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ご当地ラーメンで異世界の国おこしって!?  作者: 忠六郎
第6章 四人の花嫁編
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第206話 二人の秘密

途中、亜里沙視点になります。

「そういや芹沢に言わないで先に来ちゃったな…」


「大丈夫ですよ。さっきまでの亜里沙さんの様子を見ていれば、先に入っていることぐらい予想がつきます」


「まぁそれもそっか♪」


温泉施設に入った亜里沙とシャノンは、さっそく男女の分けられた方の温泉に浸かっていた。


「亜里沙さんは…幹太さんとどのようにして出会ったんです?」


「へっ?いきなりどうしたのシャノンさん?」


「なんというか…幹太さんと亜里沙さんには性別を超越した仲の良さがあるように思えて…」


「あ〜それね♪たまに言われるけど、なんでかな?」


亜里沙はタハハと笑いながらタオルを頭の上に乗せた。


「お二人が出会ってからどのくらい経つのですか?」


「ん〜と、お互い十六の年からだから…五年ぐらいだね」


「由紀さんとも同じ時に?」


「そ。最初は確か…そう!芹沢が私に話しかけてきたんだよ」


女にしては背も高く、金髪で切れ長の瞳の私は、高校の入学式が終わった後、教室で他の新入生たちがぎこちなく会話する中、一人で一番後ろの席に座っていた。


『やっぱり…初っ端から金髪はヤバかったかな…』


髪の色に関する校則もなく、自分で似合うと思って美容室やってもらった髪の色だったけど、なにも入学初日からやらなくてもよかったかなと私が後悔していた時、前に座っていた男子が急に振り返ったのだ。


「えっと…」


振り返ったその男子は、私の胸元に付けられた名札を見た。


臼井うすいさん…でいいの?」


「あぁ…あんたも芹沢せりざわで大丈夫?」


「うん。俺は芹沢幹太。これからよろしくな」


「こちらこそ。

私は臼井亜里沙。それで…芹沢君は私に何か用?」


実はこの時、私はこの芹沢という男子に浮きまくっている金髪についてなにか言われるものと思っていた。


「俺、けっこう背が高いからさ、ちゃんと黒板見えるかなって?」


「へっ?それだけ?」


「うん?あぁ、それだけだけど…」


「…そっか。大丈夫だよ、ちゃんと見える」


「お、なら良かった」


芹沢がホッとした顔で前を向くと、そこに背の小さな女子が立ってた。


「せ、芹沢君…また同じクラスだね」


「おう!改めて宜しくな広川さん!」


芹沢はかなりデカい声でそう言って、ものすっごい笑顔でその女の子の手を握った。


「うん♪」


芹沢に手を握られた女の子は、顔を真っ赤にしながらそれでも両手で芹沢の手を握り返してた。


『おいおいマジか…?マジでこんな分かりやすい子がいんのかよ?』


甘酸っぱい空気を醸し出す二人に気を取られていた私は、たぶん芹沢に会いに来たであろうもう一人の女の子の接近に気がつかなかった。


「つか、この男…なんで気付いてないの?」


「へっ?幹ちゃんが何を気づいてないの?」


「いや、だから…ってあんたは誰?」


私は突然目の前に現れた女の子にそう聞いた。


「私?私は柳川由紀。

ええっと…あなたは臼井亜里沙さん?」


「うん」


「フフフッ♪じゃあこれからよろしくね、亜里沙さん♪」


「……」


と、爽やかな笑顔で手を差し出す女の子に、私は思わず見惚れてしまった。


『コイツもめちゃくちゃ可愛いぞ…なんなんだよ、このクラス』


少なくとも私が今までに会った女子の中で、さっき澪と呼ばれた女の子とこの由紀という子は、間違いなくトップクラスの可愛さだった。


「あの…亜里沙さん?」


「あ、あぁ…こちらこそよろしく。

あと、さんはいらないから」


少し慌ててわたしが握った由紀の手は、その見た目に似合わずなぜかゴツゴツしていた。


「由紀…さんはなんかスポーツやってる?」


「私もさんはいらないよ、亜里沙♪

当たり♪ずっとラクロスやってます♪」


「なるほどね、ラクロスか…」


「で?幹ちゃんが何に気づいてないって思ったの?」


「幹ちゃんって…由紀、あんた芹沢君の彼女かなんかなの?」


「ううん。私と幹ちゃんはお隣同士の幼馴染♪」


そう即答した由紀の様子から、どうやら私の質問は、この子にとって聞かれ慣れたものらしいと気がついた。


「つかアレ、由紀はなんか聞いてんの?」


「アレって…澪?」


「あ、やっぱり知り合い?」


「うん♪澪も幼馴染だよ♪」


「…あの子って、芹沢君のこと好きだよね?」


私のこの頃だけ、芹沢を君付けで呼んでいた。


「…やっぱ亜里沙にもわかっちゃう?」


「うん。残念ながら一目でわかったね。

だって、目がハートなってんだもん」


「フフッ♪そうなの、澪ってね、幹ちゃんの前だとああなっちゃうんだよ♪」


「あれでわからないって…芹沢君ってヤバくない?」


「まぁね、澪は中学からあんな感じなのにぜんぜん…ってその前に…澪ー!ちょっとこっち!」


「はーい?なぁに由紀ちゃん?」


澪と呼ばれたその子は、コテッと可愛らしく首を傾げて私たちの方を向いた。


「えっと…亜里沙、あの子は広川澪ひろかわみおね。

そんで澪、この子は臼井亜里沙さん」


「こ、こんにちわ…広川澪です」


恐る恐る近づいてくるその子を見た私は、一気にこの小さな女の子のことを気に入ってしまった。


「こちらこそよろしく♪

私のことは亜里沙って呼んで♪」


「う、うん。だったら私も澪で…キャ!」


気がついたら私は、この可愛らしい小動物を抱き寄せていた。


「ほぇ?えっとえっと…あ、亜里沙ちゃん?」


「しょ、初対面なのにゴメンね。

けど…もうちょっとこうさせてもらってていい?」


「い、いいけど…」


そうして私は初対面にも関わらず、思う存分、彼女を堪能したのだ。


「あ、亜里沙さん…?」


「わかってる…私、変態っぽいよね、シャノンさん」


「ま、まぁ…あれだけ可愛らしい澪さんが相手ですから、なんとなくわからなくもないですけど…」


「でしょ!あの時の澪ってホンットに可愛いかったんだからっ!」


「そこからずっと仲良しですか?」


「うん。由紀と澪とはそうかな…」


「由紀さんと澪さんだけ?

ということは…幹太さんとはまだそれほど仲良くなかったということですか?」


「そう…だったと思う。

だって芹沢って、無意識に由紀と澪をたぶらかすダメ男に見えたから…」


「それがどうして今のように?」


「ん〜?どうしようかな?

この先は由紀と澪も知らない話なんだけど…」


「秘密は守ります」


「そうだね…シャノンさんなら大丈夫だと思う」


「とはいえ、無理には聞きませんが…」


「ううん。私も誰かに話したかったから、良かったらシャノンさんが聞いてくれる?」


「もちろんです」


「あれは…高校に入学して三か月たったぐらいだった…かな?」


その頃、実際の歳よりも上に見られがちな私は、年齢を偽って夜のバーでバイトしていた。


「やっぱり夜の方が稼ぎがいいな♪

これだから深夜バイトはやめられないねぇ〜♪」


午前0時までのバイトからの帰り道、私は不用心にも給料袋を手に持って、繁華街の裏通りを家に向かって歩いていた。


「お!羽振りが良さそうじゃねぇか!一杯奢ってくれ!」


次の瞬間、私は突然背後に現れたスーツ姿の男に腕を掴まれていた。


「な、なんですかッ!いきなり!?」


「おほっ♪ホラ見ろ、やっぱりオネーちゃんじゃん♪」


「お、おい!離せよっ!」


「おー!お前の言う通り背の高い女の子だったのか!」


「この時間に金持って歩いてるなんて、怪しい女の子だよなぁ〜♪」


私は浮かれて歩いている間に、ニヤニヤといやらしい笑顔を浮かべた三人の酔った男に囲まれていたのだ。


「フヒヒッ♪もしかして…イケナイことして稼いだお金じゃないの?」


そう言った男が私の胸に手を伸ばそうとしたその時、


「やめろ!」


という声が、裏通りに響いた。


「それが幹太さんだったのですか?」


「うん。まだボクシングやってた頃のね…」


いつもの学生服ではなく、トレーニングウェアを着て手にバンテージを巻いた芹沢は、あっという間に三人の酔っ払いを叩きのめした。


「ひ、ひいっ!覚えてろよ!」


「絶対仕返ししてやるからなっ!」


「うぅ…」


情けない捨て台詞を吐いて、芹沢に殴られた二人は気絶した一人を背負って逃げてしまった。


「臼井さん大丈夫?」


「う、うん…ありがとう芹沢君…」


「無事…だよね?なにもされてない?」


私の肩を掴んでそう聞く芹沢は、学校では見たことのない表情をしていた。


「だ、大丈夫…腕を掴まれただけだから…あ…」


「臼井さんっ!」


とそこで、ガクンと力が抜けた私の体を、咄嗟とっさに芹沢が支えてくれた。


「ほ、本当に大丈夫?」


「大丈夫だって…怪我はないから…」


「…わかった。けど、とりあえずこのまま送ってくよ?」


「うん。ありがとう、芹沢君」


そうして私は、しつこく何度も大丈夫かって聞いてくる芹沢におんぶされて家まで帰ったのだ。


「なるほど…それで幹太さんと仲良くなったと?」


「まぁね。そりゃ乙女の危機を救ってくれたわけだからさ」


「しかし…」


「それだけじゃない気がする?」


「はい…私から見て、お二人の絆は単に救われた恩というだけじゃない気がします」


「けど、芹沢と仲良くなったのは本当にそれがキッカケだよ。

ただこの話にはまだ続きがあるってだけ…聞きたい?」


「ぜひ、お願いします」


私が助けてもらった数日後、私と日直だった芹沢が、顔をアザだらけにして登校してきた。


「芹沢君…その顔、もしかして…?」


最初、私は芹沢が先日の男たちに闇討ちでもされたのだと思った。


「いいや。違うよ、臼井さん」


「違うって…だったらどうしたっていうんだよっ!?」


「これはジムの先輩からの餞別せんべつっていうか…最後のスパーリングで…」


「ジムの…餞別…?

芹沢君、ボクシングやめちゃうの?」


由紀の話では、芹沢は将来有望なボクサーだったはずだ。


「あぁ…」


「どうしてよっ!?」


そう叫びながら芹沢の両腕を掴んだ私は、なんだか嫌な予感がしていた。


「い、言わなきゃダメ?」


気まずそうに頬を掻く芹沢は、この期に及んでなんとか誤魔化そうとしてた。


「…絶対ダメ」


ちなみにこの時、私が怒られる子犬のような芹沢の表情にヤラれかけたのは、永遠に誰にも言わないでおく。


「ジム…クビになっちゃった…」


「あぁ…やっぱり…」


私は芹沢の両腕を掴んだまま、がっくりと膝をついた。


「ウチのジム、アマチュアでも素人殴ったらクビなんだって…」


少しだけ寂しそうに芹沢が話してくれた理由は、私の予想通りのものだった。


「アイツら…自分が悪いクセに…」


「うん。同じ会社の人が目撃してたらしくて、あの人たちもクビになったんだって」


「それでなんでっ!?」


「その腹いせにランニングしてる俺の後をつけて、殴られたってジムに知らせたんだと…」


「そんな!私のせいで…」


「そりゃ違う!ぜったい臼井さんのせいじゃない!」


「でも芹沢君は…頑張ればオリンピックに出れるかもって由紀が…」


「ハハッ♪さすがにそりゃ幼馴染の贔屓目ひいきめってやつだな」


「そうだ!他のジムで続けるとかは?」


「アマチュアを真剣に教えてくれるジムって少なくてさ、この近所にはないんだよ。

それにこのことがなくても、そろそろ辞めなきゃいけなかったし」


「な、なんで辞めなきゃいけないんだよ?」


「ウチの親父が病気で、もう…」


「うわ〜ん!」


「ちょ!臼井さんっ!?」


いきなり泣き崩れた私に驚いた芹沢は、慌てて私を支えてくれた。


「あのな臼井さん…どちらにせよ辞めなきゃいけないんだったら、最後に臼井さんみたいに綺麗な女の子を助けて辞められて良かったんだよ」


「ゴメン…ゴメンね、芹沢君…私、なんでもするから…」


「ハハッ♪なんでもか…そりゃどうすっかな?」


芹沢はズルズル鼻水を垂らして泣く私を見て笑いながら、袖で頬を流れる涙を拭ってくれた。


「じゃあ臼井さん、俺のことは芹沢って呼んでくれよ」


「そ、それだったらもう呼んでんじゃんかぁ〜!」


「いや、だから君は抜きでさ」


「君〜?君抜きって、呼び捨てってことぉ〜?」


「そうそう。

幹太でもいいけど、臼井さんに芹沢って呼ばれるのはなんかの気持ち良さそうだし…」


「も〜!じゃあ芹沢ぁ〜!」


「ハイよ、臼井さん♪

やっぱこっちの方がしっくりくるな」


「このつぐないはいつか必ずするからなぁ〜芹沢ぁ〜!」


「ハハッ♪うん。わかったからもう泣くなって…」


それから芹沢は三番目に澪が登校して来るまで、ずっと私をなぐさめていてくれたのだ。

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