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ご当地ラーメンで異世界の国おこしって!?  作者: 忠六郎
第6章 四人の花嫁編
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第187話 最終決定

一方その頃、幹太の婚約者たちとシャノンとクレアは、久しぶりにアンナの部屋に集まっていた。

唯一この場にいない亜里沙は、不本意な転移の疲れから、すでに与えられた客間で眠っている。


「フフッ♪いよいよ本当に幹ちゃん結婚するんだって感じだなぁ〜」


「えぇ。お母様たちもヤル気満々でしたね♪」


「それでアナ、結婚式はどうするんです?」


アンナたちは数日前、すでに博多の屋台で自分たちの結婚式をどのように行うか話し合っている。

今回のこの集まりは、それについての最終確認の場であった。


「それなんですけど、私、やっぱりゾーイさんの国のお祭り方式が楽しそうでいいと思うんです♪」


「あ♪私も賛成♪」


と、真っ先にアンナの提案に乗ったのは由紀だった。


「私もそれがいいです〜♪」


そう言うソフィアの村でも、結婚式の後に村人が集まりお祭り騒ぎをするのが通例であった。


「ゾーイさんもそれでいいですか?」


「はい。自分の国のやり方なら、ちょっとだけ緊張しなくて済みそうですし…」


「緊張…しますかね?」


地元、しかもほとんどの儀式を実家の中で行うアンナは、本気でそう思っていた。


「むしろある程度は緊張して頂かないと…」


「けどシャノン、なにか緊張するような場面ってあります?」


「…あるに決まってるでしょう」


妹のあまりの能天気さに、シャノンは頭を抱えた。


「さっきお母様たちが言っていたじゃないですか、宣誓の儀式だけは、城の儀式の間でお父様が招待なさった来賓の方の前で行うと…」


「えぇ。それは聞きましたけど…何も特別なことなんてないですよね?」


「「「「「……」」」」」


「それに司祭様だって、ムーアがしてくれるんですよ。

緊張する理由ワケがないです♪」


「…ですから、その全てが特別だと言っているんです」


そう言って、シャノンはゾーイを見るようアンナに促す。


「こ、この王宮の儀式の間って…」


まだ来客扱いのゾーイはその部屋を見たことはないが、これ以上ないほど荘厳そうごんであることは間違いない。


「大丈夫よ、ゾーイ♪

花嫁はただ笑ってるだけでいいんだって♪」


「あの…クレア様、それすらできなそうだから困っているんです」


残念ながら、王女であり普段から人前に出ることに慣れているクレアの感覚はアンナとほとんど変わらない。


「ムーア様に司祭をしていただくなんて恐れ多すぎます〜」


この国の住人であるソフィアにとって、ムーアはトラヴィス国王の次に偉い人なのだ。


「ゆ、由紀さんは大丈夫なんですか〜?」


自分同様、世界は違えど由紀も一般人なはず。

いくら度胸のある由紀でも、少しぐらいは焦っているだろうとソフィアは思っていた。


「うん♪私はちょっと楽しみなぐらいだよ♪」


「えぇっ!本当ですか〜?」


「本当、本当♪

だから一緒に楽しもうよ、ソフィアさん♪」


そう言って、由紀はソフィアと肩を組む。


「ですが、お祭りなんかにして大丈夫でしょうか?」


「なぜです?」


「お祭りということは一般の出店も許可するんですよね?」


「そうですね…」


シャノンに聞かれたアンナは、唇に手を当てて考える。


「…王家で用意するより、そうしてしまった方がいいかもしれませんね」


アンナの頭に浮かんだのは、前回ローラが行ったバザーの光景だった。


「そう言えば…あのローラ様のバザーって、売り上げの中から寄付を募ってたわよね。

あなたたちの結婚式もそうすればいいんじゃない?」


クレアはゾーイと共に、前回のバザーを訪れている。


「いい提案です、クレア♪」


アンナたちの結婚式は、どのような形で行うにせよ各国から人が集まる。

その場で恵まれない子供たちへの寄付を募れば、前回同様かなりの金額が集まるだろう。


「素敵です〜♪」


「はい♪私たちの結婚式がお役に立つのならぜひ♪」


と、先ほどまで青い顔をしていたソフィアとゾーイも、笑顔で手を取り合って賛成する。


「うん。私もそれがいいと思うけど…シャノンは何が問題だと思ってたの?」


由紀がそう言うと同時に、ベットの上にいる全員がシャノンを見た。


「…皆さんはバザーの話まで出たのに、本当に気がつかないんですか?」


「あ…私、わかったかも…」


そう言ったのは、なんとなく身に覚えのあるクレアであった。


「さすがクレア様ですね…」


「うん。だけどもしそうだとしたら、ちょっとどうしたらいいかわかんないわね」


「私もどう対処したらいいか…」


シャノンとクレアは顔を突き合わせながら、かなり深刻な表情をしている。


「もう!めんどくさいですね!

シャノン、ちゃんと言って下さい!」


アンナはそんなシャノンの肩を掴み、ガクガクと揺さぶった。


「い、いいですか未来の奥様方、結婚式はお祭り形式でたくさん屋台が出る。

そして、その場にはあなたたちの夫となる芹沢幹太がいるんですよ…」


「「「「あ!」」」」


というシャノンの一言で、婚約者たちは彼女の危惧することに思い当たった。


「ま、まさか…いくら芹沢様でもそこまでは…」


「甘いわね、ゾーイ。

この間も言ったけど、アイツは誘拐された翌日に嬉々としてラーメンを作り始める奴よ」


「ねぇアンナ…幹ちゃん、いま新しいラーメンを作ってるよね?」


「は、はい。私とクレアのコラボラーメンです…」


「ぜったいやるって言います〜♪」


ソフィアの言う通り、むしろその状況で幹太が屋台をやらないわけがない。


「えぇ〜!どうしよう!?どうするのアンナ!?」


いくら幹太に甘々な由紀でも、王家の結婚式で新郎が屋台を出すのが激ヤバなことぐらいはわかる。


「わ、私が幹太さんが屋台をするのを止める…?」


アンナは口に出してそう言ってみるが、正直まったくできる気がしない。


「む、無理っぽいです…」


「えぇっ!じゃあやらせちゃうのっ!?」


この時、クレアは自分が幹太の嫁でなくて本当に良かったと思った。


「ま、まさかあなたたち…賛成したりはしないわよね?」


嫌な予感がしたクレアは、恐る恐るそう聞く。


「私は一緒にやりますよ〜♪」


嬉しそうに手を挙げたソフィアの村では、新郎新婦が食事を作って村人に振る舞う習慣がある。


「で、でしたら私も…」


そう言うゾーイの国でも、結婚式のお祭りには新郎新婦の親族が大きな屋台を出すのだ。


「ちっがーう!そうじゃないわ!

誰が手伝うとかじゃなくって、そもそも王女の結婚式で新郎が出店をやってるっていうのが問題だって言ってるのっ!」


そんな要らないヤル気を出し始めた親友を、クレアは必死で引き止めようと試みる。


「け、けどクレア様…私は芹沢様がやりたいなら、なんとかやらせてあげたいんです…」


「どどど、どうしょうシャノン!?

私のゾーイがヒモ男を支える彼女みたいになっちゃったわ!」


「申し訳ありませんクレア様。私にはどうにもできません…」


「そんなっ!」


「けど、真剣に考えても幹ちゃんを止めるのは難しくない?

それこそ王妃様に注意してもらうとかしかない気が…」


「お母様ですか…」


考え込むシャノンの脳裏には、楽しそうに屋台で料理をするローラの姿が浮かんでいた。


「…もしかしたら、もうやるしかないのかもしれません」


「…ですよね」


と、諦め気味に言ったアンナも、実はちょっと面白そうだと思っていた。


「まぁそうね…どうせお披露目するのなら、それぐらいあなたたちらしい方がいいのかもしれないわね…」


クレアは苦笑しつつそう言って、ゾーイの頭を優しく撫でた。


「ほぇ?クレア様…?」


「だって、あなたたちの縁はラーメンで繋がったんだもの…」


そうなのだ。

元々こちらの世界の住人であるアンナ、ソフィア、ゾーイと、幹太の縁を繋いだのは間違いなくラーメンなのだ。


「私も幹ちゃんとこのラーメン屋さんには、色々思い出があるしね♪」


もちろん幼馴染の由紀にだって、ラーメンにまつわる幹太とのエピソードはたくさんある。


「それじゃあ、その方向でお母様たちにも相談してみましょう。

あと、幹太さんにも♪」


「うん。けど、幹ちゃんはぜったいやるって言うね♪」


「なんだか本当に楽しみになってきましたね〜♪」


「はい♪ソフィア様♪」


そうして五人の結婚式は、このブリッケンリッジの街全体を巻き込んで行われることが決まったのだった。


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