ♪そりゃどうだろうな。

正直、幹太とサシで飲んでみたかったって方が強いと思うぜ」


とは言うものの、ニコラがラーメン開発に根を詰めすぎた幹太に息抜きさせてやろうと、このスナック(屋号、ルミ子の地下室)に誘ったことは明白である。


「ねぇキミ、カンタくんだっけ?」


とそこで、胸元がガッツリ開いた黒いドレスのエダが幹太に腕を絡めてきた。


「は、はい…」


「もしかして、キミってアンナ様の婚約者君?」


「はい。そうですけど…」


「あ♪わたし知ってる!たしか…たしか〜セリザワ?そう!セリザワカンタ!」


さらにエダに続いて、超ミニの赤いドレスを着たミナも幹太の腕に自分の腕を絡ませてきた。


「写真も載ってたも〜ん♪」


アンナが他の三人の婚約者と共にセリザワカンタという男性と結婚することは、ローラのバザー以降、大々的に報道されているのだ。


「あ、あの…お二人とも胸が…」


「あら♪ごめんなさい」


「フフッ♪セリザワカンタは胸が嫌い?」


「いいえ!そんなことはないっす!」


気づけば幹太は速攻でそう答えていた。


『こ、このミナって子…なんか広川さんに似てるんだよな…』


そうなのだ。

先ほどから元気に話しかけてくるこのミナという女の子は、金髪で碧眼ということ以外、顔立ちから背格好まで幹太の大切な友人である広川澪に瓜二つだった。


「ねぇねぇ♪セリザワカンタ♪」


「な、なんでしょう?」


「セリザワカンタは四人のお嫁さんの中で誰が一番好きなの?」


そしてその澪と瓜二つな女の子は、アンナ王女の結婚が正式に発表されて以来、この国の誰もが気になっていたことを平然と聞いてきたのである。

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