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ご当地ラーメンで異世界の国おこしって!?  作者: 忠六郎
第五章 始まりの大陸編
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第158話 コラボ企画

たびたび投稿が遅れまして申し訳ありません。

出かけにくいこのご時世、皆さまはいかがお過ごしでしょうか?

私はこの事態が落ち着いたら、ずっと前から行きたかった遠方のラーメン屋にスーパーカブで行くと決めました。

「でも、ここで本当に合ってる?」


明らかに年季が入りすぎている店構えに、クレアがちょっぴり引きつりながら聞いた。


「大丈夫ですよ、クレア。

前回来た時にも、このようなお店にはよく行ってましたから♪」


幹太の地元の吉祥寺には、このような店構えの飲食店がいくつもある。

アンナは前回日本に来た時、幹太に連れられて何度かこのような店を訪れていた。


「入りますよ〜♪」


と、クレアが二の足を踏んでいる間に、先頭のソフィアが引き戸を開け、一行は店の中に入った。


「さー♪なにを食べましょうかね、シャノン?」


アンナにそう聞かれ、シャノンは壁に並ぶメニューを見る。


「…私にはわからないメニューの方が多いですね。

アナとクレア様はどれかわかりますか?」


「あ〜私もそれほど…」


「そうね。私もラーメンぐらいしか…」


とそこで、クレアはテーブルの上にあるラミネートされたメニューを手に取った。


「あ!こっちならけっこうわかるわ♪」


クレアが手にしたメニューには、中国語で料理名が書かれていた。

中国語の料理名は、そのほとんどが食材と調理の仕方で決まる。

なので翻訳魔法を使っているクレアたちにも、その文字の意味がわかるのだ。


「…クレア様、メニューの数がすごくありませんか?」


「そうね…」


クレアはゾーイにそう返事をしながら、必死にこの中で一番当たり障りのない料理を探していた。

彼女は、この店が本当にガイドブックに載るような店なのかをまだ疑っているのだ。


「しかし、本当に全ての料理が作れるのでしょうか?」


そう言って、シャノンは厨房の方へ目を向ける。

これだけたくさんのメニューがあるにも関わらず、厨房の中にはおじさんが一人であった。


「フフッ♪大丈夫ですよ、シャノン♪」


アンナたちはそれからじっくり時間をかけて注文を決め、店員のおばちゃんに注文をした。


「けど…いいかもしれないわね」


「何がです、クレア?」


「だからこういうラーメン屋さんよ!

もうっ!あなたラーメンで国おこししようとしてるんじゃないの!?」


「そ、それならわかってましたよ!」


「本当に?

まぁいいけど…」


「クレア様、こういうお店というのは?」


「はぁ…仕方ないわね、ゾーイにはちゃんと教えてあげる♪」


「あ、ありがとうございます…」


「この間のお店もそうだし、サービスエリア…?も、そうだったけど、ラーメンだけじゃなくって、こうやって色んな料理を出すお店もいいんじゃないかなって思ったの♪」


「なるほどそういうことですか…」


アンナはやっぱりわかっていなかったらしい。


「それでしたら、似たようなお店はもうありますよ〜クレア様〜♪」


「えっ!どこによ!?」


「私の村です〜♪」


「あっ!確かにジャクソンケイブのお店はこんな感じですっ!」


アンナのいうジャクソンケイブのお店とは、幹太たちの作ったご当地ラーメンのレシピを受け継いだ町の食堂のことである。


「幹太のお店がラーメンとちょっとした料理しかない屋台だから、同じようにやらなきゃって勝手に思ってたのよね」


「クレア様…幹太さんと一緒にいれば誰でもそうなります」


そう言って、シャノンはまんまとその沼にハマった妹を見た。


「ん〜?まぁもちろん、私がラーメン好きになったのは幹太さんの影響ですけど…」


アンナは、水の入ったコップの縁を指で撫でながら考える。


「そうですね…たぶん、ラーメンという料理の可能性に惹かれたんです」


「ラーメンの可能性?」


「そうです。

あなたもこちらに来てから、色々なラーメン屋さんを見たでしょう?」


「えぇ…それはもうイヤになるほどね」


そう答えて、クレアは両手を上に挙げながらため息を吐く。


「私も調べてみたら、どの街にもお店があって、そのほとんどのお店がそれぞれ個性的なラーメンを作ってました。

それがとっても手頃なお値段で食べれるなんて、そんなお料理、私たちの世界にはありません。

そうですよね、クレア?」


「…そうね。確かにないわ」


たぶんそれは、アンナたちの世界が食の面でも文化が停滞しているからであろう。


「だから私、姫屋のメニューは今のままでいい気がします♪」


満面の笑みでそう言うアンナは、ラーメンという料理の魅力にメロメロなのだ。


「まぁラーメンが魅力的なのは私も認めるわ。

他はさておき、ラーメンに目をつけたことだけは褒めてあげるわよ、ア・ン・ナ♪」


「あ、あなたに褒められなくても結構ですっ!」


「あらそう?ざ〜んねん♪」


「は〜い♪おまちど〜さん♪」


とそこで、早くもアンナたちの注文した料理が運ばれてきた。


「ほんならこれね〜♪」


そう言って、先ほど注文を取ったおばちゃんがテキトーに料理をテーブルに乗せて去っていく。


「ふぁ〜♪いっぱいです〜♪」


と、ソフィアはテーブルを埋め尽くすように並んだ料理を見て歓声をあげる。


「とりあえず取り分けましょう。

どれからいきますか、アナ?」


「最初は麺でいきましょう!」


もはや生粋のラーメン屋ともいえるプリンセスは、麺がのびることを絶対に許さない。

シャノンは深皿に盛り付けられた餡かけの麺を手早く人数分に分け、それぞれの前に置く。


「ねぇアンナ、これってこの間のヤツと同じじゃない?」


「そう見えますね…」


クレアとアンナが言っているのは、九州で食べた皿うどんのことである。


「麺が違いますよ〜♪」


そう言いながら、ソフィアはすでに餡掛けの野菜と麺に口にしていた。

アンナたちが注文したのは、揚げ麺の皿うどんではなく、蒸し麺で作られた京都名物のからしそばである。

店によってはエビカシワソバやロー麺などといわれるその麺は、その名の通りカラシと混ぜ合わせた麺に、エビや野菜などの餡掛けの具を載せた麺料理のことである。

ラーメンようにスープに入っているわけではないが、中華麺で作られるためジャンル的にはラーメンと言える。


「うわっ!これ辛いっ!」


食べるなりそう言ったのはクレアだった。


「これは…いけますね」


「美味しいです〜♪」


一方、大人な味覚のシャノンとソフィアは、どうやら和からしの辛さが気に入ったようだ。


「ゾーイ、これってラーメン…なのよね?」


「アンナ様が普通のラーメンも注文されてましたけど、これも仲間じゃないでしょうか…」


と、ゾーイは黄色い麺を箸で掴み上げる。


「あ!そうですっ!」


とそこで、早くも取り分けられたからしそばを食べ終えたアンナが声を上げた。


「なに?どうしたのアンナ?」


「クレア、帰ったらラーメンを作ってみませんか?」


「それって、あなたと私が一緒にってこと?」


「えぇ」


「別にいいけど…なんで?」


クレアの知っているいつものアンナならば、新メニューを一緒に作ろうなどとは言わないはずである。


「私、考えてたんです。

あなたの紅姫屋と私の姫屋で何かできないかなって…」


この旅でクレアと一緒にいる間、アンナはラーメンで国おこしをしているシェルブルックとリーズの二国間で、なにか新しいことができないかと考えていた。


「それで、お母様のバザーの時に思ったんですけど…そういえば、クレアもあのバザーには来ていたんですよね?」


「う、うん。行ってたけど…」


アンナが言っているのは、自分たちの婚約が決まった時のチャリティバザーのことである。

あのバザーには、ラーメンという新しい料理の調査の為に、クレアもお忍びで訪れていた。


「私の名前って意外と使えるんじゃないかなぁ〜って…」


というアンナの言葉を聞いて、その場にいる全員が口を開けたまま箸を止めた。


「ほ、本当なんです…あの時、アンナ王女のラーメンって宣伝したらけっこう客足が伸びたんです…」


「アナ、それは…」


「ぐ、偶然って言いたいのはわかりますけど、ちょ、ちょっと黙ってて下さい、シャノン!」


「いえ、そうではなくて…」


「ですから!クレアと組んだらもうちょっと人気が出るかもと思って…」


と、アンナはちょっぴり自信なさげにそう言った。


「あの…」


「な、なんでしょう、ソフィアさん?」


「アンナ様はまだご自分に人気がないと思っていらっしゃるんですか〜?」


自国の姫のあまりの無自覚さに、ソフィアは久しぶりにアンナを様つきで呼ぶ。


「はい。ワタシハニンキナイデス」


それは幹太との旅で、アンナに植え付けられたトラウマだった。


「…ちょっとどういうことよ、シャノン?」


目の前の幼馴染がちょっと何を言っているか本気でわからなかったクレアは、ヒソヒソ声でシャノンに聞いた。


「…どうやら幹太さんとの旅で王女と気づかれなかったのを、今だに気にしているみたいで…」


「そりゃ顔を知らないのはしょうがないでしょっ!

お世継ぎになるのはビクトリア様なんだから!」


「いえ。アナがそう思っているだけで、実はけっこうバレていたみたいなんです…」


「えっ!そうなの?」


「はい。その証拠に、アナたちが寄った街では王家御用達の看板を掲げる店が何軒もできたようで…」


「クレア様、リーズでもアンナ様の人気は…」


「そうね、ゾーイ。

それはそれはすっごい人気よね…」


実はそうなのだ。

最近表立って活動を始めたクレアは、自分がどれほど国民から愛されているかを身をもって知った。

と同時に、隣国の美しい姫の人気も知ったのだ。


「だって知ってる?

ブルーガレリアって、今じゃ妖精姫の庭って呼ばれてるのよ」


ブルーガレリアはリーズの首都、レイブルストーク一番の繁華街である。

妖精姫というのは、国内外でのアンナの愛称であった。


「知りません。

しかし、それは何故です?」


「あの子が青いドレスで来たからに決まってるでしょ!

まさかあなた、覚えてないの?」


「あ、あぁ…あの決死で護衛した時ですか…」


自国の首都にある繁華街が隣国の姫の愛称で呼ばれるというのは、クレアにとってなかなかに複雑な気持ちなのだ。


「…まぁいいわ。本来ならこっちからお願いしたいぐらいだし、千載一遇のチャンスよね…」


そう言って、クレアはアンナに視線を戻す。


「いいわよ、アンナ♪」


「本当ですかっ!?」


「えぇ♪とりあえず今晩にでも幹太に相談してみましょ♪」


「いいですね♪

実は私、作ってみたいラーメンがいっぱいあるんです♪」


「えっ?」


アンナの会心の笑顔を見たクレアは、なにかゾッとする予感をその笑顔の中に感じ取っていた。

よく考えたらこのラーメン馬鹿姫が、一種類のラーメンで満足するわけがない。


「ちょ、ちょっと待って!アンナ、あなたどれだけ作るつもり?」


「どれだけって…そんなの今からわかりませんけど、とりあえず私とあなたで二つは確実ですかね…?」


そう言って、アンナは首を傾げる。

つまり、本当にそのプランが動き始めてしまえば、クレアは再び今のようなラーメン漬けの日々を過ごさなければいけなくなるのだ。


「ウ、ウソでしょ?ただでさえお腹がプヨプヨしてきてるのに、向こう帰ってもラーメン地獄が続くわけ…?」


それは恋する乙女にとって切実な問題であった。


「はぁ〜♪今晩が楽しみです♪

せっかくですから、三人で朝までみっちりヤリますよ〜♪」


「は〜い♪チャーシュー麺お待ちどうさん♪」


「あ!それ私ですっ!」


アンナはそう言って、たった今運ばれてきたチャーシュー麺の肉に食らいつく。

どうやらこの姫は、シェアするつもりは全くないらしい。


「ま、また?なんでまたこうなるの…?」


「クレア様…」


とそこで、ゾーイがうなだれる主人の肩に手を置いた。


「ゾーイ!もも、もちろんあなたは手伝ってくれるわよね?ねっ?」


クレアはそう言って、ゾーイの腕にすがりつく。


「…がんばってください♪」

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