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ご当地ラーメンで異世界の国おこしって!?  作者: 忠六郎
第五章 始まりの大陸編
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第159話 天下一品

このお話を書く前にリアル店舗に行ってきました。

相変わらず美味しかったです。

と、クレアが親友から見放され、絶望のドン底に落ちていた頃、幹太と由紀は貴船から祇園に移動していた。


「アンナたち、どうしてるかな?」


「うん。やっぱり気になっちゃうよなぁ〜」


「ねぇ、みんなちゃんとお昼食べてると思う?」


「それは大丈夫だろ。なにせ言葉はわかるんだから」


「ならいいんだけど…」


「でも昼飯って言えば…ゆーちゃんはここでいいの?」


「うん。前から来てみたかったんだよね、天下一品♪」


そう。

幹太と由紀がいるのは、京都発祥のラーメンチェーン、天下一品であった。


「ほ、本当に?」


どうやら初デートの初メシがラーメンとはいかがなもんかと、さすがの幹太も思ったらしい。


「フフッ♪ありがとね、幹ちゃん♪

でも、私たちのデートはこれがいいんだよ♪」


「そっか、そうだよな」


「ここって、なんか注文の仕方があるんでしょ♪」


「うん。えっと…まずはスープだな。

三種類あるんだけど…」


天下一品のスープはこってり、屋台の味、あっさりの三種類から選べる。


「まぁ普通…?はみんなこってりを選ぶんだけど、俺はあっさりが好みかな」


「そうなの?」


「うん。ゆーちゃんは親父のラーメン覚えてる?」


「もちろん覚えてるよ♪」


「あんな感じに近いかな…」


天下一品のスープはどれも鶏ガラベースである。

鶏ガラスープのあっさり醤油ラーメンというのは、幹太のラーメンの元となった父、正蔵のラーメンと一緒なのだ。


「う〜ん、そう言われるとあっさりも食べたくなっちゃうな〜」


「あっさりは俺のをあげるから、ゆーちゃんはこってりにしてみたら?」


「幹ちゃんならそーしてくれると思ってた♪」


とりあえずそう決まり、二人は券売機で食券を買った。

外国人観光客が多い京都という土地柄からか、ここの天下一品は券売機スタイルの店舗であった。


「いらっしゃいませ〜!こちらにどうぞ〜!」


店員に導かれ、幹太と由紀はテーブル席に座って食券を渡す。


「あ、麺は二つとも硬めでお願いします」


「硬めですね。では、少々お待ちください」


そう言って、店員は厨房へと戻って行く。


「フフッ♪」


「ん?どうしたの、ゆーちゃん?」


「あのね♪やっぱり幹ちゃんとラーメン屋さんに来るのっていいなって思って♪」


「…そうなのか?」


「うん。だって、たぶんだけど幹ちゃん、あんまり天下一品に来たことないんじゃない?」


「そうだな…二、三回ってとこだろうけど、それがどうかしたか?」


「それでも、ああやって店員さんに注文できるでしょ?」


「注文…?」


幹太の中では、買った食券を渡しただけのことだった。


「麺硬めって言ってたじゃん♪」


「あぁ〜それか!」


硬めの麺が好きな幹太は、とりあえずどこの店でもそう注文することにしている。

天下一品の場合、それに加えて青ネギやニンニクの量なども選べるのだ。


「ああいうのって、ちょっと頼みづらいんだよ。

特に女の子は…」


「そんなもんか?」


「うん。こういうお店なら言える子もいるだろうけど、威勢のいいお店なんかは絶対無理」


「…けど、店側としてはちゃんと言ってもらった方がありがたいんだぞ」


「えっ!そうなのっ?」


「うん。

よっぽど偏屈な店でもないかがぎり、そうだと思う…」


確かに今のようにラーメンを一玉ずつ茹でる調理器具が無かった時代には、複数の麺を寸胴鍋で一気に茹でるため、忙しい時間帯に一人一人の好みに合わせて麺を茹でることが難しかった。

しかし、一玉ずつラーメンを茹でる専門の調理器具がある今となっては、客の好み合にわせることなど簡単なことなのだ。


「麺の硬さって他人にはどうにもできない好みの域だからさ、その人が美味しいと思う硬さで食べてもらうのが一番なんだよ」


そうして美味しいラーメンを食べてもらい、リピーターになってもらった方が後々店としても助かるのである。


「ほぇ〜そうなんだ」


「うん。だって店やってて、それでイラッとしたことは一度もないしな。

むしろこれでお願いしますって言ってくる女の子には、好感を持っちゃうぐらいだよ」


「フフッ♪なんかわかるかも…」


「そうだ!知ってるか?広川さんはバリ硬が好きなんだぞ」


「えっ!澪!?」


広川澪ひろかわ みお)は、二人の小学生からの同級生の女子である。


「うん。広川さん、こっちにいるときゃよく食べに来てくれてたんだよ」


ちなみに澪は、中学時代から幹太に片思いをしていた。


「そっ、そそそ、そうなんだ…」


一応、澪が幹太の屋台へ来ているのを知っていた由紀ではあるが、よく来ているとまでは知らなかった。


「…でも、久しぶりに澪にも会いたいな…」


もちろん幹太絡みで仲が悪くなるほど、由紀と澪の関係は浅くない。


「うん。俺も広川さんにはちゃんとお礼をしなきゃだわ」


「そうだよ…私、亜里沙ありさにも会いたい…」


臼井うすいさんか…ゆーちゃん、二人と仲良かったもんな…」


臼井亜里沙は、二人の高校からの友人だった。

以前、澪と亜里沙は、勝負と称して幹太と放課後デートをしたことがあったのだ。


「よし!だったら絶対会っていこう!」


「うん♪」


転移以降のドタバタですっかり忘れていたが、そもそも今回の里帰りは、日本にいる家族や友人に挨拶するためのものである。


「お待ちどうさまで〜す」


そうしているうちに、二人の前にラーメンが運ばれてきた。

二人はさっそくレンゲを取り、スープから食べ始める。


「うっわぁ〜♪すっごい濃厚♪

これ、ホントに豚骨じゃないの?」


「あぁ…こっちのあっさりスープも、鶏の出汁がしっかり出ててうっまい♪」


さすがに全国展開しているだけあって、天下一品はどのスープも天下一品である。


「チャーシューも美味しい…って、よく見たら幹ちゃんのチャーシューすごくない?」


「うん。極厚バラチャーシューってのにしてみたんだけど…」


幹太のラーメンには、角煮と見紛うほどのチャーシューが載っていた。


「ずるいっ!どーして教えてくれなかったのっ!?

私もそっちがよかった!」


「ゆーちゃんにもあげるから大丈夫だって!」


「ならよしっ!」


そう言って、由紀は間髪入れずに幹太のチャーシューを奪い取った。


「ハグハグ、あ♪美味しい…」


「ぜ、全部食べやがった…俺、ほとんど食べてないのに…」


「フフッ♪ゴメンね、幹ちゃん♪」


「まぁいいけど…。

でもそっか、豚バラで作るのもアリなんだな…」


百麺ぱいめんのラフティーみたいな感じ?」


百麺は、東京にあるラフティーのトッピングが有名な豚骨ラーメン屋である。


「あれは角煮って感じで甘辛く味付けしてあるけど、これは普通のチャーシューの味付けだな」


「なるほどね、そういう違いなんだ」


「そうだな…街道ラーメンの焼きチャーシューのタレで漬けて…うん、帰ったらやってみよう。

ゆーちゃん、そっちのチャーシューも貰える?」


「うん、いいよ♪はい、ア〜ン♪」


「ア〜ン」


結局この二人は、どこで何を食べようとこうしてイチャつくのだ。


「ふぁ〜♪美味しかった♪」


「うん。久しぶりに食べたけど、やっぱ美味いわ」


「さて、次はどうしましょうか?」


「あれ?ゆーちゃんは考えてないの?」


「うん。昨日はアンナたちのルート考えるのでいっぱいいっぱいだったから、私の行きたいとこはここまでだよ」


「そっか…」


「あ!でも、最後はアンナたちと合流するつもりだけど」


「それは夕方?」


「うん」


「じゃあもう何ヶ所か行けそうだな」


「こっちに来てるし、清水寺はどうかな?」


「おっ!そういや俺は修学旅行で行ったけど…」


「そ♪私は行ってないの♪」


つまりは先ほどの貴船神社とは逆である。


「よし。それじゃ二人の修学旅行を続けますか?」


「むー!違うよ、幹ちゃん!これはデート!」


「ハハッ♪そうだったな。

それじゃあデートを続けるか?」


「うん♪」


そうして二人は再び腕を組み、清水寺に向かうため店を出た。


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