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ご当地ラーメンで異世界の国おこしって!?  作者: 忠六郎
第6章 四人の花嫁編
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第194話 二人の夜に…

今週も投稿が遅れてすいません。

怪我して以降、指先がやっと動くようになりました。

引き続きよろしくお願い致します、

「この野菜炒めすっごい美味い!」


「良かったです〜♪」


そしてそれから数時間後、幹太は自身の貞操ていそうの危機にまったく気づかず、ソフィアの作った料理に舌鼓したづつみを打っていた。


「せっかくですからお酒はどうですか〜?」


一応そう聞いてはいるものの、ソフィアはすでにグラスいっぱいにこちらのビールを注いでいる。


「ダ、ダメだよソフィアさんっ!

姫屋が置きっぱなしだから飲めないって!」


「姫屋なら市場で一晩預かってくれるそうですよ〜♪」


そもそもそうでなければ、ソフィアだって酒など勧めない。


「えっ!そうなの?」


「えぇ。そうお願いしてきました〜」


ブリッケンリッジ中央市場の厩舎きゅうしゃは、休日でもおろしの馬車を受け入れるために開いている。

その上、市場の規模も大きいため、王宮の厩舎と変わらない設備が整っているのだ。


「あ〜じゃあ今日はこっちに泊まってもいいのかな…?」


「…ですね〜♪」


「おし。だったらそうしよう」


『やりました〜♪』


ソフィアはテーブルの下で、幹太に見えないように拳を握る。


「あ!でも、アンナたちに連絡…」


「も、もうしましたよ〜」


幹太の言葉に被せるように言った一言は、咄嗟とっさについたウソだった。

ソフィアこの家に着いてすぐ、通信機の動力である魔石をこっそり隠している。


「そうなの?だったら、ソフィアさんのお迎えは?」


「もうちょっとしてからお願いします〜♪」


幹太がリーズにさらわれて以降、婚約者たちはこの部屋に泊まる許可をローラから得ていたが、幹太自身としてはなるべく彼女たちを王宮に帰した方が良いと考えていた。


「う〜ん…結婚式のラーメン、どうするかなぁ…」


「そういえば、うまくいってないんでしたね〜?」


「そうなんだよ。アンナとクレア様のラーメンを作ってるから時間もなくてさ」


「姫屋もありますからね〜」


「うん。けどまぁ、いくつか案はあるんだけどな…」


「たとえばどんなラーメンなんです〜?」


「そうだなぁ〜たとえば…肉好きのお姫様のために、ブリッケンリッジ名産の豚肉を使ったチャーシュー麺かな?」


王族であるアンナの結婚式にふさわしいラーメンとして、幹太の頭にまず最初に浮かんだのはそれだった。


「ん〜?けど、チャーシュー麺は前にも作ってませんでしたか?」


「うん。本当に焼くチャーシュー麺だな」


焼くという漢字は付いているが、ほとんどのラーメン店の焼豚は、文字通りには焼かずに煮て作られている。


「あぁ!焼きチャーシューの街道ラーメンでしたね〜♪」


「そうそう。そういや最近作ってないな…」

 

こちらに来て最初の旅では、幹太たちはその焼きチャーシューの街道ラーメンを売って旅の資金を作っていたのだ。


「でしたら、ひとまず具はアンナさんの好物を中心に考えてもいいかもしれませんね〜♪」


「うん。おれもそう思ってた。

けど、問題は具じゃなくて、まずスープの味をどうするかなんだよ…」


そう言って、幹太はグイッとビールを飲み干す。


「スープの食材は決めたんですか〜?」


ソフィアはそう聞きつつ、空になった幹太のグラスにビールを注いだ。


「ありがとうソフィアさん。いや、まだだよ」


「っていうことは〜タレも決まってないんですよね〜?」


「うん。

シェルブルックって肉も魚介も美味しいのがたくさんあるし、乾物だって使ったことないのがいっぱいあるから、なかなか決められなくてさ…」


「…ひょっとして、幹太さんは使いたい食材がありすぎて悩んでいるんですか〜?」


「あ〜そうなるの…かな?」


「フフッ♪それじゃあ難しくて当たり前ですね〜♪」


「えっ?」


「まずはもっと身近なことから考えてみてはどうでしょう〜?」


「もっと身近なこと…?」


「たとえばですね…さっき話した、アンナさんが好きだからチャーシュー麺のような感じです〜♪」


「えっと…なら次はソフィアさんの好きなもの…とか?」


先ほど言っていたように、王女であるアンナとの結婚式であるのだから、このシェルブルック王国を代表するようなラーメンでなければならないと幹太は考えていた。


「そーですよ〜♪

幹太さんは私の夫でもあるんですから、ちょっとは私のことも考えていただかないと〜♪」


しかし、現時点の幹太の腕で、海も山も川も街も豊かなこの国を、一杯のラーメンで表現することはまだ難しい。


「まずは国とかじゃなくて、大切な人との大切な日を記念するラーメンを作るってことか…」


「はい♪そうしてくれたら、私もすご〜く嬉しいです〜♪」


だったらソフィアの言う通り、今回は自分たちの結婚式だけのことを考えてラーメンを作ればいいのだ。


「国や王家のためじゃなくて、五人の記念日に相応しいラーメン…」


「たぶん、アンナ様もその方が喜びますよ〜♪

どうでしょうか〜?」


「うん。なんかいけそうな気がする…」


「フフッ♪良かったです〜♪」


そうして幹太とソフィアは結婚式に向けてどのようなラーメンを作るか話し合いながら、それからしばらくの間飲み続けた。


「でしたら、試しにいくつか作ってみないとですかね〜?」


「よっしゃ!いっそのこと帰って試作を…おわっ!」


と、話の途中でいきなり立ち上がった幹太は、フラついてイスの背もたれに手をつく。


「おぉ…ちょっと酔っちゃったかな?」


「フフッ♪そんな状態で帰ったら危ないですよ〜」


そう言いながら、ソフィアは幹太を支えるフリをして背後から抱きつく。


「今日はここで休みませんか…?」


そして、幹太の耳元でそう囁いた。


「あ、あぁ、そうだな…姫屋も心配ないし、そうしようか…」


「フフフッ♪では、そうしましょう〜♪」


バンッ!!!


と、ソフィアがまんまと幹太を寝室に連れて行こうとしたところで、下の階からドアの開く大きな音が響いた。


ダンッ!ダンッ!ダンッ!バンッ!


「幹ちゃんっ!」


十段以上ある階段を三歩で駆け上がり、勢い良く部屋のドアを開けたのは由紀であった。


「へっ?あ…ゆーひゃん?」


「チッ……ゆ、由紀さん、そんなに急いでどうしたんです〜?」


部屋に飛び込んだ由紀が見たのは、明らかに酔っ払った状態の幹太と、その幹太を支えながら、片手で器用に彼のシャツのボタンを外しているソフィアであった。


「ソフィアさん?幹ちゃんに何を…?」


「い、いえ…酔っぱらってしまったみたいなんで寝室に〜」


「てか、二人に連絡がとれなくなったって、ちょっとお城がパニックになってたけど…知ってる?」


由紀はそう言いながら、ユラリと二人に近づく。


「あ、あれ…おかしいですね〜?

私、連絡しませんでしたっけ〜?」


「うん。

それに衛兵さんは市場は休みだって言ってたのに、なぜかお城に姫屋はないし…」


「そ、そうでしたか〜。

と、とりあえず私、下に行って幹太さんにお水を〜」


「フフッ♪ソフィアさん…二階にも水道あるよ?」


「し、下の方が冷たいですから〜」


「そう?だったら、幹ちゃんは預かっとくね♪」


と、由紀は笑顔でそう言ってはいるものの、その目は全く笑っていない。


「ほぇ?ゆーちゃん?」


「で、では〜」


「あ!ソフィアさんっ!お酒飲んでるなら階段に気をつけ…」


と、普段通りに由紀が声をかけた瞬間、ソフィアの向かった階段の方から大きな音がした。


ドガガガッ!ガンッ!


「ソフィアさんっ!」


「グッハッ!」


由紀は酔っ払った幹太を放り投げ、すぐさま階段へと向かう。


「ソフィアさんっ!大丈夫っ!?」


由紀が見た階段の下には、グッタリとしたソフィアが倒れていた。


「そんなっ!ウソでしょ!?」


由紀は涙目で階段を駆け下り、ソフィアに近づいた。


「ソフィアさんっ!ねぇ!大丈夫っ!?」


「は、はい〜大丈夫です〜」


「あぁ…よかった…」


落ちたことに驚いてはいるようだが、どうやら怪我はないようだ。


「どこか打った?頭とかは大丈夫?」


「…どこも打ってないです〜。

私、昔からよく転ぶので自然に受け身を〜」


ソフィアは自分の体を見回しながら、ゆっくりと立ち上がった。


「ごめんね、ソフィアさん。

私が意地悪しちゃったから…」


由紀は涙を拭きながら、立ち上がったソフィアを抱きしめる。


「フフッ♪大丈夫ですよ〜♪

落ちる前の声も聞こえてましたから〜♪」


「うん。とりあえず上に上がれる?」


「はい〜」


そうして由紀はソフィアの背後に周り、支えながら再び二階の部屋へと上がった。


「……」


「ゆ、由紀さん〜?」


「な、なに…ソフィアさん?」


「あの短い間で幹太さんをどうしたんですか?」


「えっと、ソフィアさんの落ちた音を聞いて…」


「聞いて〜?」


「ビックリして投げちゃった…」


そう。

二階へ上がった二人が見たのは、由紀に投げられ、テーブルに激突して気を失った幹太だった。


「ど、どうしよっか?」


「ど、どうしましょう〜?」


「わ、私が来なかったら…ソフィアさんはどうするつもりだったの?」


「ど、どうするって、そんなの〜」


と、そこで二人は、揃って気絶する幹太を見つめてゴクリと息を呑む。


「さ、三人でしちゃいますか〜?」


「えっ!えっ!は、初めてなのにそんなことしていいの…?」


「わ、私も初めてですから…で、できれば由紀さんと一緒に…」


ソフィアは恥ずかしそうにそう言って、由紀の手を握った。


「う、うん。だったら私も頑張ってみるよ!

あ!でも、アンナとゾーイさんには内緒ね!」


「フフフッ♪もちろんです〜♪」


そうしてソフィアと由紀は、片方づつ幹太の足を持って寝室へと引きずっていった。

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