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ご当地ラーメンで異世界の国おこしって!?  作者: 忠六郎
第6章 四人の花嫁編
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閑話 アンナとクレアと謎の塔 前編

明けましておめでとうございます、

新年一発目は閑話になります。

本年もよろしくお願い致します。

それは幹太たちが日本に帰っていた時のこと。


「東京を案内して欲しい?」


「そうよ!」


ある日の朝、芹沢家の食卓についたクレアは幹太にそう言った。


「あ〜そういや、アンナとは何度かやったな…」


「私も行きたいです〜♪」


元気にそう言ったのは、寝癖つきまくりの頭で幹太の隣に座っているソフィアである。


「う〜ん、けど俺、今日は屋台の組み立てがあるんだよな…」


元々使っていた屋台を向こうの世界に置いてきてしまったため、幹太はこちらの世界で使う屋台をこの家にある部品で組み立てるつもりだった。


「ふぁっふぁら、私が連れて行こうか?」


箸を咥えながらそう聞く由紀は、両親に結婚の了承を得て以来、ほぼ毎朝芹沢家で朝食を食べている。


「おぉ!そりゃ助かる!

けど、由紀は予定ないのか?」


「今日は大学も練習もないから大丈夫」


「そうか。だったらお願いするよ」


「よし、決まりね♪

じゃあクレア様とソフィアさんの他に行きたいのは誰かな?」


「私は幹太さんのお手伝いを…」


「いや、由紀一人じゃ大変だから、できればこっちの世界を知ってるアンナとシャノンさんもついて行ってあげてくれないか?」


「そうですか…でしたら、私もご一緒します♪」


「アナが行くなら私も行きます」


「オッケー♪じゃあアンナとシャノンと…」


「もちろんゾーイも来るわよね?」


「はい、クレア様」


「こっちは全員…だったらもっとみんなで行っちゃおう♪

私、澪と亜里沙にも連絡してみる♪」


そうして由紀が二人に連絡してから一時間後、アンナ、シャノン、ソフィア、クレア、ゾーイの異世界人組と、由紀、澪、亜里沙の日本人組の八人は吉祥寺の南口に集合していた。


「つか、あそこに行くのめっちゃヤダわ…」


芹沢家のメンバーより遅れて駅に到着した亜里沙は思わずそう呟いた。


「う、うん。私もちょっと…」


そしてそれは、亜里沙の隣に立つ澪も同じ気持ちだった。


「あれに混じっても引けを取らないって、やっぱ由紀も相当なんだな…」


「うん。由紀ちゃんもぜんぜん負けてない…」


「おーい!二人とも行くよー!」


と、そんな二人に由紀が声をかける。


「まぁここでビビってでも仕方ないし、とっとと行きますか!」


「う、うん。がんばってみる…」


そうして一行は電車に乗り、ひとまず都心部へと向かう。


「なんか…みんな意外と余裕なんだな?」


あまり戸惑うことなく電車に乗った異世界組に亜里沙はそう聞いた。


「電車はガゴシマ…だったかしら?

あそこで乗ったからね♪」


「クレア様、カゴシマですよ」


「そうそうカゴシマだったわ。ありがと、ゾーイ♪」


「な、なんだか私の方が緊張しちゃう…」


「えっ?それはどうして?」


クレアは可愛らしく首を傾げつつ澪に聞く。


「な、なんでと言われましても…もうその感じが…」


軽く挙動不審になりつつ、澪は横一例で電車の席に座る異世界組に視線を向けた。


「あ、あの…つまり皆さんが綺麗すぎて…」


「皆さんが綺麗…?

ねぇ澪、それには私も含まれてる?」


「もちろんですっ!」


「フフッ♪そう。だったら良かったわ♪」


義理の父と母と兄が向こうの世界でもトップクラスの美形であるクレアは、とびきりの美少女だというにいまいち自分の容姿に自信がないのだ。


「なぁ由紀、最初はどこに行くつもりなの?」


亜里沙はスマホでなにやら検索している由紀に聞いた。


「とりあえず東京で外国人と言えばまずは浅草でしょ♪」


「なるほどね、そりゃそうだわ」


そしてそれから数十分後、一行は浅草の浅草寺に到着した。


「はい♪これが浅草寺です!」


「「「「「「「おぉ〜!」」」」」」


由紀に案内で浅草寺の雷門までやってきた異世界人と東京都民は、お決まりのでっかい提灯を見上げながら歓声をあげた。


「ていうか、なんで二人も叫んでんの?」


「実は私、浅草って今回が初めてなんだわ」


「亜里沙ちゃんもなんだ!私もそうだよ♪」


そう言いつつ、澪はいつも持ち歩いているデジカメで、ポケ〜ッと提灯を見上げたままのアンナたちを写真に収めている。


「この感じは…寺院ですよね?」


「えぇ、アナ。ここにそう書いてあります」


前回日本に来て以来パンフレット蒐集家しゅうしゅうかになってしまったシャノンは、どこから取ってきたのか浅草街歩きと書かれた日本語版と英語版のパンフレットを手にしている。


「ねぇ由紀、あそこで煙を浴びてるのはなに?」


クレアは立ち並ぶ商店の先で、人々が壺のようなものから立ち上がる煙を自分の体に向かって扇いでいるのを発見した。


「あ!私、知ってます!あれはたぶん虫避けですよ、クレア様」


常夏で虫の多いゾーイの国では、香木を燃やした煙を虫除けとして使っていた。


「ち、違うよ、ゾーイさん。

あれは煙を浴びたとこが良くなるって言い伝えがあって…」


「…アンナ、ゾーイ、行くわよ」


「了解です。クレア」


「はい」


由紀の話を遮るようにして、なぜかアンナとクレアとゾーイは煙の立つ壺、正式には常香炉に向かって早歩きしていく。


「二人とも、わかってるわね…」


「えぇ、もちろん…」


「はい。わかってます」


そして常香炉に着いた三人は、真剣な表情で己れの胸に向かい一心不乱に線香の煙を集め始めた。


「ア、アナ…?由紀さんは良くなると言っただけで、大きくなると言ったわけではないんですよ?」


「違いますよ、シャノン。

胸は大きい方が「良い」んです」


アンナはそう言いつつ、目の前にある姉の巨乳をガシッと鷲掴みにした。


「い、いや、それは一概には…ですよね?」


仄暗い瞳で自分の胸を揉みしだく妹の姿に恐怖を感じたシャノンは、この場にいる人間の中で一番おっきいソフィアに助けを求めた。


「フフッ♪そうですね、お三人はもう少し大きい方がいいかもしれませんね〜♪」


なぜ知っているか理由は話せないが、ソフィアは幹太とマーカスが巨乳派であることを知っていた。


「ちょっ!ソフィアさんっ!なにをっ!?」


「よっしゃ!私もやってみっか!」


「えぇっ!ちょっと亜里沙!?」


「あぁ〜!ズルいよ亜里沙ちゃん!だったら私もっ!」


そうして平均よりも大きな三人が呆然と見守る中、アンナ、クレア、ゾーイ、亜里沙、澪の五人は奪い合うように煙を浴びる。


「つ、疲れたわ…」


「えぇ、必死になりすぎましたね…」


しこたま煙を浴びてお参りを済ませた後、一行は浅草寺の隣の商店街にある喫茶店で一休みしていた。


「アンナとクレア様が一番必死だったもんね…」


「由紀さんのような持てる者に私たちの悲哀はわかりませんよ。

ですよね、クレア?」


「…そうね。悔しいけどそれは私も同感」


「次はどこ行くの?」


由紀にそう聞いたのは、この喫茶店に置いてある観光ガイドをパラパラと見ていた亜里沙だった。


「フフッ♪次は私も行ったことないとこにしょうかなって思ってるんだ♪」


「ん〜?そりゃ私と澪もない感じか?」


「うん♪絶対ないと思う」


自分たち三人が親友である以上、あの場所に行くのなら必ず一緒に行くはずだと由紀は確信していた。


「あ♪大体わかったよ、由紀ちゃん♪」


「さすが澪!やっぱり亜里沙とは違う♪」


そう言って、由紀は澪の頭を撫でた。


「フフッ♪そうでしょ♪」


「おいっ!違うはいいけど、やっぱり付けんのだけはやめてくんないっ!」


そうして喫茶店を出た一行は駅には向かわず、スマホのマップを見ながら歩く由紀の案内で隅田川を渡る。


「こうして改めて見ると、やっぱりこっちの世界ってすごいわね…」


橋の下を流れる水面みなもを見つめながら、クレアはそう呟いた。


「船だってあんなに早いしおっきいし…」


「わかります。びっくりしますよね〜」


「そっか、ソフィアもこっち来るのは初めてだったわね」


「はい〜」


「あ〜あ、私が生きている間にリーズをこういう風にできるかしら?」


「クレア様ならできますよ〜♪」


「フフッ♪そうね、そうなるように頑張るわ♪」


「クレア様、今から行くところに着いたらもっと驚くと思いますよ」


「もっとって…?これ以上なんかあるの?」


由紀にそう言われても、すでに九州の端から東京まで驚き尽くしてきたクレアとしては、これまで以上に驚くことの想像がつかない。


「よっしゃー!私もわかった!」


とそこで、一番後ろを歩いていた亜里沙が突然声を上げる。


「フフッ♪亜里沙ちゃん、やっとわかったんだ♪」


「うん。つか、いま雲が晴れたからさ…」


そう言って亜里沙が指差した先には、この国で一番高い塔がそびえ立っていた。


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