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ご当地ラーメンで異世界の国おこしって!?  作者: 忠六郎
第6章 四人の花嫁編
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第185話 王宮にて

異世界編、再開です!

「なぁ由紀…」


「な、なにかな亜里沙…?」


「ここって…ぜってぇ日本じゃないよな?」


そう言いながら、亜里沙は目の前にある巨大な王宮を見上げた。


「へい。そうっすね…」


亜里沙からのプレッシャーに負けた由紀は、なぜか舎弟口調に変わる。


「どうすんだよ?」


「へ、へい。ちょっとわっかんねぇっす…」


「またぁ〜?もー!どうすんだよぉ〜これぇ!」


案の定、転移に巻き込まれた亜里沙は、アンナとシャノンの実家であるブリッケンリッジ城に転移してきていた。


「えっと…幹太さんに亜里沙さん、由紀さんとソフィアさん、クレア、ゾーイさん、シャノン、私…」


取り乱す亜里沙から少し離れた場所では、アンナがキチンと全員が転移してきているか数えていた。


「やりました♪転移成功ですっ!」


「成功…って言っていいの?」


「クレア様、とりあえずは全員お城に着きましたし、成功でいいんじゃないですか?」


転移の拍子に尻もちをついてしまったクレアとゾーイは、服についた埃をはたきながらそう話す。


「ソ、ソフィアさん…い、息が…」


と、なぜか寝そべって苦しそうにもがく幹太の顔の上には、ソフィアのお尻が乗っていた。


「フフッ♪くすぐったいです〜♪」


ソフィアはそう言いつつ立ち上がり、幹太の手を取って引き起こす。


「では、まずはお父様にご報告を…」


「アンナぁ〜」


しかし、城に向かって歩きかけたアンナの足に亜里沙が縋りつく。


「お願いだよぉ〜!私を日本に帰しておくれよぉ〜」


「あ、亜里沙さん…」


「大丈夫ですか…臼井様」


ゾーイはダバダバ涙を流す亜里沙に駆け寄り、優しく助け起こした。


「グスッ…ありがとうゾーイさん。

けど…もしかして私、もう帰れないの?」


「だ、大丈夫です!ちゃんと帰しますから!」


「…本当に?」


しょんぼりとしながらそう聞く亜里沙は、これまで幹太が見た中で一番女の子らしかった。


「臼井さん、なんだか可愛いな…」


「あ♪いまさら気付いたの、幹ちゃん?」


「ん〜?気付いたって言うか、普段のの臼井さんって、可愛いってよりもカッコイイって感じじゃないか?」


「あ〜そうだね♪

けど、私と澪の前だとたまぁ〜にああなるよ♪」


「亜里沙さん、とりあえずそれも含めて国王様にご報告しますから、まずは中に入りましょう」


そう言ったのは、皆の荷物を拾い集めていたシャノンである。

どうやら転移した際に、地面に置いていた荷物が魔法陣のあちらこちらに散らばってしまったようだ。


「うん。じゃあ行く…」


「良かったです♪では、お父様に会いに行きますよー!」


そうして日本から帰って来たアンナたち一行は、ようやく王宮へと向かった。


「こ、こりゃスゲェな…」


豪華に装飾された王宮の玄関ホールに入った亜里沙は、思わずそう呟いた。


「ね〜♪すごいよね〜♪」


「ずいぶん余裕じゃん、由紀」


「うん。半年以上いたから、けっこう慣れちゃた」


「そっか…あんたここに住むんだっけ?」


「たぶん…あ!でも、街の方に幹ちゃんが借りてるお店があるから、私はそっちになるかも♪」


「借りてるって…芹沢、もうそんなことまでしてんの?」


「うん♪」


そうこうしているうちに、一行は国王の部屋の前までたどり着く。


「あれ?誰もいませんね…」


普段ならばドアの前に立っているはずの衛兵がいないことに、アンナは気がついた。


「お昼ですから、ローラお母様のところかもしれませんよ、アナ」


「そうですね。行ってみましょう」


アンナたちは、ローラの離れがある城の中庭へと向かう。


「あ!ムーア!」


そして中庭に出たところで、アンナはウロウロと徘徊するおじいちゃんを発見した。


「おぉ!おかえりなさいなのじゃ姫様!

皆さんも無事なようでなによりですな♪」


ムーアは寄ってきたアンナの頭を撫でながら、その場に自分が送った全員と一人がいることを確認する。


「はい♪ただいまです、ムーア♪」


「導師、今日は私たちが出発してから何日後ですか?」


「ホホッ♪ひと月ほどじゃな、シャノン」


「えっ!っていうことは、時間の方は失敗したんじゃないの!?」


「いいえ、クレア。

私は最初からこの時間を狙ってましたよ」


「へっ?そりゃまたなんでよ?」


「実験のためです」


「…ちょっと、それってどうしてよ?」


シャノンが引き起こした事故の巻き添えで転移してしまったクレアとしては、当然、出発直後の時間まで遡ってくれるだろうと思っていたのだ。


「なんとなく、ちゃんと時間経過に則って転移できるか実験しておこうかと…」


「えぇっ!たかがそれだけの理由で!?」


「ハイ♪ちゃんと成功しましたね♪」


と、アンナはどこで覚えたのか、笑顔でサムアップする。


「はぁ…時間のことはもういいわ。

でも、だとしたらお兄様は心配してるわよね?」


すでに国の代表となっているマーカス王子は、たとえ妹のためであってもそんなに長く国を離れられないのだ。


「クレア様、とりあえず通信機で連絡してみるというのはどうでしょう?」


「それだわゾーイ!

ムーア様、帰って早々申し訳ありませんが、通信機を貸していただけますか?」


「ホホッ♪もちろんですぞ、クレア様。

では、ついて来てくだされ」


「はい」


「わ、私も行きます」


そうしてムーア、クレア、ゾーイの三人はムーア導師の研究室へと向かい、残ったアンナたちは予定通りローラの離れに向かった。


「…ローラ」


「トラヴィス…」


クレアたちと別れた一行がローラの離れまでやってくると、やはり小屋の中からは国王夫妻の声が聞こえてくる。


「やっぱりいるたいです♪」


コン!コン!


「ローラお母様〜!アンナ帰ってきましたよ〜」


「「……」」


と、アンナは強めにドアをノックして声をかけたが、相変わらず二人の会話のようなものが聞こえてくるだけで返事はない。


「お父様、お母様、開けますよ〜」


キチンと返事を確認せずに扉を開けたアンナは、その直後、その軽率さを深く後悔をした。


「ローラ…君は今日も素敵だね…」


「フフフッ♪あなたはいつもそう言ってくれるのね、トラヴィス♪」


というのもアンナが開いたドアの向こうでは、トラヴィスとローラが寄り添いながらソファに座り、鼻先が触れそうな距離でイチャイチャしていたからだ。


「お、お母さん…」


実の父と母の激甘シーンを見せつけられたシャノンは、思わず言葉を失う。


「ち、ちがうのよ!シャノンちゃん!」


「ア、アンナ!お前いつ帰ってきたんだ!?」


娘たちからの冷ややかな視線に気付いた二人は、立ち上がって全力で誤魔化そうと試みる。


「だ、大丈夫です…お二人の仲の良いのは、誰にとってもいいことですから…そうですよね、アンナ?」


「はい。お姉様…」


そう言う二人の目は、死んだ魚のようである。


「し、しかし…本当にムーアの言う通りになったな。

アンナ、ムーアにはもう会ったのか?」


「えぇ、つい先ほど。

お父様、ムーアはなんて言ってたんですか?」


「いや…ムーアがあまりにいつも通りなんでな、ちょっとはお前たちのことを心配したらどうだと言ったんだが、帰るのに十分な魔石は渡してあるし、アンナとシャノンが一緒いるのだから心配はいらないと言われてな…」


魔法についてはまだまだ頭の回るムーア導師は、レーダーの魔石を使えば多少人数が増えても安全に帰ってこれると気づいていたのだ。


「だからムーアは、さっきもお庭をウロウロしてたんですね♪」


「それはたぶん徘徊…と、とにかく!その様子だとクレア様たちも問題なく帰ってきたのだろう?」


トラヴィスはそう言って、アンナの後ろにいる六人を見た。


「はい。今はムーアと一緒にリーズに連絡を取りに…」


「そうか。だったら問題なく準備を始められそうだな、ローラ?」


そう言って、トラヴィスは隣に立つローラに笑いかける。


「えぇ。そうね♪」


「あの…準備って一体なんのです?」


バンッ!


「それはもちろん!あなたたちの結婚式よ!アンナちゃん!」


と、勢いよく扉を開けて叫んだのは、この国のもう一人の王妃、ジュリアだった。

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