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ご当地ラーメンで異世界の国おこしって!?  作者: 忠六郎
第五章 始まりの大陸編
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閑話 芹沢家狂想曲 前編

お盆休みということで、閑話を書いてみました。

亜里沙と澪のコンビは、書いていてすごく楽しいです。

よろしくお願い致します。

これはアンナが最初に日本に転移して来てから、しばらく経った頃のお話。


その日、幹太と由紀の同級生である臼井亜里沙うすいありさ広川澪ひろかわみおは、由紀と同じ大学の学食で昼食をとっていた。


「芹沢君、元気かなぁ〜?」


「澪…あんたいつまで芹沢なの?」


と、目の前にあるパスタを弄りながら、若干ウンザリ顔で亜里沙は澪に聞いた。

というのも、亜里沙は昨日も澪が同じ場所で、同じ台詞を言うのを聞いていたのである。


「いつまでって…亜里沙ちゃん、たぶん私、この先ずっと芹沢君だよ」


「マジかぁ〜」


「うん。

だって、芹沢くんより素敵な男の人って会ったことないもん」


「えぇ〜?そんなこと…」


「だって、他に誰かいる?」


「そりゃまぁ…マシな方だとは思うけど…」


「でしょ♪

私、今度芹沢くんに会ったらちょっと頑張ってみるんだ♪」


「頑張るって…一体どうすんのよ?」


「それはこれから考えるんだけど…」


「まぁそうね。芹沢と会う機会も減ってきてるし、頑張ってみたらいいんじゃない」


「ありがとう、亜里沙ちゃん♪

そーだ♪久しぶりに屋台にいってみようかなぁ〜♪」


「そっか…芹沢って毎晩井の頭公園にいるんだったね」


「うん♪ここのとこ大学が忙しくて行けてなかったんだけど、今日はこれから予定もないし」


「私も最近は行ってないな…けど、噂は聞いたよ」


「噂?」


「なんかすっごい綺麗な子とお店してるって…」


「….え?」


「しかも、それが由紀じゃないんだってさ」


「えぇっ!本当にっ!?」


「あぁ、私もこないだ芹沢の仲良かった男子に聞いたばっかだけど…」


「亜里沙ちゃん!私、ちょっと行ってくるっ!」


「えぇっ!今から!?」


「当たり前でしょ!」


「いや、あ、明日で…あ〜行っちまった…」


と、元体育会系水泳部の筋力を解放した澪は、一瞬で学食の向こうに消えていった。


「ハッ、ハァ、ハァ…こ、こんなに急ぐなら、どうして直接来なかったのよ…?」


そしてそれから数十分後、澪と亜里沙は井の頭公園前の幹太の屋台にやって来ていた。

同じ吉祥寺にある大学から全力で走り出したにもかかわらず、二人が井の頭公園に来るのにここまで時間がかかったのにはワケがある。


「だ、だって、ちゃんと着替えたかったんだもん!」


澪は今、勝負服であるヒラヒラのピンクのブラウスと黒のショートパンツに着替えていた。

大学を飛び出した澪がまず向かったのは、三鷹にある自宅だったのだ。


「それに…亜里沙ちゃんだって着替えられたから良かったでしょ?」


「ま、まぁそうだけどさ…」


先ほどまでクラッシュした黒いデニムと黒のロックTを着ていた亜里沙は、女性らしいデザインの青いVネックのTシャツに着替えている。

これは澪について行くために猛ダッシュを強いられた亜里沙が、汗まみれになってしまっために彼女に借りたものだった。


「そうだ!芹沢はっと…」


と、どうにか呼吸を落ちつかせた亜里沙は、普段幹太が屋台を出している広場を見た。


「お、いるいる♪」


「うん。いるね、芹沢君♪」


そこには、いつものように開店準備をしている幹太の姿がある。


「ん?一人じゃね?」


「うん、一人…あっ!亜里沙ちゃん!下!下!」


「うん?下?…って、うっわ!すっごっ!」


澪が指差す方を見た亜里沙は、思わずそう叫ぶ。

実は開店準備をしている幹太の後ろに、しゃがんで作業をしている女の子がいたのだ。

その女の子はぞうきんで屋台を拭きながら、笑顔で幹太と話をしている。


「ホントにめちゃくちゃカワイイじゃん…」


「あ、あぁっ…」


「おい、澪!大丈夫かっ!?」


と、亜里沙は気を失いかけた澪の頬をペチペチ叩く。


「亜里沙ちゃん、わ、私…もうダメかも…」


「ハハッ…まぁそりゃそうなるか…」


しゃがんだ姿勢から立ち上がった女の子は、透き通るような銀髪に青い瞳をしていた。

そして彼女が着ている黒いTシャツとデニムのタイトスカートからは、スラリと長い手足が伸びている。


「しっかし、マジで綺麗な子だな。でも、まさか外人だとは…」


「うん。キラキラして綺麗な髪だし、それにすっごい細い…」


「ありゃもしかして妖精か?」


亜里沙がそう疑うほど、幹太の隣にいる女の子は神秘的な魅力に溢れていた。


「そういえば、芹沢って洋物好きって話が…」


と言いかけた亜里沙の肩を、澪が思いっきり掴んだ。


「イダダダッ!ちょっと澪!何してんの!?」


「…なんで亜里沙ちゃんがそんなこと知ってるの?」


そう聞く澪の瞳孔はガン開きである。


「いや、あたしゃ由紀から芹沢の部屋でそんな本を見つけたって相談を…」


「やっぱり…亜里沙ちゃんも芹沢君が好きなんだ。

まさか、その金髪って…?」


「どっちも違うわっ!

つーか、質問したならちゃんと聞きなさいよっ!」


「ご、ごめんね。ちょっと取り乱しちゃった…」


「はぁ…それで、どうするの?」


「どうって?」


「芹沢に会うの?」


「えっ!もちろん会うけど…なんで?」


「そっか、あんたはアレを見てもめげないのね…」


そうして澪と亜里沙は、暖簾を掛けたばかりの幹太の屋台を訪れた。


「よっ!芹沢!」


「せ、芹沢君…こんばんわ」


「お!臼井さんに広川さん、いらっしゃい」


まだ開店したばかりということもあり、二人はカウンターの真ん中に腰掛ける。


とそこで、


「いらっしゃいませ♪

幹太さんのお知り合いの方ですか?」


そう聞きながら、アンナが二人の前にお冷を置いた。


「そうです。私たちは芹沢の同級生ってやつで…な、澪?」


「……」


どうやら亜里沙の言葉は澪の耳に届いていないらしく、彼女は口をポカンと開けたままアンナを見つめている。


「広川さん?」


「…は、はい!なにかな芹沢くんっ!?」


「大丈夫?暑い?」


「だだだ、大丈夫でっしゅ!」


「フフフッ♪私が気になりますか?」


と、アンナは仕事の手を止めずに澪に聞く。


「ご、ごめんなさい…とっても可愛い人だなと思って…」


「ありがとうございます♪」


そう返事をするアンナは、もうすっかり営業スマイルを覚えていた。


「ふぁ…」


そんなアンナの笑顔に、思わず澪は見惚れてしまう。


「そっか、広川さんたちは知らなかったよな。

この子はアンナ。

なんていうか…そう、海外から留学してきたんだよ」


幹太とアンナはいざという時のために話し合い、そういうことにしていた。


「アンナ、この二人は広川澪さんと臼井亜里沙さん。

俺と由紀の共通の友達なんだ」


「アンナ・バーンサイドです♪

アンナって呼んで下さい♪」


「あぁ、よろしくアンナ。

私のことは亜里沙って呼んで♪」


「わ、私も澪って呼んでください!」


「ハイ♪アリサさんにミオさんですね♪

よろしくお願いします♪」


そう言って、アンナはカウンター越しに手を差し出した。

亜里沙はその手を握りつつ、さらに話を続ける。


「なるほどね、留学かぁ〜。

アンナはどっから来たの?」


「シェルブルック王国という…」


「た、確か北欧の小さな国だったよな!アンナ!」


「あ、ハイ!そうでした!」


もちろんこれも、あらかじめ決めておいた設定である。


「シェル…?なんだって?」


「そうなんだ。北欧の…」


と、アンナの返事を聞いた澪はなぜか考え込む。


「…アンナちゃんは芹沢君とどういう関係なんですか?」


「えぇっ!み、澪!?」


それはいざとなったら思い切りのいい、澪ならではの質問であった。


「私と幹太さん…ですか?」


「う、うん」


「それは…難しい質問ですね」


「そ、そうなんだ…」


そうなのだ。

この時のアンナは、幹太への好意が恋なのだとまだ気づいていなかった。

明確に幹太を好きだと言う想いはあるものの、それは恋愛というより、いつも優しい彼に対する好感と捉えていたのだ。


「あえて言うなら、師匠と弟子…と言ったところでしょうか?」


「ハハッ♪まぁ最近はそんな感じだよな」


「「はっ?」」


そんなまさかの答えに、澪と亜里沙は声を揃えて驚く。


「つーことはなに?

アンナはラーメン屋さんの修行してるってこと?」


「ハイ♪」


「ウソ…だろ…?」


言っちゃ悪いが、亜里沙には後光が差しそうなほど美しい目の前の女の子が、ラーメン屋という汗と油にまみれるような仕事をわざわざ選ぶとは、とてもじゃないが思えなかった。


「…まさか芹沢、日本に来て右も左もわからないアンナをダマして…」


そう思った亜里沙は立ち上がり、幹太の胸ぐらを掴んだ。

幼い頃から現在まで空手を習っているマイルドヤンキーの亜里沙は、卑怯者には鉄拳制裁と決めている。


「ダマしてない!ダマしてない!

マジでアンナに頼まれたんだって!」


「はぁ〜?そんなわけねぇだろ!

アンナならモデルだってなんだってできるじゃん!」


「ウ、ウソはダメだと思うよ、芹沢君。

忙しいなら、わ、私がお店を手伝ってあげるから…」


「ひ、広川さんまでっ!?

ホントのホントにアンナが望んだことなんだって!」


「ホントです亜里沙さんっ!

私、国に帰ったらラーメン屋さんをしたいんです!」


と、アンナは亜里沙の手にしがみつく。


「マジで?」


「はい!」


「まっ、ならいっか…」


そう言って、亜里沙はパッと幹太から手を離した。


「ゴ、ゴメンね、芹沢君…」


「いや、俺だって二人が心配するのもわかるから…」


「まーな、これだけ綺麗な子だと心配だよな♪」


「だろ。それに、アンナって最初は行くとこさえなかったしさ」


「へっ?そうなの?」


「うん。最初にこの公園で会った時に、そう言うからビックリしたんだ」


「じゃあアンナちゃん、今はどうしてるの?」


「今は俺の家に居候してもらって、毎日一緒に店やってるよ」


「ちょっ!待て芹沢!居候って言ったか!?」


「うん。そうだけど…」


「…ということは、芹沢君はアンナちゃんと?」


「あっ!」


幹太は澪にそう聞かれるまで、自分が何を口走ってしまったのか気づいていなかったのだ。


「まさかアンタ…この子と一緒に住んでんの?」


「だとしたら、芹沢君の家に二人で…?」


高校時代から一緒にいる澪と亜里沙は、幹太の家庭環境を知っている。

つまり、彼が一軒家に一人で住んでいることも知っているのだ。


「あぁっ!イソウロウってそういうことですか♪

そういうことでしたら、私、幹太さんのお家でお世話になってます♪」


「うぇっ!マジで!?」


「ハイ♪マジです♪」


「つー事は…もしかして付き合ってる?」


「いやいやいや!アンナは彼女じゃないよ!

それに夜は由紀だって一緒だから!」


「「へっ!?」」


「い、いやさ…やっぱりアンナと二人じゃマズいだろ…」


((ブンブンブン))


と、亜里沙と澪は揃って首を縦に振る。


「だから、夜は由紀に泊まりに来てもらってるんだよ」


幹太からそう聞いた二人は顔を見合わせた。


「…ねぇ澪」


「…なに亜里沙ちゃん?」


「アンタは由紀から聞いて…」


「ぜんぜん聞いてないよっ!」


それは、ちょっぴりくい気味の返事であった。


「…だよね。私もぜんぜんだわ」


とは言え亜里沙としては、隠していた由紀の気持ちもわかる。


『そりゃ一緒に住んでるってのは言いにくいよね…』


由紀はずっと前から、澪が幹太を好きなことを知っていた。


『それにこの子だしねぇ〜』


額に汗を浮かべながら元気に働くアンナは、遠くから見た時より何倍も破壊力があった。


『いくら芹沢だって、こんな子と二人で暮らしてたらヤバいよな…』


亜里沙は由紀自身もよくわかっていない幹太への気持ちを、本人より正しく理解しているのだ。


「…だったら私も行く」


「ん?澪、なんか言った?」


「私も芹沢君の家に行くって言ったのっ!」


「げっ!マジっ!?」


「だって、由紀ちゃんとアンナちゃんだけズルイっ!」


「フフッ♪イイですね、幹太さんのお家にお泊り♪

やりましょう♪やりましょう♪」


「えぇっ!居候のアンナが決めちゃうのかよっ!?」


「とにかく行くからっ!いいよね、芹沢君っ!?」


「ま、まぁ俺はいいけど…」


アンナと由紀は、昔幹太の両親が使っていた部屋に二人で寝ている。

なので、今さらあと一人増えたところで、あまり変わりはないのだ。


「亜里沙さんも一緒にどうですか?」


「うぇっ!私?」


「ハイ♪」


「…うん。まぁ行くよ…てか、私が行かないとヤバそう…」


これだけパンチの効いた女子が三人も集まったら、何が起こるかわからない。


『たぶんだけど…芹沢の身が一番危ないよな…』


そう思う亜里沙の頭の中には、なぜかベットの上にパンイチで縛られる幹太の姿が浮かんでいた。


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